◆ 診療所ライブラリー 108 ◆


転倒予防50歳代になると急速に筋力が衰えるとされます。
アラフィフの私も、最近診察室にずっと座っているとお尻が痛くなるので、椅子のクッションが劣化したのかと思っていました。
しかし、劣化していたのは自分の臀部の筋肉とわかり、ちょっとショックでした。

高齢者と接することが多い職業柄、転倒が契機となって骨折する人を数多くみてきています。
転倒する原因の一番はやはり筋力の低下です。
骨折すると日常生活を大きく損ねますし、大腿骨頚部骨折を起こすと1年以内の死亡率が1割を超えるという報告もあります。

この「転倒予防 - 転ばぬ先の杖と知恵」では、骨折の原因となる転倒を予防するための基本的な解説がなされています。
杖の選び方や正しい持ち方などを詳しく書いてあるのは他の本に見られない特徴の一つでしょう。
また、日頃の暮しの中で片足立ちがしっかりできることが大切であることや、どういう場面で転倒しやすいかといった点はおおいに参考になることでしょう。
具体的な運動プログラムなどについてもう少し触れていれば文句なしの内容なのですが、その点については最後に実践本の紹介がなされているので良しとしましょう。

現代において、運動不足のために子供の頃から転倒しやすいことについても触れています。
最近、若い女性が体形を気にして満足な食事を摂っていない実態がニュースになっていました。
そういう世代が高齢者になった時に、骨折だらけになってしまうのではないかと危惧されます。
若い世代の方々にも一度目を通して欲しいな、と思う本です。

  → 転倒予防――転ばぬ先の杖と知恵