旅行に持っていくと便利先日、観光客の無理な要求に疲弊している竹富島の診療所の記事を読んで、嘆かわしく思いました。
その内容ですが、軽症なのに夜間診療を求められ、中には船やヘリを呼べという無茶な要求をする観光客が増え、医師離れを招いているというものでした。

旅行の際には、少々の体の不調には自分で対応できるように薬を持って行くのが望ましいと思います。

今回は、私が特にお勧めする3つの漢方薬を紹介しておきます。


① 五苓散

酔い止め・航空中耳炎・嘔吐・下痢・頭痛・二日酔い など応用範囲の広い薬です。

航空中耳炎とは、飛行機に搭乗中の圧変動に伴って起こる耳の痛みや詰まった感じなどのことを言います。
このような症状は多くの場合短時間で回復しますが、中には数日続く方もいらっしゃいます。
耳は音を聞いたり平衡感覚を司ったりする器官ですが、最近は気圧のセンサーとしての役割も注目されています。
飛行機に乗るとこのような症状を起こしやすい方や、乗り物酔いしやすい方などは、乗り物に乗る1時間ほど前に服用すると予防効果が得られます。
また、雨の降る前に起こるような頭痛など、気圧の低下で起こる様々な不調に対しても有効です。

普段と違う食事内容で嘔吐下痢などおなかが不調になることもあるでしょうし、羽目を外して普段よりもたくさん飲酒して二日酔いになることもあるでしょう。
様々な場面で利用できる五苓散は本当に便利な漢方薬です。


② 葛根湯

風邪の初期症状・肩こりなどに。

お土産をたくさん買い込んで重い荷物を持って移動する機会も増えて肩こりになったり、旅先の宿の枕が合わず首を痛めたりすることもあると思います。
そういう時に便利なのが葛根湯です。
葛根湯を服用すると、首や肩の皮膚温が上昇することが報告されています。
この付近の血流を改善する結果、痛みを緩和させる一助になっているものと考えられます。
私は、普段から肩こりを訴える方によく処方しています。

もちろん、風邪の初期症状にも使える葛根湯ですが、有効なのは風邪だけではないのです。



③ 芍薬甘草湯

腹痛・筋肉痛などに。

観光地巡りで普段よりも長い距離を歩く機会も増えます。
そうするとどうしても筋肉痛になったり、夜にこむら返りを起こしたりすることもあるでしょう。
そういう時に便利なのが芍薬甘草湯です。
予防効果もあるので、運動前にあらかじめ服用しておくといいですよ。

また腹痛にも有効である場合が多いです。

意識的に動かすことのできる横紋筋 ( 骨格筋 ) 、自律神経の支配の元で動く平滑筋。
そのどちらの痛みにも効いてくれるという不思議な作用を持ち、服用して2~3分もすると効果を発揮してくれるのが芍薬甘草湯の魅力です。


この3つの漢方薬だけで、旅行中に起こり得る体のハプニングをかなりカバーできます。
いずれも一般の薬局でも入手可能かと思いますが、市販されているものは我々が用いる半分の用量で提供されているものが多いので確認して下さい。
旅のお供に是非。