骨折先日、大腿骨近位部骨折の地域差についての調査結果がニュースになっていました。

それによると西高東低の傾向がくっきりと表れました。( 右の表はクリックで拡大します )
その原因として、ビタミンKを含む納豆の消費量など、食生活の関連性があるのではないかと推測していました。


骨、というとカルシウムやビタミンDを思い浮かべる人も多いと思いますが、ビタミンKも大事なんです。
骨の形成を司る骨芽細胞は、オステオカルシンという蛋白質を作ります。
この蛋白質の働きは未解明の部分もあるのですが、まず第一に骨形成を促す作用が考えられています。
このオステオカルシンを作るのにビタミンKが必要なのです。
オステオカルシンには膵臓のインスリン分泌を促す作用や、糖や脂質の代謝を促す作用、記憶力の改善作用などがあることも分かってきています。


今回の報告での地域差と納豆の消費量を色分けした地図を並べてみましたが、確かに逆の相関がありそうですね。( 右が都道府県別の納豆の消費額。どちらもクリックで拡大します ) 
地図納豆













私は、男性5位・女性1位の兵庫県と、男性40位・女性39位と西日本で男女とも最も低い鹿児島県での診療経験をしています。
言われてみると、確かに大腿骨近位部の骨折は鹿児島に帰ってきてからあまり診なくなったように思います。
神戸時代は人工骨頭手術を受ける患者さんがたくさんいたのですが。


骨折とは別の話になりますが、消化器を中心に診療している私が最も感じている地域差は、S状結腸の憩室症です。
兵庫県で仕事をしていた時の方が明らかに多かったです。
大腸憩室症も食事との関連が言われていますが、食事と絡めて疾患の地域差を調べるとその病気の予防法も見えてくるではないでしょうか。
でも、周辺地域に比べてどうして鹿児島県で大腿骨近位部骨折が少ないのか、謎です。
納豆の消費量もそれほど多いわけではないですしね。
その原因を探っていくと、また違った要因が見えてくるのでしょう。


なお、骨粗鬆症を予防しようと、カルシウムのサプリメントを摂取するのはご法度です。
カルシウムをサプリで補っても骨折予防効果はないばかりか、心筋梗塞や脳卒中、認知症リスクが増加するなどの報告が次々になされています。
何一ついいことはありません。
サプリではなく、食材でカルシウムやビタミンD・Kを多く含むものを摂りましょう。