CTC  ○○ 学会レポート2011 その2 ○○



二年前、当ブログで「宿便について考える」というテーマで過敏性腸症候群を取り上げました。

過敏性腸症候群は日本人の5人に1人が罹患しているごくありふれた身近な疾患です。
腹痛や便通異常などで日常生活に大きな支障をきたすにもかかわらず、医療機関を受診して適切な治療を受けておられない方も多いですし、生命を脅かすような疾患でもないからなのか、あまり研究も進まず治療の選択肢も多くないのが現状です。

今回の学会の過敏性腸症候群を取り上げたパネルディスカッションで勉強しようと思ったのに、決して充実した内容とは言えず、途中退席者が多かったように思います。
演題を発表したのも関東以北の先生方ばかりと、研究している機関が偏在しており、この分野に興味を持って接する研究者が少ないことは残念です。

その中で興味をひいたものをご紹介しておきます。

最近は画像機器の発達が目覚ましく、CTを撮って大腸の形状を立体的に表すことが可能となってきました。
CT-colongraphy ( CTC ) と言いますが、大腸の透視を行ったような画像のみならず、大腸内視鏡と同様に内部を辿っていくような画像も得ることができます。
発表された内容の詳細は省略しますが、検査前に鎮痙剤を注射しているにも関わらず腸の動きが落ち着かないケースや内視鏡挿入に手間取るケース、性差などについてCTCによる大腸の形態を見たところ、いくつかの特徴があったというものでした。
例えば、解剖学の教科書的には大腸は上行結腸と下行結腸は腸間膜が短く固定された状態、のはずです。
西洋人だとほとんど解剖図通りなのですが、日本人においては下行結腸の固定が緩い場合があり、それが便通異常にも繋がっている可能性があるとのこと。
また、CTC上で強い収縮が見られる部分をマッサージすると便通が改善するという話も出ました。

胃の内視鏡と異なり、大腸内視鏡を挿入するのには熟練が必要で、パズル解きのような要素もあるのですが、挿入の難易度や腸の収縮具合などから治療法を考えていくのも大切なことかもしれません。



今年のDDWのレポートはこれでおしまいです。