野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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⑥ 医療関係の情報

スルカインという薬の以前の添付文書の効能の所にこんな文章を見つけました。

「胃炎に伴う胃痛、嘔気、呑酸・嘈囃及び胃部不快感」

嘈囃」??
「そうそう」と読むそうです。
消化器を主な専門にしていながら、全く知らない言葉ですし、知らない症状です。
でも、ちゃんと添付文章の臨床効果の欄に「呑酸・嘈囃に対する有効率 85.4% ( 176 / 206 )」と書いてあるではないですか。( → こちら )
しっかり効果を調べたからには、そういう症状が存在するのは間違いありません。

しかし、辞書で調べても単語としては見つけられなかったので、それぞれの漢字の意味を探ってみました。

 嘈  さわがしい。かまびすしい。やかましい、またその声。
 囃  はやし。かけごえ。歌や舞を助ける声。歌に合わせて調子をとる鳴りもの。

胸やけ2何となく騒々しい声、と連想できそうですが、胃炎という消化器の症状としては全く理解できません。
効能書きの文章を改めてよく見ると、嘈囃の前は読点ではなく「・」。
呑酸 ( どんさん ) と連なった四文字の言葉のようで「呑酸嘈囃」で、胸やけを意味すると医学大辞典に載っています。
酸を飲んで、けたたましく大騒ぎをする・・。
確かに、鹿児島名産の黒酢など酸っぱいものを一気に飲むと、大抵の人はその刺激に思わず悲鳴を上げてしまいますよね。

ただ、嘈囃という二文字の言葉は中国医学の古典的書物にも見られ、これだけでも胸やけの意味になるようです。
傷寒論 ( しょうかんろん ) 」や「金匱要略 ( きんきようりゃく ) 」を解説した「類聚方広義 ( るいじゅほうこうぎ ) 」の中に「嘈囃胸を刺し」なんて文章も見られます。

対して「呑酸」ですが、逆流性食道炎が増えてきたこともあり、酸っぱいものがこみ上げてくることの意味に使われます。
しかし、漢字を額面通りに解釈すると「酸を呑む」です。
酸の流れる方向が逆のような気がしますけれども、胃酸がこみあげてくる症状を表すのに適切なのかどうか。
中には「呑酸」=「おくび」( げっぷ ) とする辞書もあるようですね。

胸やけを患者さんがどのように表現するかを調査した報告があるのですが、むかむか・胃が重い・胸が熱い・胃が痛い・食欲がない、などバリエーションが多彩であることがわかっています。
昔の人達が、この胸やけを表現するのに苦労して落ち着いたのが「呑酸嘈囃」という言葉ではなかったか、と勝手に推論する次第でありました。

なお、最新の効能書きからは「呑酸・嘈囃」の文字は消え、かわりに「胃部不快感」に改まっていることを付加しておきます。
ということは、どんさんそうそう = 胃部不快感 !? 
 

ゴールデンウィークも今日まで。
明日から通常の外来診療が始まりますが、休み明けは混雑が予想されますし、例年よりも学校や幼稚園の健診のスケジュールがタイトに組み込まれており、その点でもご迷惑がかかると思います。
ご了承下さい。

ぎょう虫さて、文部科学省は学校での座高測定とぎょう虫検査を来年度いっぱいで廃止すると先月末に発表しました。
内蔵が発達しているほど座高が高いと考えられ、徴兵の際にも利用していたそうですが、根拠がないですよね。
一方のぎょう虫検査ですが、文部科学省の発表した平成25年度の学校保健統計調査をご覧下さい。( → こちら )
小学生の虫卵保有率は0.16%。
昭和58年度が3.21%、平成13年度が1.17%と減少の一途で、少子化も進んでいますから絶対数はかなり減ってきていると考えられます。
これだけ少なくなったのは日本の衛生環境が良くなったからだけではなく、毎年子供たちを対象に検査をしていたからだと思います。
肛門がかゆくなる程度で命を落とすことはない感染症ですが、まだまだ過去のものとは言い難いぎょう虫。
検査が廃止されることで虫卵の保有率がどう変わるのか、とても気になります。

旅行ちょっと遅い告知になりましたが、当院のゴールデンウィーク期間中の診療は暦通りのお休みをいただきます。
5月7日から通常通りの外来診療となります。

今年は、沖縄でインフルエンザが流行していますし、麻疹の発症が今年既に300人を超えたという話が伝わっています。
多くの方が普段行かないような所へ出かけて、感染症が蔓延してしまう可能性も否定できません。
海外旅行に限らず、国内旅行においてもこういうことに気を付けなければならない時代。
ヒトと感染症の戦いは簡単に終わることがないのだと肝に銘じつつ、連休を楽しんでいただきたいと思います。

今月5日の新聞に、人間ドックでの血圧やコレステロールなどの基準値を緩和する、という記事が載っていました。
今週の外来では、多くの患者さんからこの話が出ましたが、この基準値には大きな問題があると思います。

何が問題かというと「健康な人」の定義です。
過去に大きな病気をしたことがない▽喫煙習慣がない▽高血圧や糖尿病の薬を服用していない、などを条件に、"スーパーノーマルな人" としているのです。
しかし、この三番目の条件が本当に健康な人の定義として妥当なのか疑問を呈さざるを得ません。
なぜなら、病気を持っているのに通院するのが面倒くさい、薬を飲むのが嫌だ、といって治療していない人がかなり含まれているのではないかと思われるからです。
こういった人達を含んだ基準値では今までより上がってしまうのは当然のことと思います。

bdy14040500370000-n1血圧、コレステロール、血糖等が高いのを放置すると脳血管疾患や心疾患につながりますが、どのくらいの数値を目標にするとこういう疾患が防げるのかは、各専門分野で研究がなされてガイドラインなどで示されています。
長年の臨床で積み重なってきたものを全く無視したような人間ドックの基準値算出法は各方面から反論必至でしょう。

ま、血糖の平均値であるHbA1cの基準が5.5%というのは国民の半分くらいが引っかかるのではというくらい厳しい値でしたが、その他の基準はあまり緩め過ぎると、病気を持っているのに未治療の人を見つけるという人間ドックの目的の一つが霞んでしまいます。

今回の発表はあくまで中間報告だそうです。
この基準値を作るのに人間ドック学会だけでなく、危機的な収支にある健康保健組合連合会が加わっていることを頭の隅に入れて、近いうちに発表される最終報告を待ちましょう。

歩きスマホ2012年の子どもの誤飲事故の調査結果が先月末に発表されました。
減少傾向ながらたばこが34年連続で誤飲の原因の一位だったそうです。
また、東京消防庁の調べで2013年に都内で歩きスマホが原因で36人が救急搬送されたと2月末に発表されています。
前者は1歳前後の乳幼児に多く、後者は40代が多いということです。

タバコの誤飲については、日本中毒情報センターへの相談電話があまりにも多く、テープ対応で無料の「たばこ専用電話」が設けられているほど。
何十年もの間トップであり続けているのは、家庭内での喫煙者に注意を促すだけで済まされているからではないでしょうか。
抜本的な対策が講じられなければこの先も首位であり続けるでしょう。

歩きスマホについては論外。
先日、NTTドコモが澁谷スクランブル交差点で全員が歩きスマホだったらどうなるかというシミュレーションCGを発表しましたね。



いずれにしても、ただでさえ忙しい医療機関への余計な負担となることをお忘れなく。

吐き気吐き気や嘔吐に対してよく処方される、ドンペリドン ( domperidone ; 商品名ナウゼリン ) という薬があります。
近年、特に高齢者において心電図上みられるQT延長という変化から心室性不整脈や心停止を起こすことが相次いで報告されていて、そういった論文を基に推計するとフランスで年間25人から120人がドンペリドン内服で突然死していると考えられるので販売を中止すべきだ、ということが「Prescrire」誌に掲載されたのです。( → こちら )

以前から指摘されていたようなのですが、厳しい注意喚起をしている国もあれば薬局で医師の処方箋なしに購入できる国もあり、対応はバラバラです。
古くからメトクロプラミド ( metoclopramide ; 商品名プリンペラン ) と並んで制吐剤の代名詞的に使われてきましたが、肝心の制吐作用があまり強くないという話もあります。
私はこういった点を踏まえた上で、やむを得ず使う場合は頓服かごく短期間に留めているのですが、漫然と1日3回長期間服用しているケースなどに出会い、びっくりすることもあります。

ドン・ペリニョン ( Don Pérignon ) で悪酔いしてドンペリドン、といった冗談も通用しなくなるかも知れません。
( 私なら二日酔いには五苓散を服用しますが  → こちら )

今後、日本も含めて使用可能な国がどういう対応に出るか注視していきたいと思います。

なお、ドンペリドンもメトクロプラミドも薬剤性パーキンソニズムを起こすことが知られています。

動作が遅くなる・声が小さくなる・表情が乏しくなる・歩き方がふらふらして歩幅が狭くなる・手が震えるなどの症状が出るようであれば、中止して医療機関を受診して下さい。

ピロリピロリ菌除菌の適用が拡大されたのが1年前の2月22日のことでした。( → 「ピロリ菌除菌の適用範囲が広がったけれども」)
今年は間もなく除菌の新しいパック製剤が発売となります。

これまで各社の薬を組み合わせて除菌することは可能だったのですが、間違いなく服用してもらうために一次除菌に関しては一社が独占して発売していたパック製剤に頼っていたのが現状です。
選択肢が増えるのは嬉しいことですね。
薬も小さく除菌率も若干良くなるであろうことに期待しています。
ただ、先行品と同様にクラリスロマイシンの用量が異なる2種類を出してくるのはどうなんでしょう。
というのも、クラリスロマイシンが400mgでも800mgでも除菌率に有意差が出ていないからです。

さて、先日のことですが、他院で除菌をしたけれども不成功だったので当院で二次除菌をして欲しいという方がいらっしゃいました。
話を聞いていて、おやっと思ったのですが、内服中はアルコールは飲むなと指導されたらしいのです。
これは二次除菌に使うメトロニダゾールについての注意事項ですから、いきなり二次除菌の薬を服用した可能性が否定できません。
二次除菌に使う薬の組み合わせの方が除菌率が高いという点に着目しているのでしょうが、安易な使用は二次除菌率の低下を招きかねません。
ルールを逸脱しないようにお願いしたいものです。

2月からピロリ菌が陽性の胃炎での除菌ができるようになったことは何度もお伝えしております。
ただ、除菌には内視鏡検査が必須なんですよね。

心窩部本日から発売される機能性ディスペプシアに対する薬も内視鏡検査が必須であるという制約がついているようですね。
現首相がかつて潰瘍性大腸炎で政権を降りて入院した時に、主治医団が「機能性胃腸症」という病名でごまかしていました。
これは機能性胃腸症を患っている人に、とても深刻な病気であるかのような印象を植え付ける結果になったのではと、今でも批判的に思っています。

さて、Functional dyspepsia という英語をかつて機能性胃腸症と訳していたのですが、胃・十二指腸領域の症状に限定した疾患定義に変わったため「機能性ディスペプシア」という名称になりました。
十二指腸は腸ではないのかな、と思いつつ、この疾患名は一般の人には病態をイメージしづらいだろうなと思う今日この頃です。

機能性ディスペプシアについては、当ブログの「心窩部にまつわる話題」にて取り上げています。
古い記事ですが、是非参考にして下さい。

熱中症昨日は暑かったですね。
24日の鹿児島の最高気温は30.2℃。
今年最も高い気温となりました。
そのせいでしょう、早くも長時間外で作業をしていたご高齢の方が脱水症で当院へ。
休憩も水分補給もしていたということですが、お話を伺うといずれも十分でなかったように思います。

これから先、熱中症に気をつけなければならない時期にさしかかります。 
今一度、どういう対策が必要かおさらいをしておきましょう。
情報が満載のサイトを見つけましたので是非参考にして下さい。

→ 「かくれ脱水」JOURNAL 

2月にも当ブログでも話題にしたのですが、風疹の流行が止まるところを知りません。

私自身、3歳の時に罹患しています。
おでこに氷嚢をのっけられて寝ているところに、遊びに来た近所の友達に対して
母が今日は遊べないと告げていた場面を覚えています。
どんな症状であったかさっぱり覚えていません。
流行の中心である成人では症状が重いとされていますよね。

風疹鹿児島では風疹の患者がかなり多く報告されています。
最新の情報はこちら ( → 風疹累積報告数の推移 ) をご覧いただきたいのですが、これをみると都道府県別の報告数では鹿児島は 5位ですが人口比でみると 3位なのです。
ゴールデンウィークで人の移動が多かったことも懸念されています。
風疹の潜伏期間は 2-3週間とされていますので、今月後半から患者が増えるのではないかと予想されているのです。
実は医師になってから成人の風疹の患者を診察したことはありません。
今回の流行においても診ないで済むように願っています。

ワクチンが唯一の予防策ですが、現在風疹単体のワクチンは品切れで9月まで入手できません。
代わりに麻疹・風疹ワクチンの接種が勧奨されています。
ただ、料金が高くなるのは申し訳ない点です。

ワクチンに対して時にネガティブな面ばかりを強調する傾向の強いマスコミが、今回は先天性風疹症候群などを丁寧にレポートしてくれています。
特にNHKが積極的で、ストップ風疹というキャンペーンを張っていますね。
是非参考にしてみてください。

エピペン給食のチヂミが原因の食物アレルギーによる死亡例がありましたね。
この報道でも出てきましたが、アナフィラキシーショックという言葉を聞いた事があると思います。
「ショック」は誤解されやすい医学用語のうちの一つ。
日本語訳は急性循環不全で、びっくりするといったような意味ではありません。
定義として「生命に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要な臓器の血流が維持できなくなり、細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、生命の危機に至る急性の症候群」。
ちょっと難しいですね。
アナフィラキシーは、短時間のうちに全身性にアレルギー症状が出る反応のこと。
ですから、アナフィラキシーショックとはアレルギーが急激に起こって血圧が著しく低下すること、とおおよそ理解していただければよろしいのではないでしょうか。

さて、関心が高まってきているのがエピペンという自己注射薬です。
このエピペンは症状の進行を一時的に緩和し「ショック」を防ぐ成分を太ももに注射するキット。
簡単な操作で確実に注射できるような仕組みになっています。 
特に素晴らしいのは注射針を見ることなく注射ができてしまう点で、恐怖心を抱くことがほとんどないでしょう。
ただし元々軍事用に開発され、服の上からも打てるように針はやや太めという話ですけれども。
当院でも処方できますので、食物アレルギーのお子さんのいらっしゃるご家庭の方や、森林作業が多くハチに刺された経験のある方などご相談下さい。

ただ、保険が適用されますが1本が1万円を超えるという価格設定がなされています。
いくら何でも高過ぎではないでしょうか。

  ( 参考 → アナフィラキシーってなあに )

ピロリピロリ菌が感染していても、潰瘍など特定の疾患がなければ除菌ができないという制限がありましたが、22日から胃炎であっても除菌可能となりました。
当たり前のことがようやく堂々とできるようになったわけです。( → 胃炎でもピロリ除菌、間もなく )

注意点があります。
除菌するにあたっての条件として「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に用いる際には、ヘリコバクター・ピロリが陽性であること及び内視鏡検査によりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎であることを確認すること」という文言があるのです。
つまり、内視鏡検査が必須となります。
最近はネットでピロリ菌診断キットが手に入るようですが、 これで陽性に出たから除菌してくれと来院されてもダメということです。
検査は苦痛の少ない経鼻内視鏡、それも鼻に優しい富士フイルム製をお勧めします。
当院はもちろん
富士フイルム製
ブログでも何度も取り上げているのはご承知かと思います。

除菌の対象となる人が格段に増えるのに、問題がいくつか残されています。
まず、保険で認められているのが一次と二次の除菌法しかないこと。
二次除菌までに除菌がうまくいかなかった場合どうするのか。
また、ペニシリン等に対するアレルギーで、認められている除菌手段が使えない場合はどうするのか。
これらが解決できていません。

そして、除菌判定です。
ガイドラインでは「除菌終了後、4週間以降経過」してから判定を受けるよう推奨していますが、これが曲者。
除菌が不成功でも、数が減っていたり coccoid form と言って菌が丸まって休眠状態になったりすることで、検査に引っかからずに消えましたよと判定されてしまうケースがあるのです。
数が増えたり菌が再活動したりしする頃に判定を受けると白黒はっきりするわけですが、これが4週では短いだろうというのが大方の消化器医の意見。
私は最低12週開けて判定しております。
別施設で 8週ほど開けて判定したケースで、陰性と出たのに後になってやっぱりこれは除菌できていないぞという症例をちらほらみます。
このガイドライン、見直した方がいいと思います。
ましてや自分で手に入れた診断キットで自己判定なんて絶対にしないで下さいね。 

都会を中心に風疹が流行しているというニュース、皆さんも見聞きしたことと思います。
報道を知った男性の方が先日予防接種を受けに来られましたけど、こういう問題意識の高い人はまだまだ少数派。

風疹で一番に問題になるのは妊婦さんが罹った時に胎児に影響を及ぼす可能性があるということ。
先天性風疹症候群 (CRS) と言って心臓の奇形、白内障、難聴を三大症状とするもので、昨年秋から6例もの報告があったそうです。

注射今回の流行では風疹ワクチンを打つ機会さえなかった世代を含む20~40代の男性が圧倒的に多いという特徴があります。
そもそも風疹ワクチンはCRSを防ぐ目的で昭和52年から女子中学生に限った定期接種が始まりました。
しかし不活化ワクチンでついた免疫はだんだん効力が落ちてくることもあり、免疫のない夫が感染しそれが妻に波及するというパターンが多いのではないかと思います。
日本のワクチン体制のお粗末さが今の流行を生んだと言っても過言ではありません。
お子様を希望される男性は積極的に予防接種を受けてくださいね。

また、麻疹・風疹ワクチンは本年度まで中学1年生と高校3年生は補足的な追加接種を受ける必要があります。
2回接種でしっかり免疫を維持するためにも大切なこと。
3月末までなので接種がまだの方、お忘れなく。 

腹痛今年に入ってピロリ菌を数年前に除菌したにも関わらず、胃潰瘍が再発した例が続きました。
いずれも近親者に不幸が続いたり、緊急入院になったりということが契機になっています。
消化性潰瘍発生の最も大きな要因はピロリ菌であることは間違いありませんが、ストレスもやはり無視できないなと思った次第。

報道によると、来月にはピロリ菌陽性の胃炎についても除菌の保険適用がなされるようです。
除菌療法が広く普及すれば、将来日本人の胃がんが激減するのは間違いありません。 
ピロリ菌の存在を明らかにした論文が出て今年でちょうど30年。
次の30年で胃の疾患の様相も大きく変わることでしょう。

実際に保険適用が認められたら、また改めて話題に取り上げてみたいと思います。

胃の模型写真に撮ったのは、胃潰瘍の説明に使ってくださいともらった胃の模型。
裏側には別の模型があり、逆流性食道炎にも使えるようになっています。

これに限らずほとんどの胃の構造模型にみられる間違いがあるのですが、わかりますでしょうか。
それは胃の中全体に気持ち悪いくらいに作られているヒダです。

周囲が赤く真ん中が白いの胃潰瘍のある部分を胃角部と言います。
これよりも左側、胃の出口である幽門にかけての部分は幽門前庭部と名付けられていますが、内視鏡で観察すると縦方向のヒダはこれほどはっきりと存在しません。

胃のヒダ実際の内視鏡画像を提示します。
上の弧を描いている部分が胃角部です。
その真下の部分から手前の胃体部にはヒダが確認できますが、その奥の前庭部ではヒダが追えなくなるのがおわかりでしょう。

ヒダにはどのような役割があるのでしょうか。
特殊な検査で確認されているのは、胃体部では食べ物が行ったり来たりしていること。
ヒダが食べ物の流れをガイドしている可能性があります。 
また、食べ物の有無で胃の大きさが変化しますが、 その際の蛇腹のような役割もあるのでないかと思います。
内視鏡検査では胃の動きを止める注射をしますし、食べ物があると視界不良なので絶食の状態で観察をします。
なので、検査中に消化の際の動きを肉眼で観察するのはまず無理。


前庭部では歯磨き粉チューブを絞るようなとでも表現しましょうか、砂時計のようなくびれができてそれが幽門へ向かって動いていきます。 
この動きは、注射していても観察できる場合があります。
幽門に近いほど輪状筋と呼ばれる胃の筋肉が発達していて、次の十二指腸へ内容物を送り込むような運動をするわけです。
この途中で縦方向のヒダが一時的に現れますが、普段はつるんとしています。
胃は入り口付近と出口付近で運動だけでなく、粘膜の細胞レベルでも随分違った性格を持っています。

胃の動きが乱れることが機能性ディスペプシアと呼ばれる疾患の一因とも考えられています。
消化管の運動と症状との関連性が簡単に調べられる検査法が開発されると面白いのになと思っています。 

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