野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して43年の野口内科です。
  医療・健康に関する情報はもちろん、近隣の話題、音楽・本のことなどを綴ってまいります。

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⑥ 医療関係の情報

IB-Stim-CloseUp-Palcement-Web先日、アメリカ食品衛生局 ( FDA ) が、耳の後ろに弱い電気刺激を与えて過敏性腸症候群 ( irritable bowel syndrome : IBS ) の腹痛を緩和させるというデバイスを認可しました。

          FDAのニュースリリース ( → こちら )
          メーカーのサイト ( → こちら )

このデバイスを3週間使うと、少なくとも3割は激痛から開放されるようです。
右の写真はメーカーのHPにあったものです。

♦♦♦♦♦
 
正確なメカニズムはわかっていないようですが、電気刺激が脳の扁桃体と呼ばれる場所や脊髄をコントロールするようです。
扁桃体は、情動反応の処理や記憶形成などに重要な役割を持っていて、生命を脅かすような恐怖や苦痛を学習し、危険を予知・回避する行動に結びつける働きがあります。
慢性的に痛みが繰り返されると、痛みを学習した扁桃体が興奮しやすくなります。
また、痛みだけでなく抑うつや不安などの情動も扁桃体で処理されるので、これらの陰性の情動が痛みに大きく関わってきます。



さて、最新のIBSの診断基準を示します。
ROME IV基準によると、

週に1回以上の腹痛が3ヶ月以上続き、

 ① 排便により症状が改善すること
 ② 排便頻度が症状の変化に関連するこ
 ③ 便の形状 ( 外観 ) が症状の変化に関連すること

以上3つの排便異常のうち2つの以上の項目を満たし、症状は6ヶ月以上前から出現していること

となっています。
やや理解しにくい文章ですが、簡単に表現すると「腹痛を伴う慢性的な便通異常」となります。

腹痛症状の強い人になると、職場や学校にたどり着くまでに何度もトイレに駆け込んだり、腹痛のため不登校になってしまう場合もあります。
このように、IBSは生活の質にも大きく関わってくる疾患です。
今回米国で認可されたデバイス、確実性はないものの、痛みの軽減で救われる方が増えるようなので期待したいです。

♦♦♦♦♦

IBSは日本においては15%近くの方が罹っているとされていますが、日常生活に支障をきたしているのに病院を受診されないままの方が多いです。
ありふれた疾患なのに関心を持つ医師が少ないのも残念なことで、不必要な検査を繰り返したり、IBSでない患者をIBSと診断したりするケースも見受けます。


日本には、有り難いことにIBSにみられる腹痛や便通異常をコントロールしてくれる漢方薬が存在します。
正しく診断し、これらの漢方薬を中心に既存のIBS治療薬を上手に組み合わせると、とても楽に過ごせるようになります。
IBSに悩んでおられる方は、一度当院にご相談下さい。



なお、耳を刺激するデバイスは、最初にオピオイドの離脱症状を軽減させるために使われ始めたようです。
また、耳から迷走神経を電気刺激して、心房細動を治療しようというデバイスも開発中とか。( → こちら )
耳にはたくさんのツボがありますから、今後いろんな症状を緩和するデバイスが続々と出てくるかも知れませんね。

マイナンバーカード今月初めに、2021年からマイナンバーカードが健康保険証として利用可能になる、というニュースがありました。

マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせることについては2014年の「世界最先端 IT国家創造宣言」の中に盛り込まれており、翌年に厚生労働省から素案が発表されていました。
若干古いようですが、医療分野でのマイナンバー活用についての中間報告のPDFを見ることができます。( → こちら )

保険者間で特定検診のデータなどを連携できたり、予防接種履歴管理ができたりするなどのメリットもあるようですが、私が一番気にしているのは報道にあったこの部分です。

「2021年3月から健康保険証として使えるようにし、22年度中に全国のほぼすべての医療機関が対応するようシステムの整備を支援する」

カメラ付きの顔認証システムを組み込んだマイナンバーカード読み取り装置を病院の窓口に用意しなくてはならないようなのです。
報道では「支援する」とあるので、装置購入費用を補助するという意味だと思いますが、国が全額負担するようにしないと医療機関側での普及が進まないのではないかと思います。
日本医師会も「医療機関においては、読み取る設備を用意していなければ、患者がマイナンバーカードを持ってきたとしても保険資格を確認することはできず、その場合、当然、窓口ではこれまでのように保険証を提示する必要がある」と説明をしています。( → こちら )

東京オリンピックでは本人確認に顔認証システムが導入されるようですが、その装置の写真を見ることができます。 ( → こちら )
この位の大きさになると、小さな医療機関では受付や待合室に空間的ゆとりがなくて装置を置くスペースが確保できないとか、配線に苦慮するような問題も出てきそうです。

果たして、目標としている22年度中までに全ての医療機関が対応できるようになるのか、私は疑問に思います。

「高齢者診療におけるポリファーマシー」と題する論文が載っているのは、日本内科学会5月号。(日内会誌 108 : 971 ~ 977, 2019
具体的な事例を挙げ、その問題点を洗い出し、高齢者に複数処方されている内服薬の適正化の過程を示しています。


♦♦♦♦♦ 高齢者に処方されている薬の現実に論文ではどう対応したか ♦♦♦♦♦

論文に書かれているその症例の概略をみていきましょう。

入院症例 : 87歳、男性。
経過 : 施設入所中に発熱・低酸素血症あり、誤嚥性肺炎と診断され入院。
既往歴
: 高血圧症・脂質異常症・高尿酸血症・アルツハイマー型認知症・不眠症・骨粗鬆症・変形性膝関節症・前立腺肥大症。
脳梗塞や心筋梗塞の既往はなし、アルコール・喫煙習慣はなし。

そして、入院時の投薬内容です。
1日に12種類、計18錠も服用しています。

( 内科クリニックより )
 ① バルサルタン           80mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ② トリクロルメチアジド         1mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ③ ロスバスタチン         2.5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ④ 酸化マグネシウム       330mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑤ フェブキソスタット        10mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑥ エチゾラム           0.5mg     1回1錠 1日1回 就寝前
 ⑦ ドネペジル塩酸塩           5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑧ オメプラゾール          10mg     1回1錠 1日1回 朝食後

( 整形外科クリニックより ) 
 ⑨ ロキソプロフェンナトリウム    60mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑩ レバミピド          100mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑪ エルデカルシトール        0.5μg     1回1錠 1日1回 毎食後

( 泌尿器科クリニックより )
 ⑫ シロドシン             4mg      1回1錠 1日1回 朝食後

入院中に抗菌薬の点滴治療を行なったが、経口摂取が十分にできず、一時的に全ての内服薬を中止。
すると・・・、
・降圧薬
中止後も収縮期血圧は100~110mmHg前後を推移、そのまま中止
・利尿薬中止で頻尿も目立たなくなり、排尿障害治療薬も中止
・ふらつきの原因と考えられた抗不安薬
を中止しても不眠は起こらず
・適応疾患不明のPPI
も中止

その結果、以下の7種類、13錠に減らすことができたようです。

( 内科クリニックより )
 ③ ロスバスタチン         2.5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ④ 酸化マグネシウム       330mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑤ フェブキソスタット        10mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑦ ドネペジル塩酸塩           5mg     1回1錠 1日1回 朝食後

( 整形外科クリニックより ) 
 ⑨ ロキソプロフェンナトリウム    60mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑩ レバミピド          100mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑪ エルデカルシトール        0.5μg     1回1錠 1日1回 毎食後


♦♦♦♦♦ 私なら、こう考えてもっと減薬する ♦♦♦♦♦

薬を飲むこの症例では、入院をして血圧の推移や睡眠の状態を把握できたため、減薬に繋がりました。
しかし、私が思うにそれ以外にも減らせるものがあり、それは入院に関係なくできそうなものです。

具体的に考えてみましょう。


■ 高齢者へのスタチン投与について

まず、高コレステロール血症治療薬
について。
この方は、既往歴に脳梗塞や心筋梗塞がないので、この薬は一次予防(
※)に使っていると思われます。
スタチンと呼ばれるこの種類の薬は、75歳以上の方が服用しても
脳梗塞や心筋梗塞の予防効果がないとされています。
ただし、2型糖尿病のある75歳から84歳の高齢者での有用性の報告はあります。
今回の症例は、87歳で糖尿病もありませんから、もはや服用する意味はないと思われます。

また、
は下剤と併用すると血中濃度が約50%低下したという報告もありますので、この両者を併用する場合は、服用するタイミングをずらす工夫が必要となります。

( ※ 一次予防 : 疾患を引き起こさないための予防。対して疾患の再発を防ぐものを二次予防と呼ぶ。)


■ 高尿酸血症は治療すべきか

次に、高尿酸血症治療薬
について。
日本では、尿酸が高いと心臓や腎臓の疾患に繋がるという理由で、積極的に薬が使われる傾向があります。
しかし、欧米では高尿酸血症治療薬には心臓や腎臓の疾患の予防効果は認められないとして、痛風発作を起こした方の二次予防として使われるだけです。
いろいろ議論のあるところですが、この方については、尿酸を上げてしまう降圧薬
と利尿薬の2つの薬剤を中止できたわけですし、無理をして服用することはないでしょう。

従って、私だったら
も中止しちゃいます。


■ 酸化マグネシウム錠剤の工夫と注意点

次に、下剤
について。
これには500mgという剤形もありますので、500mgを1日2回・朝夕食後、とすれば1錠減らすことが可能です。
注意したいのは、PPI
を中止したのでの作用が増強し、軟便 ~ 下痢になってしまう可能性があること。
便の性状を見ながら投与量を加減する必要が出てきます。


■ 解熱鎮痛薬の功罪

整形外科から出ているロキソプロフェン
について。
87歳という高齢の方に対して、消化管や腎臓などに影響の大きい薬をフルドーズ使っても大丈夫なのか疑問を感じます。
私だったら怖くて処方できません。
鎮痛効果は劣るものの、副作用が少なく1日2回投与で済むセレコキシブへの変更はできないでしょうか。
アセトアミノフェンという手もありますが、錠数が多くなってしまうのは高齢者には負担だと考えます。
この症例の男性については、「何とかつたい歩きが可能」という記載がありますので、積極的に鎮痛薬を活用すべきなのかどうか検討が必要です。


■ 解熱鎮痛薬に併用される胃薬について

そして、胃薬
について。
レバミピドは、整形外科領域の医師が、鎮痛薬を出す際に併せて処方することの多い薬です。
でも、鎮痛薬で一番懸念される胃潰瘍などを含む胃粘膜障害の予防には全く歯が立ちません。
正直、無駄な処方です。
本当にこの副作用を予防したいのなら、中止した
PPIの方が望ましいのです。
適応疾患不明ということで切り捨てられた
の代わりに復活させたいところです。

日本の保険診療のおかしなところなのですが、鎮痛薬と併せてやテプレノンを処方することには何のお咎めもありません。
一方、副作用予防が期待できる
を併用すると、必ず処方理由を問われます。
本当はあってはならないことで、逆になぜ
を併用しないのか、を処方する意味は何なのかを問うようにして、処方の適正化を図っていくように促すのが本筋だと私は思うのですが。

なお、
には鎮痛薬による小腸粘膜障害を予防する効果があるとされています。
小腸粘膜障害を予防する効果は、イルソグラジンマレイン酸塩という胃薬にも認められています。
この薬ならば、1日1回の投与も可能で、
のように3回服用してもらう煩わしさはありません。
どうしても胃粘膜防御因子増強薬にこだわりたいのであれば、考慮してみたい薬です。



以上のことを踏まえて、私なりに更に減薬を進めると、次のようになります。
1日5種類、7錠まで減らすことになりました。
昼食後の服用がなくなるのもポイントです。
ただし、この高齢者の腎機能に異常を認めないという前提です。
腎機能の低下があれば、
の減量やの中止も考えないといけないからです。

( 内科クリニックより )
 ⑬ 酸化マグネシウム       500mg     1回1錠 1日2回 朝夕食後
 ⑦ ドネペジル塩酸塩           5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑧ オメプラゾール          10mg     1回1錠 1日1回 朝食後
     (又はイルソグラジンマレイン酸塩 4mg     1回1錠 1日1回 朝食後)

( 整形外科クリニックより ) 
 ⑭ セレコキシブ                           100mg     1回1錠 1日2回 朝夕食後
 ⑪ エルデカルシトール        0.5μg     1回1錠 1日1回 毎食後


♦♦♦♦♦ 減薬についての私の考え ♦♦♦♦♦

長々と書きましたが、私は以前から減薬には積極的です。
遮二無二、薬を減らすことだけを目的にしてはいけません。
患者さんの状態と薬の効果・副作用・相互作用をよく吟味し、投薬の必要性の評価を折りに触れて行ない、適切な処方を心がけたいものです。


「筋の通った処方箋はシンプルで美しい」

これが私のモットーです。

連休中に気になるニュースが。

学校で心停止になった子供に対し、救急隊が到着するまでに自動体外式除細動器 ( 以下 AED ) が装着されたかどうかを調べたところ、高校では男子生徒に比べ女子生徒で30ポイントの差 ( 男子 83.2%、女子55.6% ) があったという調査結果が公表されました。
小中学校では男女差はなかったようです。

すぐ側で人が倒れる場面にはなかなか遭遇しないと思いますが、平成20年から27年にかけて全国の学校で心停止になった子供が232人いたとか。
この数字、少ないと感じるか多いと感じるか‥。

人は緊急事態に遭遇した時に、それを楽観視して合理的な行動ができないことが知られています。
これを正常性バイアスと言います。

自動体外式除細動器人が目の前で意識を失って倒れた時に、すぐにAEDを思い浮かべることができるかどうか。
周囲の人達にも協力を仰ぎながら、AEDを取り寄せ、ためらわずに装着できるかどうか。
日頃から講習などを受けて、一刻を争う状況にしっかり対応できるようにしておかなくてはなりません。

女性の肌を露出させることに対しても、正常性バイアスが影響して躊躇するのかも知れません。
AEDをもっと普及させる上で、今回の報告で浮かんだ課題をどう克服するかも改めて考えなければなりませんね。

なお、装着する以前に使い方がわからない方も多いと思いますが、AEDは蓋を開けると音声ガイダンスが流れ、電極パッドを貼る位置なども教えてくれますし、電気ショックが必要な状態かどうか自動的に判断してくれます。

ゼンリンとの契約解除をきっかけにして、Googleマップの不具合が相次いで報告されています。
鹿児島でも、鹿児島湾上にトイレが表示されたり、山中に巨大な湖が出現したりしていたことがニュースになっていました。
いずれも改善されているようですね。

さて、当院はどうなっているでしょうか。
下の地図をご覧下さい。( クリックで拡大 )
野口内科周辺の地図

全く問題なく表示されています。

これで安心していたのですが、別のところでとんでもないことが起きていました。
それはストリートビューです。
当院の西側を南北に走る道をストリートビューで見てみるとこんなことになっています。( クリックで拡大 )
九州自動車道

真っ暗で、当院の影も形もありません。
どうやら、当院の東端のほぼ真下を走っている九州自動車道のトンネル内部が表示されているようなのです。
これでは劣化したと言われても仕方ないですね。

当院にGoogleマップを利用して来られる際、もしかしたらトンネルの途中で目的地だと示されるかも知れませんが、くれぐれもお気を付けて。

3月11日は東日本大震災から8年目となり、テレビや新聞などでは様々な特集が組まれました。
私が阪神淡路大震災を経験していることは、既にこのブログでも繰返し取り上げています。
阪神淡路大震災では火災が、東日本大震災では津波が、被害に更なる拍車をかけましたけど、同じ地震が原因になっていても個々で異なる問題が生じます。


map鹿児島では桜島の大噴火の可能性があります。
3月9日には鹿児島救急医学会等が中心となった座談会が行なわれ、大規模な噴火の際の入院患者の安全確保についての議論が行なわれたようです。

噴火時の直下型地震や津波なども想定されていますが、一番の問題はやはり火山灰でしょう。
火山灰はその時の風向きによっても堆積量が異なって来るものの、一番の人口密集地である鹿児島市は灰に埋もれてしまうのは必至。
大正噴火クラスの規模の爆発があり風向きが鹿児島市内方面だと、当診療所のある武岡地区では約1mも火山灰が降り積もる予測がなされています。
鹿児島の方ならよくご存じでしょうが、火山灰が水分を含むとセメントのように固まってしまいます。
50cm積もったまま水を含むと家屋が倒壊してしまう可能性もあるようですね。

通常の災害などでは比較的早期から行われるであろう救助活動や支援物資の供給が、降灰に阻まれてかなり遅延してしまうことは間違いありません。
3日は備えておくべきと言われている食糧や燃料も十分とは言えないでしょう。
4月になれば熊本地震の話が盛んになってくると思いますが、こういう機会を捉えてでもいいので、大噴火を見越した備えを真剣に考えてみて下さい。

沢井製薬の販売する胃薬、エカベトNa顆粒 ( エカベトナトリウム水和物 ; 先発品名ガストローム ) にアセタゾラミドという利尿剤が微量ながら混入していたとして自主回収が始まりました。
これが判明したのは、男子レスリング選手のドーピング問題がきっかけだったようです。
尿から禁止薬物の一つであるアセタゾラミドが検出されたものの身に覚えがなく、医師から処方された薬の分析を依頼したら、この胃薬に含まれていることがわかったそうです。
選手は疑いが晴れて何よりです。
また、「ひとつ上の品質」「確固たる安全性」を謳うメーカーには混入した経緯をしっかりと洗い出してほしいものだと思います。


さて、胃薬には様々な種類のものがありますが、エカベトナトリウム水和物は防御因子増強薬というものに分類されます。
バランス説1961年に発表された「ShayとSunのバランス説」というのがあって、消化液でもあり胃自身を侵してしまう可能性のある胃酸やペプシンなどを「攻撃因子」、その攻撃因子から胃を守る粘液やプロスタグランジン・胃の粘膜の血流などを「防御因子」とし、このバランスが乱れた時に胃炎や胃潰瘍が起こるとするものです。
エカベトナトリウム水和物はプロスタグランジンを増やしたりペブシンを抑えたりする働きがあるとされています。

胃炎防御因子増強薬のほとんどは「胃潰瘍」「急性胃炎」「慢性胃炎の急性増悪期」で使えることになっています。
慢性胃炎の急性増悪期」って一体何なのでしょう。
私は、消化器を専門分野として扱っていますが、正確には答えられません。
多分、誰も答えられないでしょう。

そもそも慢性胃炎の定義からして曖昧です。
臨床症状から診断することがありますし、内視鏡や病理の分野でもそれぞれの考え方があります。
ましてや急性増悪期となるとさっぱりわかりません。
医学書に出てくるような用語でもなく、消化器医の口を衝いて出る言葉でもありません。
それなのに「慢性胃炎の急性増悪期」を治す薬がたくさん存在しています。
不思議です。

ただ、私の処方で防御因子増強薬の出番は非常に限られますし、エカベトナトリウム水和物を使わなくなって随分久しいです。
今回の回収騒ぎには巻き込まれておりませんので、ご安心を。

昨日の新聞に、鹿児島市の19年度の当初予算案が示されていました。
その中で2つの風疹対策が目を引きました。

予防注射一つは、過去に予防接種を受けなかった7~19歳を対象に、はしか・風疹混合ワクチン ( MRワクチン ) の無料接種を3年間実施するというもの。
無料接種は夏ごろから始める予定らしいですが、対象者を約8500人と見込んでいるようです。
未接種の方、かなり多いんですね。

もう一つは、39歳から56歳の男性約6万4千人に無料で風疹の抗体検査を3年間実施するというもの。
事業所での健診や特定健診の機会を想定しているようです。

いずれも大事な施策です。
まだ議会を通ったわけではありませんが、この機会をおおいに活用して下さい。


参考 → 「流行中の風疹、鹿児島でも」「強力な麻疹 ( はしか ) の感染力」。

先月のことですが次のような研究結果がニュースになっていました。

カレー粉に含まれるスパイスがPM2.5による炎症を抑える可能性

カレーカレーをよく食べる高齢者は呼吸機能が保たれるという報告に着目して行われた実験です。
ヒトの気道上皮細胞をディーゼル排気微粒子を混ぜた溶液に浸した後、カレーに使われる様々なスパイスを添加して培養し、炎症の際に増えるインターロイキン-6や細胞外活性酸素種の変化をみたというものです。
その結果、カレー粉、クローブやウコンの抽出物、コリアンダー、桂皮に炎症反応を抑える効果が確認できたとか。

そういう報告を聞くと、カレーを買いに走る人もいらっしゃるかも知れませんが、注意が必要です。
例えば、今回の研究は培養した気道上皮細胞にスパイスを直接添加しているのですが、実際にカレーとして食べた場合にスパイスの成分がどれだけ気道に到達するのか。
また、炎症の主体は気道上皮細胞ではなく、肺胞マクロファージという細胞ではないのか。
論文になっていないので詳細がわからないのですが、報道されている断片からもいろいろ突っ込みたくなる部分がありますし、何よりプレスリリースしたのがハウス食品なのは留意したい点。
カレーを売ってる食品メーカーだからダメ、ということはありませんが、研究デザインや結果などをつぶさに検討した上で、カレーを積極的に摂るべきかどうかを判断したいものです。


ココアついでに、バレンタインデーも近いので、ココアに関する情報も見てみましょう。
ココアを飲用するとナチュラルキラー細胞の活性が上がる、という報告がありますので森永製菓のホームページ ( HP ) を参照してみて下さい。( → こちら )
それを基に、チョコレート・ココア業界でインフルエンザの予防になるという宣伝がなされていたりします。
しかし、これもどうでしょうか。
的確に問題点を捉えている厚生労働省のコラムがありますので、そちらを読んでみてください。( → こちら )
紹介した森永製菓のHP、実はココアを飲むとインフルエンザの予防になるとは一言も書いてありません。
でも、多くの方は勘違いしてしまう巧みな内容になっています。

ただ、私は風邪で漢方薬を処方する時に、ココアに混ぜて飲むといいですよ、とお勧めすることがあります。
漢方薬の独特の味がマスクされて飲みやすくなるのです。( → 小児への漢方の飲ませ方に一工夫 )
もしかしたら、相乗効果があるかも知れないとちょっぴり期待をしている部分もあります。
 

インフルエンザ新年が明けて、外来ではA型インフルエンザの方が急増しています。
年末年始の民族大移動が感染を拡散させるのだろうと思います。


治療薬としてはこれまで

◎ タミフル ( 内服薬 )
◎ リレンザイナビル ( 吸入薬 )
◎ ラピアクタ ( 点滴 )

の4種類がありましたが、昨年の流行の終わる頃に「ゾフルーザ」という、これまでとは作用機序が異なる新薬が発売されました。
たった1回服用するだけで済むということでテレビや新聞などで盛んに報道されており、この薬を指名する方もいらっしゃいます。


しかし、注意点もあります。
まず、A型インフルエンザウイルスの遺伝子変異が他の薬と比較して高頻度 ( 23.3% ) にみられること。
変異することで薬の効きが悪くなるようで、WHOはゾフルーザが発売されている日本・米国と未発売のオーストラリアを比較して、この変化を監視しています。
日本小児科学会では推奨を見送りましたし、現段階では採用しないとする医療機関もあります。

また、薬価の問題もあります。
通常、3割負担でおおよそ1400円強しますが、体重が80kg以上の方は倍量服用する必要があり、当然負担も倍になります。
これに対して、昨年9月に発売されたタミフルのジェネリックである「オセルタミビル」は3割負担で400円ほど。
タミフルのジェネリックなら、窓口での支払いが1000円ほど安くすむのです。

そして、1例だけゾフルーザを内服後に嘔吐してしまった方がいらっしゃいました。
保険診療上、もう一度処方することができないのです。
一発勝負の怖さですね。


以上のような情報を提示し、さらにどれを選んでも症状が軽くなるまでの時間にほとんど差がないことを説明した上で、どの薬を選択するかは、患者さんと相談して決めています。

ま、罹らないに越したことはないので、基本的なうがいや手洗いを徹底して予防に努めて下さいね。


今年の春先は麻疹が流行しました。( → 強力な麻疹 ( はしか ) の感染力 )
今は、関東や東海地方を中心に風疹の流行が続いています。
今月14日までに1289人の発症が確認され、去年の13倍以上になるに至り、米国疾病管理予防センターは、予防接種や過去の感染歴がない妊婦は日本に渡航しないよう22日に勧告を出しました。
恥ずかしい限りですね。

25日になって、とうとう鹿児島県においても風疹患者が1名確認されたと発表がありました。
薩摩川内市の40代の男性だということです。
流行地域への渡航があったのかどうかなど詳しい情報が知りたいところです。

ちなみに、薩摩川内市は2013年の流行時にも鹿児島県内で最も多くの患者が確認された地域です。
当時のブログに先天性風疹症候群のことなどに簡単に触れていますので、参照してみて下さい。

風疹の予防接種の重要性
風疹、鹿児島は要注意です

妊婦また、NHKでは以前から「ストップ風疹」というプロジェクトを続けています。
今回も非常にわかりやすい1分の動画を公開していますので、是非ご覧になって下さい。( → 「ストップ風疹」感染拡大を防ぐには(ショート動画))
この動画については、ツイッター上で「どうぞ、ご自由に使って下さい」とありましたので、今月から始めたばかりのデジタルサイネージにおいても活用させてもらっています。( 10月からデジタルサイネージ、開始してます )

流行が拡大する前に、妊娠を希望される女性やその周囲の方々は、抗体検査やワクチン接種を積極的に行って下さいね。

昨日、NHKの番組「日本人のおなまえっ !」で身近な病名の由来を取り上げていました。
その中で、昔の人は病気の原因が風邪 ( ふうじゃ ) にあると考えていたので、痛風や中風といった名前が付けられていたという話がなされていました。
また、インフルエンザに「印弗魯英撒」という当て字がなされていたのは、海外との交易によりもたらされたとの考えに由来しているようです。
インド・フランス・ロシア・イギリスが撒くという意味のようで、これには座布団をあげたくなります。

風邪について説明を加えておきます。
中医学の世界で「風・寒・暑・湿・燥・火」の6つの「気」が複雑に変化して、人体に影響を及ぼし病気が起こると考えていました。
発病の原因となった気は「風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪」と呼ばれるのです。

蟯虫それ以外に古代の人々は、神の怒りや怨霊、庚申信仰に基づく腹の虫などが病の原因と考えてきました。
左の図は「針聞書 ( はりききがき ) 」という書物の中で描かれた63種類の腹の虫の一つ、「蟯虫 ( ぎょうちゅう ) 」です。
多くの人の探求のおかげで、細菌やウイルス、遺伝的な素因や生活習慣などが病気の元になることがわかり、大概の疾患が治せる現代人は、とてもありがたい時代に生きているものだなと思います。


このブログでは、胃液がこみあげてくる「呑酸」ということばを考察したことがあります ( → どんさんそうそう ) が、医学用語には不思議なものがいっぱいあります。
薬を飲むことを「内服」と言いますが、なぜだかわかりますか ?
解説してもいいですが、自分で調べてみましょう。
ヒントとして、中国最古の地理書「山海経 ( せんがいきょう ) 」という書物にその由来があるとだけお伝えしておきます。

この2~3日の間に大腸に関連するニュースが続きました。
大腸がん、便潜血反応検査、大腸内視鏡検査についてです。
それぞれの話題を考察してみましょう。

♦♦♦♦♦

まず、2014年に新たにがんと診断された人の中で最も多かったのが大腸がんであった、というもの。( → こちら )
大腸がんが増えてきた理由は定かではありませんが、以前から

・運動不足や肥満が大腸がんのリスク。
・大腸がんのベースとなる大腸ポリープは糖尿病との関連が言われ、HbA1c が 1%上昇するとポリープ有病率が33%増えるとの報告。
・HDL-コレステロールが高いと大腸がんのリスクが低い。

等の報告があり、大腸がんはメタボリックシンドロームの延長にある疾患と言えそうです。

このところ、腸内細菌との関連が指摘され、大腸がんの組織からフソバクテリウムという細菌が多いという報告 ( → こちら ) や、食物繊維の多い食事でフソバクテリウムによる大腸がんリスクが減るという報告があります。( → こちら )
他に、バクテロイデス・フラジリスという細菌の関与も指摘されています。( → こちら )

ナッツや魚油、アブラナ科の植物は大腸がんのリスクを低下させるという報告もあり、大腸がんの予防は、メタボ対策を講じつつより良い食生活を目指すことに尽きるのではないかと思います。

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さて、大腸がんを見つけ出す手段として便潜血反応検査には高い有効性があることがわかっています。
その検査キットを市販化する動きがあるのに対し、精度管理などに懸念の声が上がっているというニュースが。( → こちら )
厚生労働省内でも意見が分かれているようで、市販化が実現するかどうかはまだ不透明。
賛成・反対どちらの意見も理解できますが、がん検診を受ける人が少なく、大腸がんが増えてきている日本の現状で、次の一手をうつ必要がある用に思います。

強調しておきますが、便潜血反応検査は1回でも陽性になれば、大腸の精密検査を受けなくてはなりません。
そのあたりの理解がなく、再検査をオーダーする医師もいるのですが、間違いです。
詳しくは、以前書いた「便潜血反応検査について」を参照して下さい。

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大腸内視鏡大腸がんの有無を調べるのに主力となっているのは大腸内視鏡検査ですが、座ったままで検査を受けると苦痛が軽減されることを自ら試して証明した研究に対し、イグ・ノーベル賞が授与されたニュースが大きく取り上げられました。( → こちら )
検査は通常、左を下にして寝てもらう左側臥位というポジションで行います。
内視鏡が挿入しづらいと仰向けになってもらっうなど、体位変換をする場合がありますが、座位になると我々と患者さんが向き合う格好になり、お互いばつの悪い雰囲気になるでしょうね。

自分で自分の大腸内視鏡をする医師を何人か知っていますが、ずっと座位で検査する先生は見たことがありません。
私は、経鼻内視鏡なら何回か自ら行い、このブログでも以前紹介しました。
大腸内視鏡を行なうとするなら、座位でもできる専用の椅子から開発に着手したいと思います。

東京医科大学の不正入試問題を発端にして、医学部入学にあたって女性差別があるのでないかという問題がクローズアップされています。
3日には文部科学省が、中間報告として各大学の過去6年間の平均の男女別の合格率の差を発表しました。
全大学の平均で男子が女子より1.18倍合格率が高く、順天堂大学は1.67倍もあったとか。
ちなみに、私の出身大学である神戸大学は1.04倍、地元の鹿児島大学は1.02倍という数値でした。( → こちら )

女性差別ただでさえ忙しい医療現場で、休職する可能性が高い女性医師の比率が高くなるのを嫌う人がいるのは事実で、入試で女子を制限しているのではという疑念に繋がっていると思います。
実際、出産前後にわずか3ヶ月の休職を申し出た後輩に対して聞くのも嫌になるような悪態をついていた先輩の男性医師がいました。
また、同じように休職を願い出た女性医師に二つ返事でOKを出しておきながら、話が終わり女性の姿が見えなくなった途端「女はこれだからな !」と吐き捨てていた別の先輩もいました。

医師が忙しい理由の一つに、医師でなくてもできる仕事を負担していることがあります。
国立の病院に勤務していた時、内視鏡の準備や洗浄などが下っ端の医師の担当だったのはその典型例です。
医師という資格がなければできない仕事に専念できる環境を整えて、男女の区別なく働き甲斐のある医療現場が実現できればと願っています。

ちなみに、私の入学時には120人中26人が女性。
これでも先輩たちの学年よりも女性の比率は多かったのですが、後輩の学年ではその比率はますます高く学部内が華やかになっていきました。
なお、当時の国立の医学部の入試は筆記試験のみで、数値化しにくい面接はありませんでした。

元々医療機関は、看護師を中心に圧倒的に女性の多い職場だからでしょうか、個人的には女性医師との仕事に違和感を感じたことはありません。
タフな世界に身を投じるだけあって頼もしい面々が揃っていたので、一緒に楽しく仕事が出来たように思います。
海外諸国と比べ女性医師の割合がとても低い日本では、まだまだ女性医師が増える余地があります。
男性に比べ女性医師が担当する患者は生存率が高いという報告もあります ( → こちら ) し、私が何らかの病気で医療機関にお世話になる時は、女性医師に担当してもらいたいと思っています。

17日に、米国ニューヨーク大学の医学部が、授業料を免除する奨学金を提供すると発表しました。
授業料は日本円にして年間610万円と言いますからかなりの負担です。( → 米NY大学 全医学部生の授業料を免除へ )

ローン地獄米国では、医学部に限らず、大学に入ると多くの学生が学生ローンを組むそうです。
返済義務のない奨学金がもらえたり、学費の割引があったりするようですが、その恩恵を得られるのはごく一部。
日本と違って勉強漬けでバイトができるわけでもなく、ローンの返済に苦しみ、不良債券化している割合も高いため社会問題化しているようですね。
ですから、今回のニューヨーク大学の英断が大きなニュースになっているのだと思います。


さて、日本の医学部の2018年度の授業料を調べてみました。
国立大学は他の学部と差がなく、年間535,800円です。
私立大学では、最も安いのが最近新設された国際医療福祉大学で6年間で1850万円 ( 年間約308万円 ) 、最も高いのが川崎医科大学で4716万5千円 ( 年間約786万円 ) です。 (  → 参考 )
私立の医学部に関しては、米国並みのところも結構ありますけど、親御さんはどうやって支払っているのでしょうか。
そして、医学部って何でこんなにコストがかかるのか、なぜ大学間でばらつきが大きいのか、他人事ながらとても気になります。

ちなみに、私の時代の大学授業料は216,000円でした。
入学年度の額がそのまま卒業まで適用されます。
半期に一度納付しますが、その都度10万円を少し超える額を納めていました。
先輩の学年はさらに安くて7万円台と9万円台のだったので、うらやましく思っていました。
今にして思えば、安い費用で医師として養成させていただいたことに感謝しなくてはなりませんね。


学習意欲が高く将来社会に大きな貢献が出来る可能性のある人が、費用を理由にあきらめざるを得ないミスマッチは我々にとっても大きな損失です。
医学の分野に限らず、優秀な人材を埋もれさせないためにも、学費の問題は真剣に考えていかなくてはならないでしょう。

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