野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して43年の野口内科です。
  医療・健康に関する情報はもちろん、近隣の話題、音楽・本のことなどを綴ってまいります。

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 薬・注射の話

当院の新型コロナウイルスワクチンの接種状況ですが、本日までに1回目の接種を終えた方が472名、そのうち2回目も済ませた方が150名となりました。( 医療関係者も含めると 514名 / 192名 になります )

疼痛高齢者の方々が中心ですが、気になる副反応については1回目は筋肉痛・倦怠感などを訴える方もいれば、無症状の方もいます。
2回目に関しては、38℃を超える発熱の方を1例だけ確認しています。

2回目の接種前に解熱剤などを希望される方がいらっしゃるのですが、当院では予防投与は行っていません。
実際に起こった副反応の症状をみて適切な薬を処方することにしていますのでご了承下さい。

つらい副反応が出たら来院するように伝えていますが、150例の中で薬をもらいに来られたのはこの38℃を超える発熱の方と筋肉痛が耐えられないという方の2例のみです。

副反応については多くの報道があって皆さん気にされておられると思いますが、ご高齢の方はあまり過度に心配しなくても良さそうです。



参考
当院スタッフの新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体価
皆さんが気にしている新型コロナウイルスワクチンの副反応レポート」 
当院でのワクチン接種の流れについて」 

新型コロナウイルスワクチン接種を終えた当院のスタッフの抗体価を調べてみました。

2回目の接種を終えて19 ~ 21日後の採血で、富士レビオのSARS-COV 2 IgG S 試薬を用いています。
結果を下の表にまとめてみました。

抗体価02


抗体価の単位は ( AU / mL ) 。
副反応については、疼痛や発熱、倦怠感などの程度を考慮した色分けを行いました。
白 → 緑 → 黄色 → 赤 の順に程度が重くなっていくとイメージして下さい。
抗アレルギー薬と飲酒については、○ = 毎日、△ = 時々 を意味します。

サンプル数が少ないのですが‥

 ① 抗体価と副反応の強さに相関性はみられない
 ② 抗アレルギー薬を服用していると抗体価が高い
 ③ 飲酒の頻度が多いと抗体価が低い

そのような傾向が伺えます。

サンプル数の多い医療機関での報告が既にいくつかあり、同様の傾向があるようです。
しかし、年齢と抗体価の関係については、当院では既存の報告例とは異なっているような印象です。


2回接種7日後と30日後を比較し、30日後には抗体価が早くも低下しているという報告も出ています。
当院でもしばらく時間を置いて抗体価を改めてチェックする予定にしています。



参考
皆さんが気にしている新型コロナウイルスワクチンの副反応レポート」 
当院でのワクチン接種の流れについて」 

新型コロナワクチンを受けさせていただきました。
ワクチンを受けたいけれども、副反応を気にして躊躇している方もいらっしゃいます。
私と当院スタッフが経験した接種後の経過を報告したいと思います。

今後、皆さんが受ける際の参考にして下さい。

♦♦♦♦♦
 
筋肉注射の様子私が1回目の接種を受けたのは4月24日。
接種当日は、注射部位に若干の重みを感じる程度でした。
翌日になり、腕のポジションによって軽い痛みを感じました。
桜島の火山灰まみれになった車を洗いましたが、特に支障はなし。
翌々日まで痛みがわずかに残りましたが、仕事には全く影響はありませんでした。

2回目の接種はは5月15日の昼でした。
4-5時間後には、1回目の翌日に感じたレベルの痛みが出てきました。
翌朝、注射部位はカチカチになって1回目以上の痛みが出ましたが、そんなにつらいものではありません。
また、注射した腕側の腋窩に服で擦れたようなヒリヒリ感も伴いました。
何となく体がだるかったものの、雨の合間に草むしり。
昼頃に体温を測ると37.0℃ちょうどで、背筋に軽い寒気があったので、昼食後に麻黄附子細辛湯を服用しました。
( 麻黄附子細辛湯はあまり熱が高くなく寒気を感じるような風邪に有効な漢方薬で、食後の方が吸収がよくなります。)
すると、体がとても軽くなり、どういうわけか筋肉痛も感じなくなりました。
夕方には体温は36.2℃に。
夜に若干のだるさがまた出てきましたが、薬を服用せずそのまま寝ました。
翌々日はだるさも熱もなく、注射部位の硬さもほぼ消えました。
ただ、しつこく触ると痛がゆい感じが出ます。


一連の副反応を私は全く苦痛に思いませんでした。
むしろ、こうやって体に免疫が付いていくんだな、とその過程を楽しんだくらいです。

♦♦♦♦♦

当院のスタッフの状況ですが、副反応は様々で、次のような3段階に分けてみます。

1回目 ① 無症状 ② 軽度の痛み ③ 寝返り起きてしまう程の痛み
2回目 ① 無症状 ② 筋肉痛、軽い倦怠感と微熱、腰痛 ③ 高熱、頭痛、強い倦怠感

筋肉痛両方とも①だけという人もいれば、③が連続した人もいます。
また、1回目は①だったものの 2回目は③になった人もいます。
2回目の②や③は、早ければ接種当日の夜から、遅くて翌日から生じています。

1回目は痛みを軽減させるために薬を使う人はいませんでしたが、2回目はロキソニンなどの解熱鎮痛剤を使った人が多かったです。
解熱鎮痛剤を使うとかなり楽になるようで、仕事もほぼ普通にこなしていました。

♦♦♦♦♦

人類が初めて使うmRNAを利用したワクチンですが、抜群の効果があることは既に示されています。
我々のワクチン接種後の体の変化を参考にして、ワクチン接種は恐れることなく受けていただきたいと思います。

筋肉注射日本でも、ファイザー製の新型コロナウイルスに対するワクチン接種が2月16日から始まりました。
テレビや新聞で話題になっているものの一つに、このワクチンが筋肉注射であることが挙がっています。

今月上旬、医療関係者向けの新型コロナウイルス接種の説明会がありましたが、その際に会場から、筋肉注射に対する戸惑いとも受け止められる質問がなされていました。
医療従事者でも慣れてないんですよね。

というのも、日本では皮下注射での予防接種が一般的だからです。
これは、戦後の日本で筋肉注射による大腿四頭筋拘縮症という病態が多く報告されたことに起因しています。
その原因とされる注射に予防接種の薬液は含まれていなかったのにもかかわらず、です。
海外では、生ワクチン以外は原則筋肉注射です。

♦♦♦♦♦
 
当院では、ここ10年ほどの間に始まった肺炎球菌ワクチンや子宮頸癌ワクチンは、筋肉注射で行っています。
しっかり資料を読み込んで、筋肉注射の方が腫れや痛みなどの局所症状が少ない、と判断したからです。
普段からこの手技に慣れている当院スタッフは、今回の新型コロナウイルスの予防接種が筋肉注射であることに抵抗も違和感も全く感じておりません。

なお、当院は新型コロナウイルスワクチンの連携型施設に選定されました。
接種体制が整いましたら、このブログでお知らせしていく予定です。

♦♦♦♦♦

私はここ数年、インフルエンザの予防接種も筋肉注射で受けています。
注射部位の痛みや腫れがほとんどなく、とても楽です。
皮下注射に比べ、抗体価の上昇も筋肉注射の方が勝るというデータもあるようです。
一般の方にも勧めたいところなのですが、残念ながら厚生労働省がインフルエンザワクチンの筋肉注射を認めていません。
今回の新型コロナ禍を契機に、見直して欲しいなと思っています。

本日の地元紙の一面トップに『高齢者ワクチン接種開始 鹿児島市など「4月上旬」』という記事が出ていました。
全国規模の共同通信調査の結果で、鹿児島市は集団接種の会場や接種を行う医師・看護師の確保に概ね目処が立った、としているようです。


新型コロナワクチンしかし、我々が2月4日にワクチン接種説明会で聞いた内容とは若干異なっています。

まず、3月中旬から5週間かけて医療関係者 ( 歯科や調剤薬局、医薬品卸関係も含む ) に接種し、その後高齢者の接種が始まるというものでした。
そうなると、高齢者の接種開始は4月後半になるはずです。
また、当初考えていた集団接種よりも診療所などでの個別接種に軸足を移したい意向がみてとれました。

こういう混乱の最大の原因は、先行して接種開始となるファイザー製のワクチンの保存方法が特殊であることと、ほぼ全国民を対象とした大規模な事業であることにあるでしょう。
超低温で保存しているワクチンをフリーザーから取り出したら、短期間のうちに使わなければならないので、集団接種が効率的だろうと初期には構図を描いたのだと思います。
しかし、効率的にワクチンを配送できれば、少人数での個別接種も可能だし現実的だと考え方が変わってきているように思います。


ともあれ、3月中旬スタートの医療関係者向けのワクチン接種体制をどのように構築するか、今はそれに保健所や医師会が全力で取り組んでいるところです。

今年に入って、新型コロナウイルスに対するワクチンについて尋ねられることが多くなりました。
しかし、お答えできるような情報を全く持ち合わせていないのが実情です。

本日、新型コロナウイルスワクチン接種体制に係る説明会に参加してきましたが、一般の方に役立つ情報には乏しい内容でした。

主な説明は、
・ワクチンの流通や保管法について
・医療従事者向けの接種体制について
・医療機関での接種の実施体制について
・接種が予定されているワクチンの特徴や有効性、安全性について
でした。

ワクチンの保管や実施体制についてはこれから詰めていく作業が本格化します。
皆様にお伝えできる情報を得ましたら、当ブログなどで発信していく予定です。

新型コロナワクチン

うがい液8月4日に、吉村大阪府知事がポビドンヨード ( イソジン ) でのうがいで唾液中の新型コロナウイルスが減少することを記者会見で発表し、各方面から大きな批判を受けています。

批判の主な中身は次のようなものです。
・発表の根拠となった研究は症例数が少ないこと
・口の中だけウイルスがいなくなるとPCR検査で陽性と出なくなる可能性がある
・ヨードアレルギーの人に使えない
・長期使用で甲状腺機能低下症を招いたり、妊婦・授乳婦には使いにくいこと


大阪はびきの医療センターが発表した内容の最大の問題点は、ポビドンヨードうがいの比較対象が、うがいをしていない人だったこと。
これは、水でうがいをした人と比較すべきだったと思います。
うがいという行為そのものでも、口腔内から新型コロナウイルスが消える可能性があるかも知れませんからね。

♦♦♦♦♦
 
うがいするカエルヨード系のうがい薬を使っても風邪の予防効果がないと発表があったのはもう15年前のこと。
( Satomura K. Am J Prev Med. 2005;29:302-7 )  ( 参考 → うがい )
しかし、このことを知らない医療関係者が未だに多いことにはがっかりします。

細菌やウイルスに対する殺菌・殺ウイルス作用は確かにしっかりあるのに、このような結果になるのは、組織傷害性があるからだと考えられています。
傷口から出てくる滲出液の中には、白血球・免疫グロブリンや細胞を増やして傷の修復を進める細胞成長因子などが含まれています。
その白血球や細胞成長因子がポビドンヨードによってダメージを受けてしまうのです。( 参考 → 傷は消毒しない ( 湿潤療法 ) )

そういう研究報告を踏まえ、当院でポビドンヨードうがい薬を採用しなくなって久しくなりますし、「無意味なヨード系うがい薬」を当ブログで書いたのは2013年のことでした。

♦♦♦♦♦

 さて、今回はポビドンヨードが手術の際の消毒薬としてネガティブな結果発表が相次いでいることに注目してみたいと思います。


カテーテル米国疾病予防管理センター ( CDC ) は2011年にカテーテル関連感染予防ガイドラインを発表しています。
様々なデータを基に、中心静脈・末梢動脈カテーテル挿入前の消毒薬として0.5%以上のクロルヘキシジンアルコール ( ヒビテン ) を第一選択とするよう推奨しています。( → 参考 )

CDCの発表以降になりますが、2015年にランセットに掲載された論文がクリアカットなので見てみましょう。( → こちら )
カテーテル検査時の術野の皮膚消毒で、クロルヘキシジンとポビドンヨードで比較検討しているのですが、術後感染が少なかったのはクロルヘキシジンです。
カテーテル関連感染で6.3倍・カテーテル関連血流感染で4.7倍・カテーテルへの菌の付着は5.6倍、クロルヘキシジンに比べてポビドンヨードの方で高かったのです。


手術2017年に発表された論文では、子宮摘出時において同じようにクロルヘキシジンとポビドンヨードによる術野消毒を比較していますが、やはりクロルヘキシジンに軍配が上がっています。 ( → こちら
術後感染は、クロルヘキシジンで消毒した場合は1.5%であったのに対し、ポビドンヨードの場合は4.7%だったという報告です。

 本年6月には、消化器外科領域の手術の際に、ポビドンヨードと日本で開発された新しい消毒薬オラネキシジン ( オラネジン ) による術野消毒の比較検討した研究発表が慶應大学からありました。 ( → こちら )
オラネキシジン使用群で、ポビドンヨード使用群よりも術後感染発生率が半減いています。


このように、ポビドンヨードを術野の消毒に使った場合、他の消毒薬に対して全く優位性がないのです。
研究報告に基づいてより良い消毒薬を使っていけば、術後感染が減少し医療費抑制にも繋がっていくはずです。
日本の外科手術では当たり前のようにポビドンヨードが使われていますし、中心静脈栄養の穿刺キットにポビドンヨードが同梱されてたりしますが、そろそろ改めていく時期にさしかかっています。

個人的には、ポビドンヨードは将来的に医療現場から駆逐されていくものと思っています。

洗剤今日は、校医をしている小学校で職員の方々向けに手指消毒について簡単にお話させていただきました。
エタノールについては、先日ブログに書いた内容を簡単に。( → 手指消毒用アルコールについて )
また、石鹸などの界面活性剤がどのようにウイルスを破壊するか、トローチも実は界面活性剤であるということも解説しました。( → トローチはのどの痛みをとる ?? )
食器用洗剤の正しい使い方やシャンプーの上手な泡立て方についても触れてみました。

そして、意外な活用法として液体洗剤などが害虫退治に使えるという話も。
昆虫は気門という場所で呼吸をしていますが、ここが塞がって窒息してしまうのです。
また、昆虫に対してエタノールは麻酔効果があり、動きが鈍くなります。
ゴキブリなどすばしっこい動きの虫には、まずエタノールを噴霧し、その後液体洗剤を使うと効果的かと思います。

エタノールのカビ取り効果については「手指消毒用アルコールについて」でも簡単に書いていますので参照して下さい。 

手指消毒用アルコール ( エタノール ) について質問を受けることがあるので、簡単にまとめてみました。

♦♦♦♦♦
 
エタノールがどうやって細菌やウイルスに効果があるのか、はっきりしたことはわかっていないのですが、細胞膜の破壊や蛋白質の変性によるものとされています。
♢♢
手指消毒一番多い質問は、50%台の製品でも効果はあるのかということ。
そして、無水エタノールの希釈は精製水でなくてはダメなのかということです。

エタノールの濃度は40%くらいから殺菌・殺ウイルス作用を示しますが、ベストは70%とされています。
80%を超えてくるとパフォーマンスが低下するようです。
この理由として、水とエタノールが会合してエタノールの疎水面が最も大きくなるのが70%位のところだから、と推測されています。

実用的にも70%前後が乾き具合も程好く使いやすいです。
50%台だと速乾性に劣りますが、その分乾くまでしっかりゴシゴシすればいいと思います。
観察していると、多くの人が擦込み式の消毒剤を手に取った後、数回手をこすり合わせて終わっていますが、石鹸で洗う時のように丁寧に擦り込まないと意味がないですよ。
♢♢
高濃度のエタノールを希釈する場合は、精製水が推奨されていますが、水道水でも問題ありません。
消毒液の種類によっては水道水の中の不純物の影響を受けるものもあります。
そもそも手指消毒用のエタノールは、飲用に転用されることがないようにいろんなものが添加されています。( 需要に応えるべく様々なメーカーがエタノールを作っていますけど、手荒れを防ぐ保湿剤が含まれていないものもあるようですね。)
ちなみに、消毒用とは言え、エタノールには酒税相当分の価格が上乗せされているそうです。
しかし、5月1日に国税庁が、高濃度エタノール製品に該当する酒類のうち、一定の要件を満たしたものに酒税を課さないことが決定されています。

時間と共にエタノールは揮発して濃度が低下するので、やや高めの濃度に調整しておくのがいいと思います。
あるいは、50ml程度を利用し、残りは火の気がなく直射日光の当らない場所で保管しておいて下さい。
小分けにしてその都度調整すれば、濃度の低下も最小限で済みます。

♦♦♦♦♦

なお、エタノールはカビにも有効です。
梅雨時、私はエタノールを活用してカビ取りを行ないます。
面白いように簡単に除去できます。
一般的なカビ取り剤は、次亜塩素酸ナトリウムが使われていますが、刺激が強いので私の好みではありません。 

口内炎の治療に欠かせないものになっているのが、漢方薬の半夏瀉心湯 ( はんげしゃしんとう ) です。

口内炎もう10年以上も前のこと、自分自身が口内炎になった時に、試しに内服してみた半夏瀉心湯。
驚くことに翌日には痛みが気にならないレベルになり、4日目には口内炎が跡形もなく治ってしまいました。
それまで使っていたのは、口腔用のステロイド軟膏ですが、口の中はネバネバするし、痛みはちっとも引きません。
ステロイド軟膏を使っても使わなくても治るのに 1週間以上かかっていましたから、半夏瀉心湯の効果には本当にびっくりでした。

少なくとも、抗がん剤の副作用で口内炎が生じた際に半夏瀉心湯の含嗽 ( うがいのこと ) が有効であることは、これまでに多くの報告があります。
口内炎が起きる前から始めて、休薬期間も含嗽するという予防的な使い方もなされているようです。
比較的基礎研究も進んでいる漢方薬で、抗炎症作用や鎮痛作用、組織修復作用、抗菌作用などが示されています。

半夏瀉心湯は下痢などに対しても有効なので、内服すると便秘になってしまう場合があります。
そういう場合は、やはり含嗽がお勧め。
1日分をぬるま湯で溶かしておいて、痛みが出た時に適宜うがいをする方法も紹介されています。

口内炎に対しては、アズレン系のうがい薬を併用することもあります。
こちらも痛みを緩和し、組織修復作用があることがわかっています。
逆に使ってはいけないのがポピドンヨード ( イソジン ) 。
一応、口内炎の適用があるのですが、患部を刺激して痛みは増すだけですし、治りを遅くしている可能性があります。
本当に口内炎への効果を検証したデータがあるのでしょうか。

他にも黄連解毒湯茵ちん蒿湯など口内炎に効能のある漢方薬がありますし、レバミピドイルソグラジンという胃薬も口内炎に効くという報告があります。



( 2008年8月11日の「口内炎を治すには」の内容を改変して新しい記事にしました )

インフルエンザ当院周辺では、今週に入ってインフルエンザに罹る方が急激に増えています。
最高気温が30℃を超える日もあと数日続くようですが、十分に気をつけて下さい。

インフルエンザの予防接種は10月1日から開始しています。
接種をご希望の方は必ず予約をお願いいたします。

予防接種の料金についてのお知らせです。
10月から消費税が10%に上がりましたが、窓口でのお支払いは昨年と同じです。

昨年、一部のメーカーが販売しているバルサルタンという降圧薬に発がん性があるとされる「N-ニトロソジメチルアミン」という物質が混入していたため自主回収するという通知がありました。
それに続いて、これまた一部のメーカーが販売するアムバロ配合錠にも同じ物質が混入していることが判明して、自主回収となっています。( → こちら )

胃さて、今回は胃薬の中でH2ブロッカーと呼ばれる種類のものの一つ、「ラニチジン」にも全く同じ物質が混入していたことが欧米から報告があったようです。
この報告を受けて、厚労省はとりあえず、製造販売業者に新たな出荷を行わないように指示を出したようです。
今のところ、既に市場に出回っている分に関しては自主回収は行われないようです。

世界的に見るとラニチジンは世界で最も使われているH2ブロッカーです。
日本ではファモチジンが一番売れています。
私は、ファモチジンを処方することはたまにありますが、ラニチジンは処方しません。
よく処方するのはラフチジンとニザチジン。
この2者は、胃酸分泌を抑える以外に多用な働きを持っているためです。
そのことについては当ブログで「まだまだ使えるH2ブロッカー」というシリーズで説明していますので、是非読んでみてくださいね。

先日、鹿児島市内の小学校でインフルエンザによる学級閉鎖があったというニュースがありました。
実は、8月末から鹿児島市近隣の地区でインフルエンザが小流行しているという話が流れてきていました。
また、9月18日には大分県での流行期入りの発表がありました。
そんなこともあってでしょうか、インフルエンザワクチンについての問い合わせが増えています。
予防接種
当院では、例年10月1日からインフルエンザの予防接種を始めるようにしています。
しかし、現段階で卸業者からいつ手に入るのか、はっきりしていません。

予防接種の料金についてですが・・。
当院では2014年に消費税が5%から8%に上がった際も、2015年にインフルエンザワクチンが3価から4価になって納入価が約1.5倍上昇した際も、価格を据え置いてきました。
今年は10月から消費税が10%になるため、現在検討中です。


開始時期や料金は、決定次第、当ブログでお知らせしていく予定にしていますので、今しばらくお待ち下さい。

痛風フェブキソスタットという尿酸を下げる薬があります。
米国では今年2月、古くからある薬・アロプリノールよりも死亡リスクが高いとして「アロプリノールが無効または重篤な副作用が生じたために使用できない患者にのみ使用する」よう用途を制限しました。
更に7月17日、英国においても「心血管疾患既往例には他に選択肢がない場合を除き、用いない」よう勧告が出されました。
日本では、厚労省が7月9日に注意喚起を呼びかけたに留まっています。

これらの措置は、2018年秋にNew England Journal of Medicineで発表されたCARES試験の結果が基になっています。
しかし、一部からは試験の脱落例が多く、その扱い次第では評価が変わる可能性が高いという指摘もなされています。

一方で、本年3月にはEuropean Heart Journalに「高尿酸血症のある高齢患者で脳心腎血管関連イベントを減少させることができ、特に慢性腎臓病の発症や進展予防が期待できる」とする日本発の多施設共同ランダム化比較試験 ( FREED研究 ) が発表されています。( → こちら )


以前にも指摘しましたが、海外では痛風発作の再発予防目的で尿酸を下げる薬を使います。
これに対して、日本では尿酸が高いというだけの「無症候性高尿酸血症」に対しても薬が使われます。
この点については、当ブログでも以前解説をしました。( → 大丈夫 ! 何とかなります 尿酸値は下げられる )
なので、CARES試験とFREED研究では、対象となった患者さんの背景が違います。
メタボリックシンドロームと関連が深い痛風の既往のある方を扱った前者とそうでない後者。
それで結果に差があるのかも知れません。
欧米では、今のところ高尿酸血症治療薬に心臓や腎臓の疾患の予防効果は認められないという立場でいます。
無症候性高尿酸血症を積極的に治療している日本から、欧米を納得させるデータをもっともっと発信していかなくてはならないと思います。
根拠がなければ、私もあまり積極的にはなれません。

「高齢者診療におけるポリファーマシー」と題する論文が載っているのは、日本内科学会5月号。(日内会誌 108 : 971 ~ 977, 2019
具体的な事例を挙げ、その問題点を洗い出し、高齢者に複数処方されている内服薬の適正化の過程を示しています。


♦♦♦♦♦ 高齢者に処方されている薬の現実に論文ではどう対応したか ♦♦♦♦♦

論文に書かれているその症例の概略をみていきましょう。

入院症例 : 87歳、男性。
経過 : 施設入所中に発熱・低酸素血症あり、誤嚥性肺炎と診断され入院。
既往歴
: 高血圧症・脂質異常症・高尿酸血症・アルツハイマー型認知症・不眠症・骨粗鬆症・変形性膝関節症・前立腺肥大症。
脳梗塞や心筋梗塞の既往はなし、アルコール・喫煙習慣はなし。

そして、入院時の投薬内容です。
1日に12種類、計18錠も服用しています。

( 内科クリニックより )
 ① バルサルタン           80mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ② トリクロルメチアジド         1mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ③ ロスバスタチン         2.5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ④ 酸化マグネシウム       330mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑤ フェブキソスタット        10mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑥ エチゾラム           0.5mg     1回1錠 1日1回 就寝前
 ⑦ ドネペジル塩酸塩           5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑧ オメプラゾール          10mg     1回1錠 1日1回 朝食後

( 整形外科クリニックより ) 
 ⑨ ロキソプロフェンナトリウム    60mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑩ レバミピド          100mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑪ エルデカルシトール        0.5μg     1回1錠 1日1回 毎食後

( 泌尿器科クリニックより )
 ⑫ シロドシン             4mg      1回1錠 1日1回 朝食後

入院中に抗菌薬の点滴治療を行なったが、経口摂取が十分にできず、一時的に全ての内服薬を中止。
すると・・・、
・降圧薬
中止後も収縮期血圧は100~110mmHg前後を推移、そのまま中止
・利尿薬中止で頻尿も目立たなくなり、排尿障害治療薬も中止
・ふらつきの原因と考えられた抗不安薬
を中止しても不眠は起こらず
・適応疾患不明のPPI
も中止

その結果、以下の7種類、13錠に減らすことができたようです。

( 内科クリニックより )
 ③ ロスバスタチン         2.5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ④ 酸化マグネシウム       330mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑤ フェブキソスタット        10mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑦ ドネペジル塩酸塩           5mg     1回1錠 1日1回 朝食後

( 整形外科クリニックより ) 
 ⑨ ロキソプロフェンナトリウム    60mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑩ レバミピド          100mg     1回1錠 1日3回 毎食後
 ⑪ エルデカルシトール        0.5μg     1回1錠 1日1回 毎食後


♦♦♦♦♦ 私なら、こう考えてもっと減薬する ♦♦♦♦♦

薬を飲むこの症例では、入院をして血圧の推移や睡眠の状態を把握できたため、減薬に繋がりました。
しかし、私が思うにそれ以外にも減らせるものがあり、それは入院に関係なくできそうなものです。

具体的に考えてみましょう。


■ 高齢者へのスタチン投与について

まず、高コレステロール血症治療薬
について。
この方は、既往歴に脳梗塞や心筋梗塞がないので、この薬は一次予防(
※)に使っていると思われます。
スタチンと呼ばれるこの種類の薬は、75歳以上の方が服用しても
脳梗塞や心筋梗塞の予防効果がないとされています。
ただし、2型糖尿病のある75歳から84歳の高齢者での有用性の報告はあります。
今回の症例は、87歳で糖尿病もありませんから、もはや服用する意味はないと思われます。

また、
は下剤と併用すると血中濃度が約50%低下したという報告もありますので、この両者を併用する場合は、服用するタイミングをずらす工夫が必要となります。

( ※ 一次予防 : 疾患を引き起こさないための予防。対して疾患の再発を防ぐものを二次予防と呼ぶ。)


■ 高尿酸血症は治療すべきか

次に、高尿酸血症治療薬
について。
日本では、尿酸が高いと心臓や腎臓の疾患に繋がるという理由で、積極的に薬が使われる傾向があります。
しかし、欧米では高尿酸血症治療薬には心臓や腎臓の疾患の予防効果は認められないとして、痛風発作を起こした方の二次予防として使われるだけです。
いろいろ議論のあるところですが、この方については、尿酸を上げてしまう降圧薬
と利尿薬の2つの薬剤を中止できたわけですし、無理をして服用することはないでしょう。

従って、私だったら
も中止しちゃいます。


■ 酸化マグネシウム錠剤の工夫と注意点

次に、下剤
について。
これには500mgという剤形もありますので、500mgを1日2回・朝夕食後、とすれば1錠減らすことが可能です。
注意したいのは、PPI
を中止したのでの作用が増強し、軟便 ~ 下痢になってしまう可能性があること。
便の性状を見ながら投与量を加減する必要が出てきます。


■ 解熱鎮痛薬の功罪

整形外科から出ているロキソプロフェン
について。
87歳という高齢の方に対して、消化管や腎臓などに影響の大きい薬をフルドーズ使っても大丈夫なのか疑問を感じます。
私だったら怖くて処方できません。
鎮痛効果は劣るものの、副作用が少なく1日2回投与で済むセレコキシブへの変更はできないでしょうか。
アセトアミノフェンという手もありますが、錠数が多くなってしまうのは高齢者には負担だと考えます。
この症例の男性については、「何とかつたい歩きが可能」という記載がありますので、積極的に鎮痛薬を活用すべきなのかどうか検討が必要です。


■ 解熱鎮痛薬に併用される胃薬について

そして、胃薬
について。
レバミピドは、整形外科領域の医師が、鎮痛薬を出す際に併せて処方することの多い薬です。
でも、鎮痛薬で一番懸念される胃潰瘍などを含む胃粘膜障害の予防には全く歯が立ちません。
正直、無駄な処方です。
本当にこの副作用を予防したいのなら、中止した
PPIの方が望ましいのです。
適応疾患不明ということで切り捨てられた
の代わりに復活させたいところです。

日本の保険診療のおかしなところなのですが、鎮痛薬と併せてやテプレノンを処方することには何のお咎めもありません。
一方、副作用予防が期待できる
を併用すると、必ず処方理由を問われます。
本当はあってはならないことで、逆になぜ
を併用しないのか、を処方する意味は何なのかを問うようにして、処方の適正化を図っていくように促すのが本筋だと私は思うのですが。

なお、
には鎮痛薬による小腸粘膜障害を予防する効果があるとされています。
小腸粘膜障害を予防する効果は、イルソグラジンマレイン酸塩という胃薬にも認められています。
この薬ならば、1日1回の投与も可能で、
のように3回服用してもらう煩わしさはありません。
どうしても胃粘膜防御因子増強薬にこだわりたいのであれば、考慮してみたい薬です。



以上のことを踏まえて、私なりに更に減薬を進めると、次のようになります。
1日5種類、7錠まで減らすことになりました。
昼食後の服用がなくなるのもポイントです。
ただし、この高齢者の腎機能に異常を認めないという前提です。
腎機能の低下があれば、
の減量やの中止も考えないといけないからです。

( 内科クリニックより )
 ⑬ 酸化マグネシウム       500mg     1回1錠 1日2回 朝夕食後
 ⑦ ドネペジル塩酸塩           5mg     1回1錠 1日1回 朝食後
 ⑧ オメプラゾール          10mg     1回1錠 1日1回 朝食後
     (又はイルソグラジンマレイン酸塩 4mg     1回1錠 1日1回 朝食後)

( 整形外科クリニックより ) 
 ⑭ セレコキシブ                           100mg     1回1錠 1日2回 朝夕食後
 ⑪ エルデカルシトール        0.5μg     1回1錠 1日1回 毎食後


♦♦♦♦♦ 減薬についての私の考え ♦♦♦♦♦

長々と書きましたが、私は以前から減薬には積極的です。
遮二無二、薬を減らすことだけを目的にしてはいけません。
患者さんの状態と薬の効果・副作用・相互作用をよく吟味し、投薬の必要性の評価を折りに触れて行ない、適切な処方を心がけたいものです。


「筋の通った処方箋はシンプルで美しい」

これが私のモットーです。

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