野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して43年の野口内科です。
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⑤ テーマ

<< 風邪薬についての考察 第6回 >>


私たちは、病院で処方されるものの他に、市販薬として様々なトローチを入手可能です。
代表的なもの 3つを下の表にまとめてみました。
面白いことに、前回前々回
で取り上げた病院で処方されるSPトローチ ( 以下 SP ) ではわずか一種類だった有効成分が、市販のトローチになるといくつも含まれているのです。
しかも各社ばらばら、というか様々な工夫を凝らしています。

市販トローチ

いずれも殺菌作用のある塩酸セチルピリジニウム ( CPC ) が含まれているのは共通しています。
これはSPに含まれるデカリニウム塩化物と同じ界面活性剤で、デカリニウム塩化物とは異なり医師の処方箋を必要としない成分です。
従って市販薬に使うことが可能。
この成分以外に、咳や痰・鼻水などに有効な成分などを各社独自に配合して特色を出しています。

グリチルリチン酸は前回紹介したカンゾウ ( 甘草 ) に含まれる一成分です。
塩化リゾチームは効果が疑わしいととれ、販売を中止した製薬会社もありますね。
複数の成分が含まれていると便利である反面、必要ないケースも出てきます。
例えば、鼻水がないのにクロルフェニラミン入りのトローチを選択してしまうと、恩恵がないばかりか口の渇きや排尿障害などの副作用に苦しむだけという懸念もあります。

表には示していませんが、メーカーによってはキキョウエキスを配合する製品もあります。
キキョウは去痰や鎮咳作用のほかに、のどの痛みを取る作用が非常に期待される成分です。
キキョウとカンゾウを組み合わせた桔梗湯という漢方薬もありますが、これはお湯に溶かして少しずつうがいをするようにして服用する方法と、そのまま口に放り込んでゆっくり溶かしながら飲み込んでいく方法があります。
うがい薬のようにものど飴のようにも使えるわけですね。
市販薬では龍角散トローチや、医薬品用にSPを作っている会社の明治Gトローチ、トローチではありませんが浅田飴などにキキョウエキスが含まれています。

病院で処方されるあまり意味のないトローチよりも、市販薬の中にはのどの痛みをとる効果が期待できるものもあるわけです。
どうしてもトローチが欲しい場合は、病院で処方してもらうより市販薬を購入するのがいいと思います。
ただし、各社の成分の違いを十分に比較・検討した上で、症状に応じたものを選ぶ賢い目を持つ必要があります。



 ⇨ 第5回 「トローチの添加物の鎮痛作用を考えるけど‥
 ⇨ 第7回 「PL顆粒が前立腺肥大症や緑内障に使えない理由

<< 風邪薬についての考察 第5回 >>


病院で処方されるトローチの添加物の中に鎮痛効果が期待されるものがあります。
一つは「カンゾウエキス」。
市販の漢方薬に「甘草湯」という商品があります。
生薬を複数組み合わせるのが基本の漢方薬の中にあって甘草だけという異色の薬ですが、これは激しい咳やのどの痛み・腹痛などに即効性があるとされます。
医療用として存在しないため、私自身使用経験がないので
効果の程は知りませんが、甘草についてはステロイドホルモンが分解されるのを防いで抗炎症作用を高めていることが知られています。

TRP次に「l - メントール」の働きをみていきますが、それを理解するのに必要な「TRPチャンネル」についてごく簡単に触れておきます。
TRPは transient receptor potential の略でトリップと読むのが一般的です。
外部の環境温度を感知するセンサーで哺乳類では9種類が知られており、それぞれ担当する温度領域があるようです。
43度以上を感知する TRPV1 と17度以下を感知する TRPA1 が活性化すると温度を感じると同時に痛みというシグナルにもなります。
生物が至適温度で生きていく上でとても大切な仕組みです。
TRPチャンネルは温度だけでなく、植物由来の成分等でも活性化されることがわかっており、メントールはおおむね25度以下を感知するTRPM8 を活性化しますが、高濃度だと TRPA1 を抑え込んで痛みを感じにくくしてしまいます。
ちなみに、TRPV1 はトウガラシや酸などで、TRPA1 はワサビやシナモンなどでも活性化されます。

前回書いた通り、病院で処方されるトローチの主成分「デカリニウム塩化物」は痛みを緩和する作用を持ち合わせませんが、添加物で鎮痛…。
いや、ちょっと待ってください。
まずトローチには若干メントールの香りを感じとることができますが、舐めていても口の中がスースーする気配は全くありません。
恐らく香りづけ程度の含有量でしかないのでしょうか。
カンゾウについても、甘草湯では一包に1.425gものカンゾウエキスが含有されています。
トローチの大部分がカンゾウの成分なのであれば痛みに効果があるでしょうが、これも甘味料としてわずかに加えられているだけのようで、鎮痛効果が期待できるほどのものではありません。
実際、病院で処方されるトローチを舐めても、のどの痛みは改善しないのが何よりの証拠です。

さて、市販のトローチに目を向けてみると各社の商品には様々な工夫がなされています。
次回はそれをみていきたいと思います。


 ⇨ 第4回 「トローチはのどの痛みをとる ??
 ⇨ 第6回 「医療用より多彩な市販のトローチ」 

<< 風邪薬についての考察 第4回 >>


トローチ
風邪をひいて医療機関を受診された際、のどの痛みに対して医師がトローチを処方したり、患者の側から所望されたりする場面はよくあります。
でも、トローチを使ってのどの痛みが劇的にとれた経験ありますか ?
そんなことがあったらおかしい、というのが今回の話です。


病院で処方されるトローチ( SPトローチ ) の中に含まれる薬効成分はたったの一種類、それは「デカリニウム塩化物」。
この成分の働きは、殺菌消毒であって消炎鎮痛作用は持ち合わせていません。
効能書きにも「咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防」とあり、痛みをとるなどとは一言も書かれていないのです。
市販のトローチで「殺菌することでのどの炎症を抑え、痛みを和らげる」といった文言で宣伝しているものもあるため誤解が生じているのでしょうが、この文章をよく読んでみて下さい。
菌がいなくなってのどの炎症が落ち着いたら痛みもなくなるでしょう、ということです。
痛みに対する直接作用はないと理解していただけるのではないでしょうか。

デカリニウム塩化物は界面活性剤です。
界面活性剤が細胞膜に吸着すると、流動性が大きくなり細胞膜が壊れたり、細胞膜表面の酵素を不活化したりすることで殺菌作用を示すと考えられていますが、詳しいメカニズムは解っていません。
なお、細菌や真菌には作用しますが、結核菌やウイルスには無効です。
成人の場合、風邪の原因のほとんどはウイルスですし、薬を使って口腔内の常在細菌にダメージを与えるとかえって感染を促してしまう可能性があります。

また、炎症を起こして膿や分泌物などのタンパクが増えている状況にあると、
デカリニウム塩化物の効果が極端に落ちてしまいます。

そう考えていくと、SPトローチを一体どういう場面で使ったらいいのかさっぱりわかりません。
なので、私は全く処方しなくなりました。
なお、界面活性剤といえば石鹸が代表的ですので、私はトローチを「舐める石鹸」と呼んでいます。


ただし、添加物に注目してみると痛みに効果がありそうなものが含まれています。
それは「カンゾウエキス」と「l - メントール」です。
次回はこの二つの添加物について考察してみましょう。( 以下の記事も併せてお読み下さい )

 ⇨ 第3回 「アズレン系うがい薬の有用性
 
⇨ 第5回 「トローチの添加物の鎮痛作用を考えるけど‥」 
 ⇨ 第6回 「医療用より多彩な市販のトローチ」 


<< 風邪薬についての考察 第3回 >>


アズレン医療機関で処方されるうがい薬にはヨード系の他にアズレンスルホン酸塩 ( アズノールうがい液 等 ) のものがあります。
その青い色を元に名付けられたアズレンは、中世時代からカモミールを蒸留して活用されていたようですが、抗炎症作用やヒスタミン遊離抑制作用、組織修復促進作用などがあると判明しています。
アズレンは、うがい薬の他に胃薬・点眼薬・外用剤などもあり今日の臨床の場で幅広く活用されており、中でもエグアレンナトリウム ( アズロキサ ) というアズレン誘導体は、胃・十二指腸潰瘍面に付着し組織修復に優れた薬剤です。
しかしH2ブロッカーと併用しなくてはならないという制約があって全く普及していません。
何とかなりませんかね。

ヨード系うがい薬もアズレン系うがい薬も口内炎に対する効能が謳われています。
よく口内炎ができる私はかつてヨード系のうがい薬を使っていましたが、傷口にかなり滲みて痛いのなんの。
治るのであればと我慢して使い続けていましたが、組織傷害性があるとわかってからはピッタリ止めました。
実際、なかなか治癒しませんし。
それに替わってアズレン系のうがい薬を使い始めたところ、うがいして数分で痛みがある程度和らぎますし、治りも早いではありませんか。
非常に驚きました。
口内炎に限らず口腔内の痛みを緩和する働きもありますが、この作用にはもしかすると添加物の l -メントールも一役買っているかも知れません。

アズレンスルホン酸塩によるうがいで、シェーグレン症候群の患者さんの口腔乾燥症状が改善すると2011年に報告されています。
乾燥感・疼痛感・飲水切望感などの自覚症状が改善するばかりでなく、唾液分泌量も有意に増加したというものです。

以上のようなことを踏まえ、風邪をひいてのどの痛みがある時にうがい薬を使いたいならアズレン系、と患者さんにも勧めています。
なお、抗菌作用はないので風邪の予防のために使用するのはどうかと思いますが、細菌やウイルスに対する抵抗力を高めているという説もあるようです。
剤形はヨード系と同じ液体タイプの他に、溶かして使用する顆粒や上唇と歯茎の間にはさんで溶かして使う挿入用剤もあります。
顆粒は常温の水にはやや溶けにくく、味がいまいちの印象。
挿入用剤は飲んだり咬んだりしないで使う点に注意が必要で、口の中が青くなるのはご愛嬌。

前回と今回のまとめですが、風邪の予防には水道水かお茶でのうがい。
風邪をひいてしまったらアズレン系のうがい薬を使い、どの段階においてもヨード系のうがい薬は使わないようにしましょう

( 2020.2.5 加筆 )

 ⇨ 第2回 「無意味なヨード系うがい薬」  
 ⇨ 第4回「トローチはのどの痛みをとる ??」 
 ⇨ 関連 アズレン系のうがい薬も活躍します → 「口内炎には半夏瀉心湯」 


<< 風邪薬についての考察 第2回 >>


うがい2手洗いとうがいは風邪予防の基本。
そのうがいに薬剤を使われる方も多いと思います。
そしてその代名詞的な存在が、ヨード系のうがい薬であるのは誰もが知るところでしょう。

このヨード系うがい薬に風邪の予防効果が全くない、というのは 5年前の当ブログにて解説していますのでご覧下さい。( → うがい )
改めて要点を述べますと、

・水道水だけのうがいで風邪の罹患が約3割低下
・ヨード系うがい薬を使うとうがいをしないのと罹患率に差がない

ポビドンヨードは優れた殺菌能力を示しますが、一方で組織障害性も有します。
一昔前までは褥瘡など創傷処置に盛んに使われていましたが、使わない方がきれいに早く治る事実は今や常識。( → 傷は消毒しない )
風邪の予防にもならないし、風邪をひいて炎症を起こした咽頭粘膜にはダメージを与えるわけで、どんな段階でもヨード系うがい薬の出番はないと私は考えています。
ちなみに、2011年には緑茶でのうがいに優れた風邪予防効果があると報告されています。
水だけで3割、生理食塩水で5割に対し、緑茶では7割もの風邪予防効果があるようです。( Noda T et al. J Epidemiol. 2012;22(1):45-9. Epub 2011 Nov 26 )

また、せっせとヨード系うがい薬を使い続けている人の中には甲状腺機能低下症を発症するケースもあります。
ヨード液の一部を少しずつ嚥下し、ヨード過剰の状態になるわけですね。
粘膜からもヨードが吸収されるらしいです。
甲状腺ホルモンの原料であるヨードは少なくても機能低下を招きますが、過剰であっても機能低下になります。
この理由はよく解っていませんが、Wolff-Chaikoff effect という名前で知られている現象です。

当院ではヨード系うがい薬は既に採用していませんし、市販のヨード系うがい薬を使っている人には今回のブログに書いたことを説明した上で、使用を控えるように勧めています。

 ⇨ 第3回 「アズレン系うがい薬の有用性」 

<< 風邪薬についての考察 第1回 >>


咳勤務医を辞めて、診療所で患者さんを診るようになって10年が経ちます。
外来をやっていて大きく変わったのは、いわゆる「風邪」を診る機会が圧倒的に多くなったこと。

本来は、鼻・のど・咳の三症状が揃ったものを「風邪」と言います。
しかし、風邪をひいたと来院される方の症状は実に多彩で、それに応じた処方が必要になります。
しかし、ここ10年の経験から、医療機関での処方薬や市販薬などの副作用を思い知ったり有効性に疑問を感じたりすることも出てきました。

これからの季節、いわゆる風邪に罹る人が確実に増えてきます。
そして、ほとんどの方が風邪薬にお世話になったことがあると思います。
インターネットを介して気軽に風邪薬が手に入る時代になってきましたが、風邪に関してごくごく普通に使われている薬についての知識を再整理して、誤った使い方をしないための参考になればと思い、このシリーズを始めることとしました。 

<< ジェネリック薬品を考える 第6回 >>


名称未設定-1数回にわたり、我々の使う医薬品の相違について考えてきました。
先発品同士 ( 第2回 )、先発品と後発品 ( 第4回 ) 、後発品同士 ( 第5回 ) ・・・主成分は同じでも全く同じものを作るのは難しいと考えざるを得ません。

また梱包シートの材質が悪く保存性が悪い錠剤とか、同じ量なのに早くなくなってしまう点眼薬 ( 1滴の量に差がある ) とか成分以外のところに問題のあるジェネリック薬品が存在すると聞きます。

私が最も問題にしたいのは、生物学的同等性試験と溶出試験だけで先発品と同等であるというお墨付きを与え、国策としてジェネリック薬品の使用促進を行なおうとする厚労省の姿勢です。
また、院外処方箋の場合、先発品からジェネリック医薬品への変更やメーカーの選択に薬剤師の権限が大きい仕組みも無視できません。

これまで見てきたように、差異があることを前提としてジェネリック薬品を処方したり内服したりする必要があると考えます。
言いたいことはたくさんありますが、米国神経学会がかつて発表したコメントをこのシリーズの締めくくりの言葉とします。
( ただし、私は少ない情報をしっかり把握してジェネリック薬品を積極的に処方していますので、誤解のないように )
「抗てんかん薬のジェネリックへの切替えは、治療する医師と患者の双方がきちんとした知識を備え同意をしなければやってはならない」


 

<< ジェネリック薬品を考える 第5回 >>


我々がよく処方する便秘薬の一つに「酸化マグネシウム」というものがあります。
シリーズ最後はこの酸化マグネシウムの後発品同士を比較してみます。

大腸は食べ物の残りかすから水分を吸収する役割があり、 上行結腸あたりではまだどろどろの内容物も直腸へと進む間に水分含有量が少なくなり便が形作られていきます。
酸化マグネシウムは、大腸が吸い上げようとする水分を抱え込んで離さないようにするので、残渣中の水分が保持され便が硬くならないようにしてくれます。
その結果、踏ん張らなくても排便できるようになるわけです。
これを我々は緩下作用と呼んでいます。

以前は
服用しづらい粉末しかなかった酸化マグネシウムですが、後発品メーカーが工夫して錠剤を発売しています。
代表的なのが「マグミット」と「マグラックス」です。
なぜ錠剤がそれまで無かったかというと、酸化マグネシウムは胃液中の塩酸と反応して塩化マグネシウムに変化する必要があるからです。
( MgO + 2HCl → MgCl2 + H2O )
詳しくは当ブログ「ニガリダイエットの正体」 に書いてありますのでそちらをご覧下さい。

せっかく登場した酸化マグネシウムの錠剤なのですが、両者には大きな違いがあります。
そのことを示した見事な論文がありますのでそちらをご覧下さい。( → 酸中和作用による酸化マグネシウム錠の品質評価
論文中から引用させてもらった写真を見ていただきたいと思います。マグミット
水に溶かした後の粒子の様子です。
「マグミット」( MM ) は細かい粒子になっていますが「マグラックス」( ML ) は粒子径が大きいまま。
塩酸を含む試験液と反応させると速やかにpHが変化するのは前者。
塩化マグネシウムが生成されないと
緩下作用が発揮できないわけですから、「マグミット」を「マグラックス」に変えた途端に便が出づらくなるとか、あるいはその逆のパターンも起こり得るということになります。

知ってか知らずか「マグラックス」のメーカーは後に細粒剤を出してきました。
錠剤の欠点を補いつつ、飲みやすさを追求して新たな剤形を作ってきたメーカーの姿勢には感服いたします。

<< ジェネリック薬品を考える 第4回 >>


喘息発作は明け方に起こることが多く、かつては内服薬や吸入薬を寝る前に使っても薬の効果が明け方まで持続せず、コントロールに苦労する例がありました。
そんな中、1998年に登場したのが「ホクナリンテープ」という貼付剤。
とても工夫がなされていて、気管支拡張作用のある成分が、皮膚に貼ってから4時間ほどしてから吸収され始め、11~13時間ほどで血中濃度がピークに達します。
夜貼ると明け方によく効いてくれるわけです。

ツロブテロール・沢井ところが、各社から数多く出ている後発品「ツロブテロールテープ」の血中濃度の推移は異なります。
それが大きく影響していると思いますが、「ホクナリンテープ」を後発品に変えた途端、喘息発作が増悪したというケースを臨床医が経験することは少なくありません。

今回提示した3社 ( 沢井製薬・ファイザー製薬・久光製薬 ) のグラフをご覧下さい。
多くは1時間ほどして血中濃度が上がり始め、ピークに到達するのもその分早くなっていますし、その後の濃度も高く維持できないのです。 
これは、先発品の徐放技術が特許を持っているためで、後発品メーカーなりに工夫はしているのでしょうが、同じような製品が作れないのです。
ファイザーのものはかなり先発品に近いですが、2時間値が省略されているのはなぜでしょうか。
それにマルホのホクナリンテープの添付文書と比較するとファイザーのグラフの標準製剤の濃度の数値は明らかに低いですね。
( 久光製薬のグラフは2mg製剤ではなく0.5mg製剤の比較ですのでご注意下さい。)

ツロブテロール・ファイザー問題は、これだけ血中濃度の推移が大きく異なる後発品に対し、厚生労働省が先発品と同等であるというお墨付きを与えていることです。
最大血中濃度と血中濃度曲線下面積に大差がなければOKなのです。
米国だと先発品との二重盲検比較試験を行って安全性・有効性の同等性を示さなければ認可されないのですが、治験を行う必要のない日本はこのあたりがとてもいい加減と言えます。

インスリン製剤は、血中濃度の立ち上がりや作用持続時間によって複数に分類されていて、我々は使い分けをしているのですが、それと同様、私は「ホクナリンテープ」と「ツロブテロールテープ」は別物として使い分けています。
ツロブテロール・久光 先発品でコントロールできている人は基本的に後発品に変更しません。
後発品の「ツロブテロールテープ」も各社バラバラの血中動態ですので、その特性を把握した上で、初めて処方する場合には、入浴や就寝時間と発作のよく起きる時間を聴取してその患者さんに合うと思われるものを選択しています。
ただ、血中濃度ばかり気にしていてもダメで、中には剥がれやすい製品もあり注意を要します。

ジェネリック医薬品が先発品と必ずしも同等と言いきれないし、ジェネリック間でもかなり異なるのだと理解して頂けたのではないでしょうか。
特にこの「ホクナリンテープ」「ツロブテロール」は、調剤薬局において薬剤師の判断で勝手に変えられてしまうと本当に困ってしまう薬剤の一つです。 

<< ジェネリック薬品を考える 第3回 >>


前回はノルバスクとアムロジンが微妙に違う ( のではないか ) という話をしましたが、それに関連してちょっと補足です。

日本には、一つの薬剤を複数の企業が異なる名称で売るという独特の商習慣があります。
これを「一物二名称」と呼んでいます。
主なものを表にしてみましたが、その多さに改めてびっくりしました。 
ノルバスクとアムロジンのように全く別工場で作られているものもあれば、同じ工場で製造して刻印とパッケージを別にしているだけというものもあります。

薬の一物二名称併売することによって販路が拡大するとか、自社の商品ラインナップが充実するとか、売る側にはメリットがあるかも知れません。
しかし、処方する我々や薬局、実際に服用する患者さんにはほとんど意味がありません。
これらの名称をしっかり頭にたたき込んで、同じ薬剤であることを認識しておかなければならない我々も相当苦労します。

この一物二名称について厚労省は、「別会社が別に承認をとって販売するもので保険衛生上の問題があるとは考えにくい。メーカーが競うことで情報提供が充実することや、競争原理が働き市場実勢価格が下がれば薬剤費の適正化にも繋がるなどの利点がある」といった内容の見解を示し、日本独特の習わしを改めさせようという意志が全く見られないのです。
厚労省が態度を改めないのなら、製薬会社側が申請時に異なる名称を用いないよう配慮してもらうしかありません。
実際、同一名称で併売している薬品 (エディロール・リピートール等) もいくらでもあるのですから。

一方、いわゆるジェネリック医薬品に関してですが、最近は独自の商品名が認められずに一般名を用いる方向にあります。
ここ2、3年で発売されたものは当然のこと、古くから発売されオリジナルの名称も定着していたジェネリック医薬品も、無味乾燥な一般名への変換が徐々に促されています。
これは厚労省の指導によるものなのですが、先発品に限って独自の商品名が付けられる特権があるわけですね。

厄介な一物二名称ですが、ちょっとした使い道もあります。
当院では「ノルバスク」は5mg、「アムロジン」は2.5mgの剤形を採用することで、処方時の用量ミスを回避するという形をとっているのです。
この点は、院内処方の強みですね。


( 追記 2018.5.22 ) ジェネリック医薬品を採用した現在では、5mgも2.5mgも「アムロジピン」になってしまいました。 

<< ジェネリック薬品を考える 第2回 >>


ノルバスクとアムロジンまず手始めに先発品同士を比較します。

取り上げるのは「ノルバスク」と「アムロジン」です。
最もよく使われているカルシウム拮抗剤と呼ばれるタイプの降圧剤で、ご存知の方も多いでしょう。
いずれもアムロジピンベシル酸塩を主成分としたもので、前者はファイザー製薬が、後者は大日本住友製薬が製造販売しています。
大日本住友がファイザーから製造に絡む一切のライセンス供与を受けているはずなので添加物まで含めて全く同一。
ですから「アムロジン」は「ノルバスク」との同等性を示す試験を実施しておらず、両者の添付資料のデータは全く同じになっています。
この点がジェネリック医薬品と大きく異なるところです。
ちなみに右側の写真、上が「ノルバスク 5mg」下が「アムロジン 5mg」です。

ところが、です。
( ここから先に書く内容については、あくまで伝聞で確たる証拠はありませんが、信頼性の高い情報ソースから得たものであることをお断りしておきます。)
実は、最高血中濃度到達時間 ( Tmax ) が両者間で1時間ほどずれていて、その違いを利用して「ノルバスク」と「アムロジン」を使い分けている医師もいるというのです。

この情報が本当だとしたら、なぜこのようなことが起こるのか。
ここからは勝手な推測になります。
「ノルバスク」と「アムロジン」は別々の工場で作られているのですが、そのせいなのか「アムロジン」の錠剤の方が硬いという五感で分かる相違があります。
添加物や製造のノウハウまで全く同じように作っているはずなのに、成分の調達先が違うとか、製造ラインでの温度・湿度が違うとか微妙に異なるのでしょうね。
複数の人が、同じ食材・同じ調理器具を使ってレシピ通りに料理しても全く同じものができない。
そんな例えをしてもいいものなのかわかりませんが、先発品といえども微妙な違いが出てくるようですね。

なお、水無しで飲める口腔内溶崩錠として「ノルバスクOD」「アムロジンOD」がありますが、こちらは同じ工場で作られ、刻印とパッケージが異なるだけ。
大日本住友製薬が独自の技術で開発した「アムロジンOD」をファイザー製薬側が「ノルバスクOD」のブランドで売らせてくれ、と言ってきたようです。
複雑です。

なお、下の図はノルバスクの添付文書にあるグラフ。
アムロジンでも全く同じものが使われているのですが、 通常の錠剤と口腔内溶崩錠の比較しか掲載されていません。


ノルバスク

<< ジェネリック薬品を考える 第1回 >>


薬ジェネリック薬品という言葉、盛んにテレビなどでも流れていますので、皆さんお馴染みになってきたと思います。

改めて説明するまでもないでしょうが、先発品と比べて薬価が低く患者さんの自己負担や国民医療費を抑えることができるため、普及が促されています。
先日は厚生労働省が2017年度末にはシェアを60%以上に引き上げる目標を掲げました。
反面、医療関係者にはその品質に疑問を抱く人が多くて普及を阻んでいるとも言われています。
厚生労働省が治療学的に先発品と同等であるとお墨付きを与えていても、です。
実際のところどうなのでしょうか。
安いことは諸手を挙げて歓迎すべきことなのか、安いなりの品質なのか。

このシリーズでは 先発品同士・先発品とジェネリック薬品・ジェネリック薬品同士 の3つのパターンで具体的な医薬品を提示して検討してみたいと思います。
ほんの一部のケースでの考察なので、それを一般論にしようとは思いませんのであしからず。

  ○○ 学会レポート2013 その3 ○○


腹痛3月21日午後に参加したワークショップのお題は「過敏性腸症候群 ( IBS ) に対する新規治療法」。
IBSを積極的に研究対象としている施設がまだまだ少ないので、演題数は多くなかったものの、それぞれの発表はとても聞き応えがありました。

中でも興味を引いたのは、小腸における胆汁酸の吸収障害の関与。
朝食後に症状が強い難治性の IBS の中に、胆汁酸の吸収障害が原因となっている下痢が存在するケースがあるそうです。
この場合、コレステロールの治療薬でもあるコレスチミドの投与で速やかに症状が改善するという話でした。
コレスチミドには腸の中の胆汁酸と結合するという働きがあるのです。
検査法が特殊なので一般の病院での診断は難しいでしょうが、 現在 IBS とみなされている病態の中には独立した疾患が存在する可能性があるわけですね。


あと、直接聞けなかったのですが、糖尿病治療薬であるメトホルミンによって胃癌細胞の増殖が抑制されるという一般演題が2つありました。
メトホルミンは消化器系では大腸・肝・膵などの癌抑制効果が示唆されています。 
私が以前、研究対象の一部にしていた HER2 ( Human Epidermal growth factor Receptor type2 ) という物質の抑制作用があるようです。
HER2の働きが抑制されるのであれば、他の癌への作用も期待できると思います。


地元開催ではありましたが、仕事の都合で全ての日程に顔を出すことができませんでした。
残りの2日も参加したかったな、と思わせる充実した学会ではなかったでしょうか。
また鹿児島で開催される日が来ることを期待します。 

  ○○ 学会レポート2013 その2 ○○


除菌今回の消化器病学会、参加できたのは初日だけでしたが、貴重な情報を多く得ることができました。

午前中に聞いたのは「HP除菌後の病態と対応」。
HP とはヘリコバクター・ピロリのことです。
日本でピロリ菌除菌が保険適用されたのが2000年11月のことでしたから、12年余の歴史がありますが、除菌後の消化管の病態変化について長期にわたるデータがかなり蓄積されてきました。

除菌すれば胃癌はかなり防げるのですが、ゼロとはならないことが知られています。
除菌が高齢で行われた場合、萎縮が強い場合、胃潰瘍がある場合、腸上皮化生がある場合などでリスクが高いことが報告されていました。
また、除菌後10年を越えて胃癌を生じたケースもあることなどから、除菌後5-8年までは毎年、その後は隔年で内視鏡検査をすべきではという提案もありました。
除菌後の適切な胃の検診のタイミングについて、やがて意見が集約されることでしょう。

また、除菌による酸分泌上昇により懸念される逆流性食道炎についての演題もありました。
内容については省略しますが、提示された内視鏡写真について一言。
学会で発表される胃の内部の写真は胃液などの付着のないきれいな物が多いのに、逆流性食道炎の診断に重要な食道胃接合部の写真はお粗末な限り。
あれじゃ正確な診断はできないでしょう、と場末の内視鏡医が嘆いてしまうようではだめです。

参考 → 胃食道逆流症の検査には経鼻内視鏡 

  ○○ 学会レポート2013 その1 ○○


学会02第99回日本消化器病学会総会が、昨日から23日まで鹿児島で開催されています。
折角の地元開催ですが、仕事の都合で参加できるのが21日だけなのがちょっと残念です。
1日だけではありましたが、収穫が多かったのでまた改めてレポートしたいと思います。

会場の一つ、城山観光ホテルには溢れんばかりの参加者。
ホテルまでの坂を歩いている人が結構いたのにはびっくりしました。
ホテルの庭では桜島をバックに写真を撮る若い医師達がいてほほえましかったです。

写真は会場で配られるバッグにあしらわれたイラスト。
今回会長を務めた地元大学の教授と同郷の黒鉄ヒロシ氏の手によるものだそうです。

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