野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して43年の野口内科です。
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⑤ テーマ

  ○○ 学会レポート2012 その5 ○○


キャンディ経鼻による検査が普及して、内視鏡検査は苦しいものという印象がだいぶ変わってきました。
しかしまだまだ改善の余地があるのも確かで、多くの内視鏡医が様々な工夫を凝らしています。
「患者にやさしい上部消化管内視鏡検査の工夫」というワークショップでは諸先生方のアイデアが提案され、とても参考になりました。

自分もたまに経鼻内視鏡検査を受けるのですが、一番つらいのが前処置の鼻から咽頭にかけての麻酔でむせてしまうことです。
当院では採用しているのは最も丁寧な前処置とされるスティック2回法で、リドカインのビスカスを用いています。
ところがビスカスではむせることが多いのでスプレータイプのものが良いという報告がありました。
また、リドカインに砂糖を混ぜて飴を作り舐めてもらうことで咽頭がまんべんなく麻酔できるし、苦味がないので患者さんにも好評だという発表もあり、かなり注目を集めていました。
ひそかにリドカイン飴ブームが起こっているのではないでしょうか。
いくつかを参考にして、当院でも前処置の改良を行ないたいと考えています。

あと興味を引いたのは、内視鏡医によって胃への送気の仕方が全く異なるというデータ。
患者さんにとって楽でしかも見落としのない検査法が、いろんな指標で示されて標準化する可能性も将来ありうるのではないかと思いました。

今回の学会、最終日は仕事の都合で出席が適いませんでしたが、有意義な3日間でした。
来年春の日本消化器病学会は地元鹿児島で開催されますので、是非参加しなくては。

  ○○ 学会レポート2012 その4 ○○


満員御礼「抗血栓薬の内視鏡処置前後の取り扱いについて」
ランチョンセミナーで立ち見が出たのには少々驚きました。
軽んじることのできないテーマなので内視鏡医がこぞって集まるであろうことは予想できたはずなのに、用意された会場がそれに見合っていなかったのです。 

抗凝固薬・抗血小板薬の必要性や休薬による影響などについて循環器医と脳血管内科医の医師から直接話を聞ける機会は案外ないものです。
疾患の再発防止のためにこれらの薬剤がいかに大切であるのか、よく理解できてとても有意義なセミナーでした。
異なる領域の医師が協調して治療をめぐる問題点の議論を深めていくのはとても大切なことだと思います。

最近、この分野には新薬がいくつか登場してきましたが、中には消化管出血のリスクが従来薬よりも高いものがあります。
使い勝手がよく再発防止に優れたものが生き残っていくのでしょうが、それにしても薬価があまりにも高過ぎませんか ?
 

  ○○ 学会レポート2012 その3 ○○


胃もたれ昨年の福岡での学会で、過敏性腸症候群に関するパネルディスカッションの内容に少しがっかりしたのですが、今回は消化管全体に幅を広げた「機能性消化管障害 ( FGID ) の病態と治療」というシンポジウムがあり、その多彩な内容に安堵しましたし、勉強にもなりました。
いくつか紹介しておきます。

機能性胃腸症の発症と幼少時期虐待歴との関連性というおもしろい切り口で検討した報告。
特に女性で関連が大きいようです。

GLP-1 というインスリン分泌を促す物質の濃度が FGID の患者では高くなっており、特に胃痛・胃もたれの症状と高い関連性があるという報告。
糖尿病治療に GLP-1 の注射薬がありますが、消化器系の副作用が多いことが知られています。
食欲が低下し体重減少も見込まれることから、それを期待してこの薬剤を選択する医師も多いのですが、消化器への影響はもう少し検討していく必要がありそうです。

胃から食欲を促すグレリンというホルモンが出ますが、胃食道逆流症のラットではグレリンに対する胃排出能の反応が低下しているという報告。
グレリン不応症とも言うべき病態があるというのは興味あるところ。
またこれが六君子湯で改善するという点も注目です。 

この他にも個人的に関心の高いものがありましたが、専門的で難しいと思いますで割愛します。

これまで胃腸の不調を「気のせい」だとか言われ続けて悩んでいた方も、研究が進み病態が解明されつつあるこの領域に期待して下さいね。

  ○○ 学会レポート2012 その2 ○○


CTC学会初日には「大腸内視鏡および CT-colonography ( CTC ) による大腸がん検診の今後の展開」「胃がん検診の理想的な住み分け : 新しい検診方式を目指して」という消化管の検診についてのプログラムが続きました。

対策型集団検診は集団全体の死亡率を減少させることを目的に公共的予防対策として行われます。
そのため有効性が確立された方法で利益が不利益を上回ることを条件に行うことが求められます。
胃がんでは胃X線検査のみ、大腸がんでは便潜血検査のみが推奨される手段になっており、意外なことに内視鏡検査などは対策型検診には向かないとされているのです。
ただし、人間ドックなどの任意型の検診では大腸内視鏡は推奨されています。
しかし内視鏡隆盛のご時世で
胃X線検査の写真の判読医が減ってきていますし、かといって内視鏡検査に死亡率減少の確たる証拠が不十分であったり、実際に検診に導入するとなるとマンパワーの問題があったりと難しい問題を孕んでいます。

新しく編み出される検査法が検診に適するものかどうかを検討する発表を聴いたわけなんですが、日常の臨床にはある程度有用であっても検診に使うにはまだまだという印象です。
CTCに関するいくつかの発表では平坦型の病変を見逃しやすいことを白状していましたし、採血で胃がんの有無を見極めようという ABC分類 ( ペプシノーゲン I/II比とピロリ菌抗体の有無を組み合わせる方法 ) でも少なからず見落としがあるようです。

大腸においては新しい検査法をどう活用していくのか、胃においてはピロリ菌感染率が減る中で時代にマッチした検診法がどうあるべきか、まだまだ描ききれていないのが現状のようです。
また、異常がなかった場合の適切な検査間隔はどうあるべきかという問題も掘り下げて実用的なものにしていく必要がありますね。 

  ○○ 学会レポート2012 その1 ○○


ddw消化器病に関連した学会を効率良くまとめてやっちゃいましょう、と米国の Digestive Disease Week ( DDW ) を参考に DDW japan が始まったのは1993年のこと。
のちに JDDW と変え、参加する学会が多少入れ替りながらも20回目を迎えたのが今年でした。

参加する人数が半端ではないため、開催できる都市が限られてしまいます。
これまで神戸開催が最も多く、今回が7回目でした。
他は横浜が4回、京都・福岡が各2回、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島が各1回です。
私は神戸に住んでいたこともあり、神戸開催分については皆勤です。

1回目の頃を思い起こすと、会費は事前登録で25000円、当日30000円だったと思います。
しかし徐々に下がってきて今は15000円。
最初は運営がどうなるか不透明な部分もあったのでしょうが、随分ぼったくられていた気がします。

演題発表には事前にスライドを作成して持ち込むスタイルで、忘れると大変なので共同演者にもう一組持っておいてもらうということをしてましたが、今はパワーポイントの時代であるのも大きな変化ですね。

最初の頃は、あまりの人数の多さに昼食を摂るのが大変でしたが、現在はランチョンセミナーなるものがあってお弁当を食べながら講演を聞くスタイルが定着しました。
これも最初は早い者勝ちだったのですが、改善されてチケット制になり、並ぶ苦労もほとんどなくなりました。

そんなことを思い起こしながら参加した今回の学会、興味を持った発表をいくつか紹介していこうと思います。

学会01神戸で開催されている日本消化器関連学会週間 ( JDDW ) に10日より参加しています。
今年で JDDW は20回目を迎える節目の年。
手探りで始まった第1回もやはり神戸で開かれたことを昨日のことのように思い出します。
学会費用が当時より1万円安くなったのはうれしいことです。

さて、20回を記念して予定されていた山中伸弥教授の講演はさすがにキャンセルとなりちょっと残念でした。

今回はパソコンを持参せずスマホからの投稿。
入力が大変なので鹿児島に帰ってから学会のレポートを詳しく書くつもりです。 

<< 出血をきたす消化器疾患 第9回 >>



憩室下血をきたす疾患の中で大腸内視鏡医を最も悩ますのが大腸憩室からの出血ではないでしょうか。
大腸憩室症については当ブログ「宿便について考える」の第四回『大腸憩室症について』で詳しく取り上げていますので、そちらをご参照ください。
下血を来す疾患で多いのは痔の次に虚血性大腸炎である、と前回書きましたが、低用量アスピリン ( LDA ) やワルファリンを内服している人に限るとトップに躍り出るのがこの大腸憩室からの出血になります。

つい最近「学会レポート2011 その1」でも書いたばかりですが、心疾患や脳血管疾患に絡んで LDA やワーファリンといった血を固まらせないようにする薬を内服する方が格段に増えています。
これらの疾患自体が加齢とともに増えるものですが、大腸憩室も高齢者ほど多くなる傾向がありますし発生頻度も昔に比べると増してきているようです。
憩室の部分は血管の通り道であることはわかっていますが、なぜ憩室部分で出血を来しやすいのかはよくわかっていません。

血をサラサラにする薬を内服しているために血が止まりにくくなっているわけですが、大腸憩室からの出血では内視鏡的に止血を困難にしている理由があります。
憩室はほとんどの場合複数あり、窪んでいる憩室にはどこもかしこも血が溜まっていて、一体どの憩室から出血しているのか確認に手間取ることが一つ。
そして内視鏡ではすべての憩室を目視することが不可能であるためです。
提示した写真の左上に血液の貯留した大腸憩室が写っていますが、この部位は出血源ではないのです。
これまでに私が止血しえた大腸憩室出血は処置に1時間以上かかったものばかりで、半数以上は出血源を突き止められず内視鏡による止血操作をあきらめています。
止血に最も有効な手段はクリップとされていますが、先のDDWという学会において食道静脈瘤結紮術を応用した止血法が報告されていました。
抗血栓・抗凝固療法を受ける方が更に増えていくでしょうが、下血を来す疾患としてこの大腸憩室症は内視鏡医には悩み多き相手であります。

♦♦♦♦♦

悪性疾患など扱わなかったものもたくさんあるのですが、9回にわたりお届けしました出血をきたす消化器疾患はこれでおしまいとします。

CTC  ○○ 学会レポート2011 その2 ○○



二年前、当ブログで「宿便について考える」というテーマで過敏性腸症候群を取り上げました。

過敏性腸症候群は日本人の5人に1人が罹患しているごくありふれた身近な疾患です。
腹痛や便通異常などで日常生活に大きな支障をきたすにもかかわらず、医療機関を受診して適切な治療を受けておられない方も多いですし、生命を脅かすような疾患でもないからなのか、あまり研究も進まず治療の選択肢も多くないのが現状です。

今回の学会の過敏性腸症候群を取り上げたパネルディスカッションで勉強しようと思ったのに、決して充実した内容とは言えず、途中退席者が多かったように思います。
演題を発表したのも関東以北の先生方ばかりと、研究している機関が偏在しており、この分野に興味を持って接する研究者が少ないことは残念です。

その中で興味をひいたものをご紹介しておきます。

最近は画像機器の発達が目覚ましく、CTを撮って大腸の形状を立体的に表すことが可能となってきました。
CT-colongraphy ( CTC ) と言いますが、大腸の透視を行ったような画像のみならず、大腸内視鏡と同様に内部を辿っていくような画像も得ることができます。
発表された内容の詳細は省略しますが、検査前に鎮痙剤を注射しているにも関わらず腸の動きが落ち着かないケースや内視鏡挿入に手間取るケース、性差などについてCTCによる大腸の形態を見たところ、いくつかの特徴があったというものでした。
例えば、解剖学の教科書的には大腸は上行結腸と下行結腸は腸間膜が短く固定された状態、のはずです。
西洋人だとほとんど解剖図通りなのですが、日本人においては下行結腸の固定が緩い場合があり、それが便通異常にも繋がっている可能性があるとのこと。
また、CTC上で強い収縮が見られる部分をマッサージすると便通が改善するという話も出ました。

胃の内視鏡と異なり、大腸内視鏡を挿入するのには熟練が必要で、パズル解きのような要素もあるのですが、挿入の難易度や腸の収縮具合などから治療法を考えていくのも大切なことかもしれません。



今年のDDWのレポートはこれでおしまいです。

<< 出血をきたす消化器疾患 第8回 >>


虚血性大腸炎
一般の方には「虚血性大腸炎」という病気はなじみがないと思いますが、決して珍しいものではありません。
下血をきたす病気で最も多いのは痔疾患ですが、その次に多いのがこの虚血性大腸炎ではないでしょうか。

突然、強い腹痛 ( 主に左側 ) が起こり、それに引き続いて下痢、次いで下血を認めるというのが典型的な症状です。
急激に起こる大腸の血流障害によってこのような一連の症状が起こるのです。
原因として、動脈硬化や血管の攣縮などの血管側の因子と、腸管内圧の亢進や腸管蠕動異常などの腸管側の因子が考えられています。

さて、この疾患概念が提唱されたのは1963年と、頻度の高さに比べると決して古いものではありません。
かつては大腸を精査する手段があまりなかったことも影響していたと思いますが、私が学生の頃に使っていた教科書には「動脈硬化や糖尿病などの基礎疾患を有する50歳以上の高齢者に多い。再発は稀。」などとあり、実際そういう認識を持って医者として働き始めました。

ところが、19歳男性でこの疾患に2度も罹ったという患者さんに巡り合うことになり、教科書の記述に疑問を抱くことになりました。
現在では「40~60歳代に多いものの10歳代から高齢者まで幅広く認める。再発率は約10%。」という風に教科書の記述も変わってきています。

たまたま、前日に5分程腹痛があったという患者さんの大腸内視鏡検査をしたことがあります。
大腸粘膜のごく一部に虚血性大腸炎とそっくりの変化が起こっているのを見たこともあります。
この方の場合、下痢や下血はなかったようですが、こういう軽症例まで含めると実際にはかなり頻度が高い疾患なのではないかと思います。

大腸内視鏡を中心に検査が普及し、診断が容易にできるようになって疾患概念も大きく変化した最たるもの、それがこの虚血性大腸炎ではないでしょうか。

出血性潰瘍  ○○ 学会レポート2011 その1 ○○


循環器科や脳外科では、心筋梗塞や脳梗塞の再発予防に低用量アスピリン ( LDA ) を処方することが当たり前になってきています。
正式に保険適応となったのが2002年からですが、それ以降内視鏡医を悩ませているのが消化管粘膜障害です。
アスピリンを処方する際に、Proton Pump Inhibitor ( PPI ) と呼ばれる胃薬、せめて H2 blocker と呼ばれる胃薬でも併せて処方してもらっていると有り難いのですが、粘膜障害の予防に役立たない防御因子増強剤が処方されているケースがかなり目立ちます。
PPI には「非ステロイド系抗炎症薬 ( NSAIDs ) 投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制」という目的で昨年から使用可能となったのですが、まだまだ消化器医以外の認識が不足しています。

そういう事情を踏まえてのシンポジウムが先日開かれた DDW であったのですが、その中で興味あるものをご紹介します。

まず、胃粘膜障害低減を目的として、アスピリン腸溶剤 ( バイアスピリン ) という薬がアスピリン緩衝剤 ( バファリン81 ) よりも処方される割合が高くなってきています。
しかし、胃粘膜障害には両者に差はなく、逆に小腸粘膜障害 ( 疑い例も含む ) が腸溶剤で圧倒的に多いという報告がありました。
カプセル内視鏡やダブルバールーン内視鏡で小腸を画像診断できるようになったことが大きいと思いますが、これまで副作用が少ないとして腸溶剤が普及してきたことに警鐘が鳴らされるものでした。

また、大腸憩室出血患者の症例が2004年ごろから急速に増えてきていて、その中で LDA を原因とするものが 38.7% もあったとする報告もありました。

LDA を内服している人で内視鏡的止血操作を必要とする頻度はそれほど多くはないのですが、LDA 療法が定着して以降確実に増加していますし、LDA を内服していることで止血に難渋します。
大腸憩室出血に至っては出血部位の同定に苦労し、内視鏡医は1時間も2時間もその処置のために拘束されることになります。
ですから、LDA  や NSAIDs を処方する際は PPI を躊躇なく使うようにしていただきたいものです。

<< 出血をきたす消化器疾患 第7回 >>

これまでは上部消化管の疾患を取り上げましたが、これからは下血につながる大腸疾患をみていこうと思います。

で、今回スポットを当てるのは大腸ポリープですが、大腸ポリープからの出血はそれほど頻度の高いものではありません。
ポリープが小さいうちはまず問題なることはありませんけれども、ある程度大きななってくると表面が傷つきやすくなり出血する場合があります。
それでもご自身で気づくほどの下血につながることは多くありません。

ただ、稀なケースとなりますが、大きくなったポリープの一部または全部がポロリと剥がれ落ちてしまうことがあります。
私の経験例では30代の方でかなりの下血があったため、内視鏡検査をしたところ頂上付近がえぐれたような形をしたポリープを直腸で発見。
これ以外に明らかな大腸病変を認めなかったため、ポリープの一部が脱落して下血に繋がったと判断しました。

11_10_29また、写真に示したのは下血して時間がある程度経過した例ですが、S状結腸にあったポリープの頂上付近に窪みがあって一番凹んだ部分に白っぽい変化があるのが分かると思います。
この部分も恐らく一部が脱落した跡ではないかと思われます。( 青い矢印 )

胃も含めてポリープが剥がれて脱落する瞬間を捉えることはまず不可能ですから、臨床経過と併せてポリープの形状を観察して推測するに留まりますが、内視鏡検査をするからこそ何が起こったかを知ることができるのです。

217年ぶりに福岡で開催された、日本消化器関連学会週間 ( JDDW ) に行ってきました。
20日から23日までの4日間の開催ですが、今回は都合により初日のみ参加。
私自身2007年の学会に4日間フルに出席して以来となりました。

私が研究生活をしていた時代はピロリ菌の演題が花盛りでしたし、前回の福岡での開催の時はダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡の登場で小腸の内視鏡検査の黎明期でしたけれど、現在の消化器の分野には目玉となるトピックスに乏しいことは否めません。
事実、魅力のあるプログラムがあまりなく、それがフル参加に二の足を踏んだ理由です。
それに、2004年度から始まった新臨床研修制度は医療崩壊の引き金になったとされますが、大学に残る医師が少なくなり大学院生も集まらずに研究分野にもかなりの支障が出ているようです。
そのせいなのか、演題の質がかなり低下しているような気がします。
この程度の内容で演題として取り上げられるんですか・・というものが散見されました。

それでも勉強になったものがいくつかありましたので時間のある時に紹介していきます。

  << 出血をきたす消化器疾患 第6回 >>


2011100310151718350.gif主題からは少し話がそれますが、触れておきたいことがあります。
それは鉄欠乏性貧血ピロリ菌の関係についてです。

ヘリコバクター・ピロリは、胃炎や胃・十二指腸潰瘍の原因になっていることはご存知だと思いますが、特発性血小板減少性紫斑病という血液疾患にも関与していることが示唆されており、昨年からは除菌療法の保険適応疾患に加わっています。

ピロリ菌の感染と鉄欠乏性貧血の関係についてのレポートも相次いでいます。
特に小児や10代の若年者で鉄剤の投与でも治療の難しいケースで、除菌をすることで貧血が改善するという報告が多いように思います。
中には鉄剤を投与せず、除菌するだけで貧血が治ってしまったという例もあります。

感染によりラクトフェリンという物質が胃の中で増えていることとの関連やピロリ菌が鉄を横取りして生きているのではないかということが言われています。
しかし、保菌者が必ずしも貧血になるわけではないので、ピロリ菌による鉄欠乏性貧血についてはまだまだ研究り余地がありそうですね。


なお、新しい情報はこちらに。→ 貧血と脳貧血を混同して生じている誤解


  参考 → http://www.kyodo.co.jp/kkservice/byouki/





  << 出血をきたす消化器疾患 第5回 >>


2011091615225431721.gif1980年代初頭までは、胃・十二指腸潰瘍は治療の難しい疾患でした。
出血や繰り返す潰瘍、そして繰り返した結果十二指腸などによって狭窄を来した場合は外科的手術の対象でしたし、胃癌の際に「潰瘍ですから切りましょう」といったウソが通用した時代でもありました。
その後、H2ブロッカーPPI ( proton pump inhibitor ) といった酸分泌抑制薬の登場やピロリ菌と潰瘍の関連がわかり、胃・十二指腸潰瘍は基本的に薬で治る疾患になりました。

食道静脈瘤同様に昔に比べて減ってきているとはいえ、ひとたび潰瘍から出血すると緊急を要し、内視鏡医の出番が回ってきます。

潰瘍ができると必ず出血するわけではありません。
潰瘍の底にたまたま太めの血管が通っていてそれが破れて出血、というのが典型的なパターンです。
出血源を見つけてそこへ止血操作を施すのが我々の仕事ですが、一筋縄ではいかないのが臨床です。
胃の中が血液だらけで取り除かないと出血部位の特定ができないのに、血液の一部が固まっていて内視鏡の吸引口を詰まらせて作業が立ち往生するというようなことはしょっちゅうです。
出血源を特定したら止血操作。
クリップをかけたり、純エタノールや高張ナトリウム・エピネフリン液を注射したり、焼き固めたりという方法でほとんどの場合は血を止めることができます。

  << 出血をきたす消化器疾患 第4回 >>


肝不全に陥ったり、肝癌へと進展していったりするのと同じくらい、食道や胃の静脈瘤は肝硬変治療の問題点。
ひとたび血が噴き出すと生死に関わる大量の出血をきたすので、内視鏡医が最も緊迫感を強いられる疾患です。

SB.gif食道静脈瘤に対してその昔は、Sengstaken-Blakemore チューブなるものを活用して止血を期待するというのが唯一といっていい治療法でした。
右の写真をご覧下さい。
二つの風船が付いていますが、細長い方を食道部分で膨らまして出血部位を圧迫するわけです。
もう一つの丸い風船は胃の中で膨らませ、位置がずれないように利用します。
この仰々しいチューブを鼻から入れられる患者さんの苦痛も大きく、このチューブで長時間圧迫していると食道の壊死を起こしかねないので、本当に一時しのぎの処置法に過ぎませんでした。
内視鏡医のいる施設では、もはやこの道具の出番はほとんどないはずです。

EVL2.gifやがて、内視鏡下に静脈瘤部分に血管を固めてしまう薬剤を注射する方法が編み出されます。
内視鏡的硬化療法 ( Endoscopic injection sclerotherapy : EIS ) と言い、若干の合併症が懸念されるものの静脈瘤の消失率に優れます。
更に内視鏡的食道静脈瘤結紮術 ( Endoscopic variceal ligation : EVL ) という方法も考案されました。
これは内視鏡下に静脈瘤を輪ゴムで縛ってしまうものです。
左の写真の青いのが静脈瘤を縛りつけた輪ゴムです。
この処置を行なうと、静脈瘤がしばらくの間小さくなって出血リスクが遠のきます。
EIS に比べて操作が簡便なので、EVL で手っ取り早く処置してしまうことも多いのですが、将来にわたって根治できる保証があるわけではありません。

内視鏡処置以外の方法もあり、昔に比べて選択肢が増えてありがたいことです。
私の親類も昭和の終わりに食道静脈瘤からの出血で亡くなったのですが、あと数年違ったら運命が全く違っていたことと思います。

しかし、胃・食道静脈瘤に対する処置を行なう機会は随分減ってきました。
原因となるB型やC型肝炎に対する治療が進歩したことや、輸血などの医療行為で肝炎ウイルスに感染することがほぼ無くなり、日本人に多かったウイルス性の肝硬変が減少してきた結果、食道静脈瘤も減っているからです。

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