野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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 学会レポート

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経鼻内視鏡独特の合併症として、鼻出血が挙げられます。
しかし、多くの施設からの報告で出血例もさほど多くなく、耳鼻科で処置を必要とするような重篤な出血もほとんどないということでした。

さて、パネルディスカッションの際、経鼻内視鏡の抜去困難例について簡単に触れられました。
パネリストの一人から機種による差異があるのでは、という意見が出されたのですが、
座長が別の形に意見を集約して次の話題へ移ってしまいました。

複数のメーカーの経鼻内視鏡を扱っている立場から言わせてもらうと、明らかに機種による大きな差があります。
あるメーカーのものは先端の部分がやや太く、それに続く挿入部分が細くできています。
抜去困難とまではいかなくても、抜去時に鼻咽頭でコツンと抵抗を感じることがこのメーカーの内視鏡で圧倒的に多いのです。
実際、抜去困難例に遭遇して冷や汗をかいたこともあります。
別メーカーのものは太さに変化がないため、抜去時に抵抗を感じることがそもそもありません。

抜去時のこの差異についてはもっと議論されていい問題だと思っています。


10月21日の午後、このワークショップで消化器関連の学会の集合体 JDDW も終了し、
会場からほど近い神戸空港より帰路につきました。
4日間通して参加したのは今回が初めてでしたが、とても充実した時間を過ごすことが出来ました。

まだまだ紹介したい演題もいくつかあるのですが、学会レポートもこれにて終了といたします。

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従来の内視鏡より径を細くして挿入ルートをちょっと変えるだけで、こんなにたくさんの研究テーマになるのだなと感心したのが経鼻内視鏡についての演題の数々です。

学会最終日は午前から閉会まで経鼻内視鏡三昧の一日を過ごしました。

面白かったのは、経鼻内視鏡を用いた胆管膵管造影について。
胆管への挿入率が4分の3程度にとどまるものの、憩室内乳頭ではかえって操作がやりやすいことや経鼻胆管ドレナージも容易であることなどが紹介されました。
あらかじめ乳頭切開した症例ではそのまま胆管内に内視鏡を挿入できるというのも興味ある点でした。
経鼻内視鏡の可能性を感じさせる報告でした。

経口内視鏡に比べて体に楽であるというのを Rate pressure product という指標を用いて比較したデータも複数の施設から出されました。
これは 心拍数 × 収縮期血圧 / 100 で表されるもの。
数値が高いと循環器系などへの負担が大きいことを意味します。
経鼻内視鏡ではこれが安静時とほとんど変わらないのに比べ、経口内視鏡においては有意に増加するという結果が示されました。
数値化することで改めて楽に受けていただける内視鏡であることが裏打ちされたわけです。

経鼻内視鏡の会場は比較的高齢の聴講者が多かったように思います。
若手医師たちは、同じ時間帯に別会場で行われていたカプセル内視鏡や内視鏡手技をテーマにしたプログラムに足を運んだのだと思います。
最終日の午前中は内視鏡医が興味を持つ演題がいくつも重なってしまい、参加者から不満の声も聞かれていました。

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内視鏡で大腸を観察すると、上行結腸から下行結腸にかけての内腔がおおよそ三角形をしておりヒダがあるのがわかります。
このヒダを半月ヒダといいます。

便秘の方や高齢者ではこのヒダの丈が低いか無くなっている場合が多いなという印象を、普段の検査を通して持っていました。
この半月ヒダが腸内容の移送に重要であると着目し、特殊な注射を用いてこの半月ヒダの形態変化をみた上で、
便秘薬を上手に選択すると結果的に下剤を減らせるという報告がありました。

一口に便秘といっても、このような弛緩性便秘や排便に関わる筋肉群の機能低下による直腸性便秘、
そして過敏性腸症候群に関連する痙攣性便秘等があり、それらに応じて治療法を選択しなくてはいけません。
アントラキノン系の大腸刺激性下剤や浣腸を繰り返し使うと習慣性になって、便秘を助長すると言われています。
大腸の形態を内視鏡で観察し、その人に合った薬剤で便秘を治療するということも一般化するかも知れません。

ヒトにおいて上行結腸は腸内容を肛門の方へ向かって移送させるのに重力に逆らって働かなければなりません。
他の動物でどうなっているのか全く知りませんが、ヒトでは大腸の中で最も半月ヒダが発達している場所です。
「体の形態には意味がある」・・・私は以前からそう思っています。

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学会では昼食時にお弁当を食べながら第一線で活躍する先生方の講演を聞く、ランチョンセミナーというものが開かれます。
3日目のランチョンセミナーは、胃から出るホルモン、グレリンについての講演をチョイスしてみました。

演者の先生は、現在鹿児島大学で教授をされていますが、実は私が卒業し入局した神戸の先輩でもあります。
入局した当時は病棟医長をされていて、私の医師としての駆け出しの頃をよくご存知の先生なのです。
私の学生時代は講義を担当されることもなかったため、教授の専門領域の話をこのような形で聞くのは今回が初めてでありました。

グレリンは、1999年に日本人によって発見された胃から分泌されるホルモン。
脳に働きかけて成長ホルモン分泌を促したり、強力な食欲増進作用を発揮します。
今回は、グレリンとそのグループに属しながら働きがまだ十分に分かっていない2つの物質について、先生の研究室での実験結果の紹介でした。

鹿児島に赴任したこともあって、話の合間に焼酎の話題も出ました。
そして、焼酎のもろみを利用して作る酢にこのグレリンを増進させる作用があるようだとおっしゃっていました。

今度先生に会う機会があったら、このあたりを詳しく聞いてみようと思っています。



sbcnvnys.gif ○○ 学会レポート 2 ○○


脂肪肝の治療に漢方薬防風通聖散を用いて効果が期待できるという報告がありました。
当ブログでも既に「スタッフの減量日記」シリーズで話題を提供したお薬です。

内臓脂肪やLDL-コレステロールの低下、HDL-コレステロールの上昇、
インスリン抵抗性の改善などがみられたというデータも提示されました。
この報告では、この漢方に含まれる麻黄や大黄、黄岑などいくつかの成分の薬理作用を示し、
メタボリック症候群にいかに有効であるかを解説していた点が良かったと思います。

実は私、脂肪肝に関しては10年ほど前に別の漢方薬を試していた時期があります。
それは大柴胡湯で、20名程に 6ヶ月服用していただきましたところ、約4割で著名な改善を認めました。
これにきっちりと生活・食事指導を行えばさらに改善率が上がるものと期待しました。
面白かったのは体重は全く変化がないのに、超音波検査上脂肪肝がみるみる改善していった症例があったことです。
ステロイド長期投与が原因で脂肪肝が生じた方でした。

最近、当診療所では再びこの大柴胡湯を用いて何名かの脂肪肝の患者さんの治療を始めております。
どのような結果が出るか楽しみです。



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先週、神戸で開かれたJDDW という消化器関連の学会で発表のあった演題の中から興味ある報告をピックアップ。
まずは生活習慣に絡むものを 2回に分けてお伝えします。
ちょっと専門的になってしまいますがあしからず。

治療の一環として食事指導をしても、なかなか間食がやめられない人がいます。
その原因の一端を示唆する報告がありました。

最近注目されている非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) の基本的な治療として間食の中止を指導したにも関わらず、それができなかった人を分析したところ、75gOGTTという糖負荷試験で空腹時よりも負荷後180分の血糖値が低くなっていたというものです。
インスリンの初期分泌も高値を示したことから、インスリン抵抗性によりインスリン過剰分泌の遷延化をきたし、食後の強い血糖値の降下と空腹感を招いて間食がやめられないのではないか、と結論づけていました。
板チョコ 2かけら程の少量の間食を摂ってもらうことで低血糖を防ぎ、全体の間食量が減らせて肥満抑制にも有効であったとのことでした。

NASHに限らず糖尿病などでも、画一ではない症例に応じた食事指導が重要であることを痛感させられました。

一般の方に注意しておきたいのは、この記事を読んで間食してもいいんだと都合の良いように解釈しないこと。
ちゃんとそういうタイプであるのかどうか検査で見極める必要があります。



bcswq6vg.gif実は今、鹿児島を離れて神戸に来ています。

20年ほど住んでいた勝手知ったる場所で18日より開かれている消化器関連学会週間 (JDDW) に参加中。
消化器に関するいくつかの学会を年一回まとめて一斉に行なうため、全国の約 1万 5千人の医療関係者が参加する非常に大きな規模のものです。

もう15回を数えるまでになりましたが、これだけのイベントを開催できる場所が最初の頃はは神戸か横浜くらいしかありませんでした。
神戸で催される時は、仕事の合間で気軽に会場に駆けつけていたことを思い出します。

時代に即応した様々な演題があり、どれに参加して最新の情報を得ようかと迷ってしまいます。
今回は主に生活習慣病をテーマにしたものや、経鼻内視鏡に関するものを中心に勉強しようと思っています。

このブログで今回の学会のレポートができたらと考えています。
とりあえず、本日はこれまで。


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