野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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 最近のニュースから

WHO鳥インフルエンザに関する研究論文の掲載が米政府の横槍で見送られた事に関して18日にWHOで緊急会議が行なわれ、全文を掲載するように勧告がなされました。
鳥インフルエンザがヒトへ感染しやすくなる遺伝子の変異を見いだした論文なのですが、これは今懸念されている致死性の高い鳥インフルエンザの脅威に抗する手がかりとなるものでしょう。
一方で米政府の言うようにテロへの悪用の不安もあります。

問題なのはネイチャーやサイエンスといった超一流の科学誌が、 掲載前に米政府にお伺いを立てていること。
ということは鳥インフルエンザについての論文提出がなされたら報告するような仕組みを事前に作っていたとしか考えられません。
学術誌側が政治圧力に屈しているのも残念ですが、自由を謳歌しているはずの米国がテロの恐怖におびえながら研究や論文発表の自由を制限していることは皮肉としか言いようがありません。 

科学の発展が我々に恩恵をもたらすことは紛れもないことである反面、使う人間のよこしまな考えから不幸が生み出されることもまた事実なんですけどね。

HbA1cヘモグロビンA1c ( HbA1c ) という検査項目は、糖尿病の治療を受けられたりあるいは定期的に検診を受けたりされている方はご存知の検査項目だと思います。

この数値、これまで糖尿病診断の補助的位置づけだったものが2010年の診断基準改定時に診断基準の1項目として格上げされました。
その際に従来日常的に行われている日本独自の測定法による値 ( JSD値 ) から欧米で行われている測定法による値 ( NGSP値 ) に変更されることも宣言されていました。それがいよいよこの4月から実施されることになりました。
JSD値にブラス0.4することでNGSP値になるのですが、見かけの数字が上がることで糖尿病治療中の患者さんに混乱が起こるのではないかと懸念しています。
実はJSD値の方がより正確な数字を反映していると言われていて、今回の改定でわざわざ不正確な方に移行するわけです。

日本人はこういう基準を相手方に合わせることにあまり抵抗がない民族です。
数字を区切るカンマの位置は欧米の数字の読み方には合理的ですが、日本人は不便さを甘受して使っているのがいい例です。
本来なら正確さを誇る日本の測定法を世界に広めてスタンダードを勝ち得るべきだと私は考えます。
だいたい日本で使っている限り臨床医も患者さんも全く困ることはないのに、一時的ではあろうけれど現場が混乱することを実行に移す意味は一体どこにあるのでしょうか。
あるとすれば、海外雑誌に論文を出す時に数値が異なるためほんの一部の日本の研究者が頭を悩ます点だけだと思います。

日本人よ、世界のスタンダードを確立する努力をせよ。
普段から思っていることですが、今回の改定のニュースに改めて思いを強くする私でした。

心臓ネズミの心拍は速く寿命が短い。
対してゾウは心拍が遅く寿命が長い。
哺乳類では生涯の心拍数は皆一緒、といった内容の文章を昔読んだ記憶があります。
だったら心拍数の多い人は短命なのではないかと密かに思いながら臨床にあたっていた時期もありますが、この点に着目したのでしょうか、面白いスタディがJAMA ( Journal of the American Medical Association ) に報告されました。
安静時の心拍数が高くなると総死亡リスクや虚血性心疾患により死亡リスクが高くなるというものです。( JAMA. 2011;306(23):2579-2587.)
心拍数が70以下だった人が10年程に間に85以上に増加した人は変化のなかった人に比べ心疾患による死亡リスクが90%も高かったとのこと。
心拍数の変化の一因として肥満などが考えられているようです。 あくまでノルウェーにおける研究ですから、ただちに日本人に当てはまるとは限りません。
脈拍は誰でも自身で調べられる簡単な指標ですけど、うまく手首の脈を探り当てることが出来ない方がたまにいらっしゃいます。
親指一本を手首にあてる方にそういうケースが多いのですが、人差指・中指・薬指の三本を使うことをお勧めします。
いずれかの指で脈を感知できると思います。


話は変わりますが、血圧の治療薬「アルマール」が糖尿病治療薬の「アマリール」とよく取り違えられる事故が多いことから名称を変更するという発表がありました。
どんな名称になるかは承認が取れ次第発表するらしいですが、アルマールの方が歴史が古いのでこれまで使ってこられた患者さん等が混乱しないような配慮がなされた名称だといいですね。

2011021621190622223.gif先日、日本で初めての心臓移植を行なった和田寿郎氏が死去したことが報道されました。
この「和田移植」に対しては様々な論議があるのですが、吉村昭の「神々の沈黙」は世界初の心臓移植にこの和田移植を絡めて淡々と綴られた小説です。
独特の綿密な取材に基づき事実を伝える文章は、感情を抑えているものの行間からは読む人の心に突き刺さるような強いメッセージを感じることができます。
興味のある方はご一読を。

なお、拒絶反応を抑える技術が進んだ現在でも移植した心臓は長くても20年ほどしか持たないということは皆さんに知っておいて欲しいことです。


さて、同じ日にこんな記事も目にしました。

サプリで肝障害、挙式中止…エステを賠償提訴

サプリメントって決して安心できるものではないことを肝に銘じてくださいね。


   □参考 「内視鏡を題材にした小説 」・「検証! がんと健康食品

2011020823233321792.gif
昨日の報道ステーションで睡眠時無呼吸症候群の特集がありました。

太ってなくても顎が小さいことで発症しやすいという内容でしたけど、問題が一つ。
それは病名を「睡眠時無呼吸症」としていたことです。
病名を勝手に改変するなんて報道番組としては失格です。

こういうことはたまに見かけますけど、これまでで一番あきれたのは重症筋無力症のことを「重症の筋無力症」としていた新聞記事。
変わった名前の疾患ですが、なぜわざわざ「の」を入れてしまうのでしょうか。

せめて疾患名くらいは正確を期していただきたいものです。

2010071016573417738.gifかつて、漢方薬メーカーの担当の方と次のような会話をした覚えがあります。
「それにしても柴胡の入っている漢方薬は薬価が高いねぇ」
「はい、原料を輸入に頼ってまして」
「そう。いい商売になりそうだから私が柴胡の栽培始めたら、買ってくれる ?」

9日の朝のNHKのニュースで、8割を中国からの輸入に頼っている漢方の原料の値段が最近著しく上がっていることがレポートされていました。
輸入される生薬の不足や価格の高騰は以前から懸念されていたことで、ちょうど1年前にはツムラが財政破綻した夕張に漢方生薬の生産拠点を置き、手始めにセンキュウの栽培を始めています。
一方、某医学部生から、葉タバコの栽培を生薬の栽培に切り替えてはどうかという面白い提言もなされています。
( http://medg.jp/mt/2010/05/vol-161.html )
葉タバコに限らず、活用されていない田畑を活用するのもいいかも知れませんよね。

臨床現場で漢方薬の活躍する場面は日に日に増えてきています。
生薬栽培、大きなビジネスチャンスだと思いますが、皆様いかが ?

2010070317003810863.gif今月は消化器疾患に絡んだトピックスがいくつかあります。

今回は、ピロリ菌除菌の保険適応疾患が増えたことについて。
これまでは胃や十二指腸潰瘍がある場合に限って除菌が認められていましたが、7月1日より以下の疾患についても可能となりました。

 ① 胃MALTリンパ腫
 ② 特発性血小板減少性紫斑病
 ③ 早期胃癌に対する内視鏡治療後胃

いずれも潰瘍ほどポピュラーではないためこの恩恵にあずかれる方はそう多くはないと思いますが、ずいぶん以前から除菌療法の有効性は指摘されていたものばかりです。

なお残る問題はピロリ菌がいるというだけでは除菌ができないことでしょう。
日本人の胃がんの9割はピロリ菌が原因とされています。
つまり日本人の胃からピロリ菌が消えてしまえば胃がん患者は10分の1にまで減るということです。
ピロリ菌陽性の人すべてを対象に除菌療法を実施するのと、それを行わずに胃がんの発症を減らさないのとどちらが医療コストがかかるか明白でしょう。
そういう観点から考えても除菌療法の保険適応の幅がもっと広がることを期待します。

なお、最近テレビでピロリ菌に感染しているかどうかは血液検査でわかると言っていたようで問い合わせもあります。
確かに血液検査でピロリ菌に対する抗体検査は出来ますが、除菌の対象が上記の②を除いて胃や十二指腸の疾患があることが前提となります。
ですから、胃の内視鏡検査を実施してその際にピロリ菌のチェックを行なうのが基本かと思います。
ピロリ菌感染の有無だけを気にするのではなく、もしピロリ菌がいるのなら胃のコンディションは一体どうなっているのかまでを確かめるのが大切なことです。

200911241628579205.gif先週末、基礎疾患があり最優先となる患者さんに対し新型インフルエンザワクチンを接種しました。
評判の悪い10ml バイアルでしたので、連絡を入れて21日に該当者の方全員に来ていただきました。
10ml バイアルについての報道がなされていたこともあり、皆さんにご理解、ご協力をいただきありがとうございました。

来月からは小児・小学生低学年への接種が始まりますが、武岡地区は今がインフルエンザのピークを迎えているようで幼稚園や小中学校では学級閉鎖が相次いでいます。
必要な時にワクチンが間に合わない現状を非常にもどかしく思います。

さて、気になるニュースがひとつ。
グラクソ・スミスクライン( GSK ) 社製の一部のワクチンで通常より高い割合で副作用が認められたというもの。
日本にも3700万人分輸入予定となっている会社が製造したものだけに大きく取り上げられています。
このニュースで気をつけていただきたいのは、製造したうちの一部のロットに限られるということ。
通常17万本で1、2例起こるとされるアナフィラキシーショックがこのロットでは 6例起こったそうです。
いずれも短期間で回復しているようで死亡例はありません。
それから、この報道がなされる前日に国産ワクチンの安全宣言がなされていることに注目しなくてはいけないと思います。
実は、一人 2回接種を前提に国産と輸入分合わせて7700万人分のワクチンを確保したのですが、後に多くの方は 1回でいいという決定がなされました。
従って日本国民全員をカバーするのに十分すぎる数になったわけです。
接種を希望している人はおよそ 6割程度というどこかのアンケートもありましたので ( →参考 )、余剰量は相当数になるのではないでしょうか。
そこへ今回のタイミングのいい連続報道。
GSK社製のワクチン輸入をストップしても十分賄えるとして、今回の副作用報告を売買契約の破棄ないし変更のいい口実にしようという魂胆があるのではないか、と勘ぐっているのは私だけでしょうか。

2009111222295826539.gif
11月 6日に厚生労働省が各都道府県に対して、子供への新型インフルエンザワクチン接種時期を早めるように要請を出しました。
これを受けて鹿児島県は11日、基礎疾患のある 1歳から小学校 3年生に対し11月20日から接種開始にするなどのスケジュール変更を行ないました。
感染者の多くが若年者であることを考えると歓迎すべきものです。
また、成人については基本的に 1回接種とすることが決まりました。

が、次のようなニュースもあります。
今月下旬に出荷予定だったワクチン量が計画を120万回分下回る450万回分になる見通しだというものです。

当院へのワクチン配分量は 4日の記事にも書いたように細かく定められているのですが、予定通りの数が入ってくる保証がまずなくなっています。
そこへ今回の子供への接種の前倒しがあった訳です。
恐らくは基礎疾患のある成人に対して割当てられた一部を子供に振り分けることになるのでしょう。
しかし、どのように配分すればいいのか今のところ県からは全く指示がありません。
それどころか「予約相談の受付は、基礎疾患のある子供は既に始まっている」という12日の新聞報道を見て仰天してしまいました。
予約相談が始まっていること自体、末端の我々は全く知りませんでしたし、確実に入手できるワクチン量や大人と子供の配分量の変更などが確定していないのに、どうやって予約をとることができるのでしょうか。
月に2回ワクチンが配られることになっていますが、実際に手に入った数をみてから予約を受け付けるのが最も混乱のないやり方ではないかと現在当院では検討中です。

yoguruto.gif昨年までは経鼻内視鏡を始めとして消化器病関係の記事を盛んに書いていたのですが、今年は「宿便について考える」という連載以外はほとんど書いていませんでたね。
ちょっと鮮度が落ちるのですが、ピロリ菌の話題について。

時々、ピロリ菌にいいとされる LG-21 という乳酸菌が入ったヨーグルトを食べている方に遭遇します。
この乳酸菌に絡んだ話題を。
内視鏡検査などを通してピロリ菌が陽性であるとわかれれば、三種類の薬を組み合わせて除菌療法を行ないますが、これで完全に除菌ができないケースもあります。
多くの場合、薬のうちの一つであるクラリスロマイシン ( CAM ) にピロリ菌が耐性を持っていることが原因として挙げられます。
さて、この除菌療法を始める 3週間前から LG-21 入りヨーグルトを食べてもらって除菌療法を行なうと、CAM 耐性のピロリ菌を保有している場合でも 54.5 % の除菌率が得られたとする報告が 5月末にありました。
ピロリ菌がこの乳酸菌によって弱ることで除菌率を高める可能性があるようです。
ただし、ヨーグルトだけではピロリ菌は減るものの完全な除菌は無理ですのでご注意を。


余談ですが・・・。
ピロリ菌の除菌療法が日本でも認可されて間もない頃、胃潰瘍を繰り返していた糖尿病の患者さんに除菌を行なったところ、ピロリ菌が消えてその後全く潰瘍が出来なくなりました。
「最近は食事がおいしくて。本当に有り難うございました。」
その患者さんにはとても感謝していただきましたが、食欲が出てきたのが仇となって糖尿病がみるみる悪化。
教育入院と相成りました。

2009042620190414222.gif今月20日の地元新聞の「論点」という欄ににピロリ菌に関する話が載っていました。
書いたのは藤田紘一郎先生で、著書の一つをこのブログで取り上げたとこがあります。
主に寄生虫学を専門とする先生で、寄生虫や細菌と人間との共生のメリットを伝導していることで有名な先生です。

ただ今回の「ピロリ菌とストレス社会」と銘打った論説は、看過できない間違いの多い内容です。
ほぼ同じ内容で日本経済新聞の4月5日のコラムにも書かれているようですが、著名な先生の文章ゆえ、一般の方が誤解されては困ります。
書かれた文章のどのような点が問題なのかをいくつか指摘しておきます。


●「漱石の胃壁にはピロリ菌がすみ着いていたことは間違いない」
夏目漱石の遺体は東大で解剖されたため標本が残っており、ピロリ菌がいたのは確認済みのことです。

●「昔の日本人はほぼ100%ピロリ菌に感染していたのに、現在ほど騒がれなかったのはなぜだろうか」
今よりも感染率は高かったと思いますが、ほぼ100%感染していたというデータを私は知りません。
ピロリ菌が発見されたのは1982年 (論文として公表されたのは1983年) で、そこから胃の様々な疾患を引き起こすことがわかってきたのは最近になってからであり、昔は騒がれていなかったのは当然ではないでしょうか。

●「ストレスが絶えず胃に加わり、胃壁が荒れてくると、ピロリ菌が悪さを始め」
ストレスがなくても、ピロリ菌に感染するだけで胃炎が引き起こされる現象は最初に発見したマーシャル博士が自らの体をもって証明しています。

●「ピロリ菌は胃粘膜を軟らかくし、胃酸が食道に逆流するのを防ぐ」
胃粘膜が軟らかくなるというのは一体どういう事でしょうか ?
理解に苦しみます。
胃酸の食道への逆流は物理的なことであり、ピロリ菌がいてもいなくても起こる現象です。

●「ストレスがなく、胃の症状が全く無い人からピロリ菌を完全に除去すると、かえって弊害が出てくることになる」
ピロリ感染者のうちおよそ4%は胃がんを発症するされ、人類の胃からピロリ菌がいなくなれば胃がんは90%以上減少すると言われています。
ピロリ菌がいなければ夏目漱石は胃潰瘍で命を落とすことなく、もっと多くの名作を世に出していたのではないでしょうか。

●「ピロリ菌は胃によいことをしていたということだ」
数多くの研究報告から、ピロリ菌が胃によいことをしているなんて消化器医は誰も考えていません。
ピロリ菌が感染していて何一ついいことはありません。
弊害が余りにも大き過ぎます。

●「これまで高齢者にしかみられなかった食道裂孔ヘルニアに二十代、三十代の若者がかなりの割合で罹患している」
昔でも若い人に食道裂孔ヘルニアはあったし、ピロリ菌がいないことが理由でヘルニアが増えたわけではありません。
肥満者の増加など、別の要因でも食道裂孔ヘルニアが増えているのです。

●「ピロリ菌を完全に除去してしまうと、逆に胃が不健康になり、収縮しなくなる。そうすると胃は胃酸をどんどん出すようになって・・・」
ピロリ菌の存在によって、胃が不健康になり、本来出るべき胃酸が十分に出なくなっているのです。
ピロリ菌を除菌すると、胃が健康を取り戻し、胃酸の分泌や胃の動きが正常化するのです。
収縮しなくなるって一体何のことなのかさっぱりわかりません。


指摘しておきたい部分まだまだあるのですが、ピロリ菌と人間とは決して「共生」関係でないことは十分に理解しておいてください。
同じように、我が先輩も日記の中で反論していますのでご参考に。(こてる先生の日記!)

♦♦♦♦♦


藤田先生が寄生虫の研究の道に足を踏み入れたのは、学生時代に奄美群島の風土病の調査団に参加してフィラリア症を目の当たりにしたからだそうです。
鹿児島とも無縁ではないのですね。
その分野でのお話は今後も楽しみにしています。

thyroid.gifある疾患がテレビで取り上げられたり、有名人が病気になったりするとすぐ話題になります。
最近では絢香のバセドウ病 (甲状腺機能亢進症) とハリセンボンの箕輪はるかの肺結核などが好例です。
私の子供もどういう病気なのかとすぐに尋ねてきます。

甲状腺疾患は実は非常に多い病気で、成人女性においては 20 ~ 30人にひとりの割合で存在するとされています。
病院というのは女性が圧倒的に多い職場ですが、私が以前勤めていた職員数がおよそ150人の病院では甲状腺疾患を有する人が 5人いました。
いずれも女性で、甲状腺機能亢進症が 2名、甲状腺機能低下症が 2名、残りは甲状腺の術後で薬を服用しているという内容でした。

その病院の院長やさらにそれ以前に私が勤務していた病院の院長も甲状腺疾患を専門にしていたこともあって、私も甲状腺の患者さんをかなり多く診てきております。
消化器系はもちろんですが、糖尿病も甲状腺疾患も積極的に診ておりますので、その分野の病気についてもご相談いただければと思います。

photo-3_1.gif先日、群馬の老人施設で火災がありました。
犠牲となった方の多くがはるばる東京からの入所者であったという点は、今の福祉や介護の現場の問題点を改めて考えさせられるものとなりました。

都会では例えば、特別養護老人ホームに入所を希望してもすぐには入ることができません。
5年待っても順番が来ないという話も聞きますが、これは施設そのものの不足だけではないようす。
入所者 3人に対して職員を 1人配置しなければならないのですが、そのスタッフがいないのです。
そのため折角ベッドがあるのに、基準上全部埋めることができないということが生じているのです。
なぜ働くスタッフが少ないかというと賃金が安いからに他なりません。

一方、医療の側においても療養型病床の削減を厚生労働省が推進しています。
特に介護型の病床は2011年度末に廃止する方針でいます。
介護施設や家庭での受け入れを促すつもりなのでしょうがこのままではうまくいくとは思えません。
厚労省の中で医療と介護の施策がばらばらで、統合的に行われていないのが最大の問題点です。
制度で賄い切れない部分をついた怪しいビジネスが成り立っている現状をしっかり認識していかなくてはなりません。

我々の老後の辿り着く先は一体どんなところなのでしょうか。

61ufftzo.gif先月末の新聞に、手を温めると他人への評価や行動が優しく親切になるという記事が載りました。
その研究結果の詳細は記事に委ねますが、この実験では温湿布と冷湿布も使われています。

内科であっても日常の診療でよく湿布を処方します。
ほとんどの方が温湿布は患部を温かくし、冷湿布は冷やしてくれると勘違いをされています。
温湿布自体に使い捨てカイロみたいに熱を発生させる働きはないこと、逆に冷湿布に氷枕と同様の作用がないこと等を説明すると驚かれています。

温湿布にはトウガラシの成分カプサイシンが使われています。
実際には温度が上昇していないのにカプサイシンで神経が刺激され、暖かく感じるのです。
温湿布を貼っても実際の皮膚温は下がっているとも言われますし、カプサイシンで毛細血管が開いて皮膚温が上がるとも。
しかし正確なデータは調べた範囲では見つけられませんでした。

またカプサイシンには痛みを感じにくくする作用もあるようですが、実際にはそれほど劇的なものでもないようです。(http://www.bmj.com/cgi/content/full/bmj%3b328/7446/991 )

冷湿布に使われるのはメントール。
これも神経がごまかされ冷たく感じているだけですが、メントール自体にも鎮痛効果があるとされます。
痒みや痛みを冷やすことで和らげるのは手っ取り早い方法でもあります。

よく温湿布と冷湿布、どちらを使うべきかを問われることがありますが、貼って気持ちよく感じる方をと私は答えています。

それにしても温湿布も温かいコーヒーカップもどちらも人を優しくするというのは面白い実験結果ですし、何よりこれがサイエンスという超一流誌に掲載された論文であるというのには驚きです。(http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/322/5901/606 )


8ogt7j2r.gif10万人あたり3.9人。
これは最近発表された2007年の鹿児島県における気管支喘息での死亡の割合を示しています。
2004年は5.6人でしたから 3割も改善している・・・と喜んではいられません。
というのもこの数字、2004年は都道府県順位で最下位、2007年でも46位なのです。
ちなみに2007年の 1位の県は1.2人ですから 3倍以上の開きがあります。

原因は様々なことが言われています。
元々南国は喘息の罹患率が高いとか、鹿児島は高齢の患者さんが多いからとか。
しかし喘息の患者さんが不十分な治療で発作をしっかりコントロールできていないのではないか、そういうことも考えられます。
万年下位を返上すべく、鹿児島の呼吸器科の医師たちを中心に鹿児島ぜんそくネットワークなるものを立ち上げ、医療連携などを通しての努力を行なっています。

喘息は吸入ステロイド薬による日々の予防が基本中の基本。
この吸入薬の使用率の低い県ほど喘息の死亡率が高いこともはっきりしています。
医師も頑張っていますので、治療を中断することなくしっかりコントロールしていきましょう。
喘息は放置すると死につながることのある怖い病気ですから。


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