野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

         ▶▶▶ アクセスMAP
         ▶▶▶ バス路線図

カルシウム拮抗薬

 ◆ 診療所ライブラリー 120 ◆


ACE今回紹介する「実はすごい! ACE阻害薬」は、一般の方向けでなく高血圧の治療にあたっている医師に是非読んでもらいたい本です。

多くの医師が降圧薬を最初に選択する場合、カルシウム拮抗薬ARB ( Angiotensin II Receptor Blocker ) と呼ばれるジャンルの中からチョイスすることがほとんど。
ARBは複数の合剤もあって便利な面もあるのですが、私はARBを第一選択薬として使うことはありません。
欧米でACE ( Angiotensin Converting Enzyme ) 阻害薬が使用される機会が多いのはなぜだろうと思って調べているうちに、その実力に捨てがたいものがあることを再認識したためです。
ARBがACE阻害薬よりも勝っている面をほとんど見いだせないことは、この本を読んでいただければ十分理解していただけると思います。

私が好んで使うACE阻害薬は海外と同じ用量で使えるペリンドプリルイミダプリル
特に前者ではT/P比が0.87~1で24時間安定した降圧効果があること、様々な臨床試験で優れたデータが出ていること、脳への移行性があってアルツハイマー病の認知機能低下抑制効果も期待できることなどが使う決め手となっいます。
たくさんのメリットが報告されているのに、何で循環器の先生が積極的に使わないのだろう、と不思議に思えてなりません。
( ※ T/P比 : 降圧効果最小時の降圧度 ( Trough値 ) を降圧効果最大時の降圧度 ( Peak値 ) で除した値 )

専門用語の多くて一般の方には分かりにくい文章になってしまい、申し訳ありません。
ただ、私が患者さんに薬を処方するときの気構えをちょっと理解していただければありがたく思います。

  → 実はすごい!ACE阻害薬

  << 胃食道逆流症 第7回 >>


2010100617293027853.gif♦♦ GERDに使う漢方薬

前回に引き続き、治療薬のお話です。
消化器病の分野で作用機序の解明が進められつつある漢方薬の一つに六君子湯があります。
主に胃においての研究が多いのですが、食道においてもいくつかの報告があります。
内視鏡検査で異常を認めない非びらん性胃食道逆流症 ( NERD ) において、PPI ( proton pump inhibitor ) でも症状の改善しない例では食道の運動機能が低下していることがわかっていますが、六君子湯はこの食道の運動機能を改善します。
また、胃の内圧を下げる作用もあり、間接的に食道への逆流を防いでいると考えられます。

私が注目しているのは半夏厚朴湯という漢方薬です。
昔から、のどの違和感があっても検査で何も所見がない咽喉頭異常感症という病気にこの薬剤がよく使われてきました。
シリーズ第3回胃食道逆流症 ( GERD ) の食道外症状について書きましたが、GERD により咽喉頭異常感症が引き起こされることもわかっていますし、実際に半夏厚朴湯を投与してこの食道外症状が緩和されるケースを何度も経験してきおり、治療の有効な手段の一つと考えています。
この漢方薬も科学的に薬効薬理が明らかになることを望みます。

♦♦ GERDを悪化させる可能性のある薬剤

薬で一つ注意していただきたいのは、降圧薬の中でカルシウム拮抗薬と呼ばれるものです。
血管の筋肉が収縮するのを妨げることで血圧を下げるのですが、下部食道括約筋部 ( LES ) の圧も下げてしまい胸やけを悪化させてしまう可能性があります。

♦♦ 日常における注意点

次に日常生活におけるセルフケアについてです。

まずは姿勢ですが、病気の性格上、前屈みになったり食後すぐに横になったりするのは好ましくありません。
ベルトやコルセットなどをきつく締めつけないことも肝要です。
また、就寝時に上半身を高くして左を下にして寝ると逆流を起こしにくくすると考えられています。
液体をすするように飲むのも空気を多く取り込んでげっぷや逆流の元になるとされています。
そしておなかについた脂肪も大敵。
肥満の方は減量に努めることも大事で、最も重要なポイントです。
シリーズ第5回で紹介した症例もスリムな体形になったことが治癒の一番の要因だと考えています。

♦♦ 注意したい食べ物について

胸やけを起こしやすくする食べ物もあります。
肉や揚げ物、ケーキなど脂肪の多いものの刺激でコレシストキニンというホルモンが活発に分泌されるようになり消化を助けるのですが、このホルモンは LES の圧も下げてしまいます。
酸の強いもの、辛いもの、熱いものも大敵で、いずれも胸やけを感じる神経を刺激することがわかっています。
あんこやあんみつなど甘いものも胸やけの原因となります。
糖分が胃液に溶けると浸透圧の高い液になりこれが逆流すると胸やけを起こすとされています。
コーヒーも胸やけを起こすのですが、コーヒー中の3つの成分により胃酸分泌が刺激されることがつい最近判明しています。( http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20100401hj001hj )
この記事によると胸やけを起こしにくいコーヒーも実現可能となっていますね。
タバコやアルコールも好ましくないとされていますのでご注意ください。

なお、食後にガムを噛むと症状緩和の一助になりますので試してみてください。
唾液が増えると、胃酸を中和したり逆流した酸を胃に押し戻したりする作用が期待できるのです。



↑このページのトップヘ