潰瘍性大腸炎免疫の異常により腸の炎症を起こす炎症性腸疾患には、潰瘍性大腸炎クローン病という疾患があります。
日本では、潰瘍性大腸炎は16万人、クローン病は7万人いるとされており、消化器内科医をやっていると常に何人かの方を担当しています。


私が医療に携わるようになって、いろんな消化器疾患の病因が解明され、治療に結びついているものがいくつもあります。
ピロリ菌発見による胃・十二指腸潰瘍、C型肝炎治療の進歩による肝硬変・肝がんなどは、患者数が劇的に減り、滅多にお目にかからなくなりました。

一方、炎症性腸疾患に関しては、あまり進歩がみられません。
血球成分吸着除去法や免疫抑制剤、生物学的製剤、便移植などが応用されるようにはなってきましたが、決め手を欠いています。


そんな中、非常に注目すべき研究結果が発表されました。
潰瘍性大腸炎の患者さんの9割に認められる自己抗体が発見されたのです。( → プレスリリース )
これは、インテグリンαVβ6という接着因子に対する抗体で、同じ炎症性腸疾患のクローン病患者さんには認められないようですし、病変の活動性に対応して抗体量も変化するようです。
潰瘍性大腸炎で見られる大腸粘膜上皮障害の説明もできるので、疾患の最大の原因と考えて良さそうですね。
今後は、潰瘍性大腸炎の確定診断や治療薬の開発やその評価などに活用していけるのではないかと思います。

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柿さて、これ以外にもここ1年で面白い報告がありましたのでご参考に。
いずれも日本の大学の研究報告です。

● 亜鉛欠乏で炎症性腸疾患が増悪。( → プレスリリース )
特にクローン病患者さんで血中亜鉛濃度が低下するようですが、亜鉛欠乏で免疫細胞の機能が変化するようです。

● ブルーベリーに含まれるプテロスチルベンの経口投与で炎症性腸疾患モデルマウスの炎症抑制。( → プレスリリース )
プテロスチルベンが免疫細胞の過剰な活動を効果的に抑えるようです。

● 柿渋の経口投与で潰瘍性大腸炎モデルマウスの病態改善。 ( → プレスリリース )
柿タンニンが大腸の環境で発酵され、潰瘍性大腸炎で増加する腸内の悪玉菌と炎症を抑制するようです。