咳止めで半音低く聞こえる今日、ツイッター上で話題になっていたのが、咳止め薬の副作用。
服用すると音が半音低く聞こえるというものです。( 参考 → 咳止め薬で「音が半音下がって聞こえる」副作用? )

これはベンプロペリン ( 商品名 フラベリック ) という咳止めによって起きる副作用ですが、絶対音感がないとなかなか気づきにくいと思います。
このような現象は、てんかんや三叉神経痛などに使うカルバマゼピン ( 商品名 テグレトール ) や感冒薬のPL顆粒などに含まれる塩酸プロメタジンという成分によっても引き起こされることが報告されています。
なお、カルバマゼピンは併用に注意を要する薬がいっぱいあり、その点でも厄介な薬です。
PL顆粒については、以前のコラムも読んでみて下さい。( →PL顆粒が前立腺肥大症や緑内障に使えない理由 )

私が、音楽をやってる人に咳止めとしてお勧めしているのは漢方薬の半夏厚朴湯 ( はんげこうぼくとう ) 。
聴覚への影響はありませんし、何といっても声が出しやすくなるというメリットがあります。

それにしても、半音だけ、それも低くなる方向に感覚が変化するのはなぜなのか、興味深い点ですね。

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咳止めといえば、この6月にコデインという成分について、厚生労働省が12歳未満への使用を段階的に制限すると決定しました。
2018年度末までは注意喚起を促し、2019年度から全面的に禁忌とするようです。
重篤な呼吸抑制を起こして死亡する例が相次いだ欧米では、2013年頃より規制が少しずつ始まっていたのですが、今年の4月に米国で12歳未満への使用を禁忌としたことを受けて、日本でもようやく対策に乗り出した形です。
米国では、肥満や重度の睡眠時無呼吸症候群を有する12~18 歳への使用についても警告が付いています。

専門的になりますが、CYP2D6 の ultrarapid metabolizer ( UM ) においては、コデインの代謝産物の血中濃度が急速に上昇し、中毒を起こすことがあります。
このCYP2D6のUMの方は日本では0.8%程度と少ないのですが、白人で10%、エチオピア人に至っては29%も存在すると言われています。
ですから、日本では欧米ほど中毒を起こす頻度は多くないのですが、0.8%と言えども無視できる数字ではありません。
CYP2D6のUMの母親がコデインを内服して、授乳した幼児が中毒を引き起こした事例の報告があります。
この事例については、コデインの添付文章に明記されているのですが、しっかり読み込んでいる医療関係者がいないのも実情です。

なお、CYP2D6については、以前当ブログで解説していますので参考にして下さい。( → CYP2D6からPL顆粒を考える その2 )

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実は、咳止めの薬には少なくとも小児に対してははっきりとした鎮咳作用を示すデータはないのです。
そればかりか、咳を止めてしまうと痰が出しづらくなり、呼吸器の感染症をかえって悪化させる可能性も指摘されています。

長期に服用しても副作用のそれほど起きない高血圧やコレステロールの薬を服用するのには抵抗感を示すのに、副作用のやたらと多い風邪薬には安易に手を出す傾向の強い日本人。
風邪薬に含まれる成分って本当に恐いものが多いので、気をつけて下さいね。