野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して43年の野口内科です。
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経鼻内視鏡を行なう際に、大きく息を吸い込んでもらって食道と胃の境界部分を詳細に観察することを前回、述べました。
逆流性食道炎の場合、内視鏡で実際どのような変化が認められるのか、興味あるところだと思います。
Los Angels 分類別に写真を並べてもいいのですが、今回あえて一例だけ提示させていただきます。

♦♦ 提示した内視鏡像について

201008182132092576.gif泡がついていたり、下部がぼけていたりで掲載するのは恥ずかしい写真なのですがお許しくださいね。
さて、内視鏡検査において食道病変の場所を時計の文字盤に例えて示すのが慣例となっています。
写真の真上を12時の方向、真下を6時の方向とするわけです。
ちなみに12時方向はおなか側、6時方向は背中側、3時方向は右手側、9時の方向は左手側になります。
提示した写真の1時の方向に白く見えるのは潰瘍です。( 白い矢印 )
逆流性食道炎による潰瘍やびらんは Los Angels 分類の A や B の場合、2時方向を中心とした右上方の胃粘膜のひだの上にできやすいことがわかっています。
この理由につていははっきりわかっていませんが、この症例は典型的な例ですね。

この症例でもう一つ注目していただきたいのは食道粘膜と胃粘膜の境界 ( Squamo-columnar junction : SCJ ) です。
3時の方向 ( 青い矢印 ) の辺りと比べてみて下さい。
中央に見える胃の入り口を中心に考えると11時の方向と6時から9時にかけての方向 ( 黄色い矢印 ) にこの SCJ が極端にずれ込んでいますよね。
この症例の方は食後すぐに左を下にして横になる ( 左側臥位 ) 習慣があるとのことでした。
SCJ が3時方向に極端にずれている方に尋ねてみると食後の右側臥位がお好みというパターンが多いです。
逆流してきた胃酸にさらされて元々存在していた食道の細胞が胃の細胞に置き換わることで境界部分がずれたように見えてくるわけです。
ですからこの境界の偏りは食後や就寝時の体位が影響するのではないかと思われます。
内視鏡をすることでその人の普段の過ごし方もわかってしまうなんて面白いと思いませんか ?

しかし、私がこの症例でもっと面白いと思っているのは、この左方向を中心とした SCJ の大きなずれがあるにもかかわらず、潰瘍ができているのがあくまで右上だということです。
逆流性食道炎における粘膜傷害の発生にはいろいろな因子が複雑に絡み合っているのでしょうね。

なおこの症例の方、薬だけでなく食後にすぐ横ならないことを守ってもらい、減量もがんばってもらった結果、1時方向の潰瘍はすっかり消えてしまいました。

次回は胃食道逆流症の治療について。


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症状から胃食道逆流症 ( GERD ) が疑われる場合に優先してチョイスされる検査は内視鏡になります。
GERD に関しては採血やレントゲン、透視などからはほとんど得られる情報はありません。

♦♦ GERDの内視鏡分類について

内視鏡検査によって、異常が見つからない非びらん性胃食道逆流症 ( NERD ) なのか、はっきりとした傷がある逆流性食道炎 ( RE ) なのかがわかります。
後者の場合、内視鏡検査でさらに重症度の判定を行うことができます。
一般的に Los Angels 分類というものが使われています。( 右下図 )

2010072812462623081.gif専門的になるので簡潔に説明しますが、Grade A と B は縦方向の傷同士がつながっておらず、長さが5mmあるかないかで分類しています。
Grade C と D になると長さに関係なく、縦方向の傷が互いにつながってきたもので全周の75%に及ぶか及ばないかで区別してあります。
日本においてはさらに色調変化型 ( Grade M )、内視鏡的に異常のないもの ( Grade N ) を加えて活用しているのが一般的です。

♦♦ 経鼻内視鏡で胃と食道の境界をつぶさに観察できる

さて、GERD の診断確定のために重要となるのは食道と胃の境界部分の観察です。
これには経口よりも経鼻内視鏡の方が優れていると私は考えています。
写真をご覧ください。
同じ被験者で同じ場所を写したものです。
EC.gif左の写真ではほとんど見えていない食道と胃の粘膜の境界部分が右の写真でははっきりと見えています。
実は、最初左の写真の状態だったのですが、息を大きく吸い込んでもらうことで右のような状態になるのです。
こうすることで RE による傷があるかどうかのキモである食道と胃の境界をつぶさに調べることができるわけです。
鹿児島では経口内視鏡をするのに鎮静剤の注射をする施設がほとんどです。
意識がもうろうとしている時に検査を受けられている方に息を吸い込んで、と言ってもまず実行できません。
鎮静剤を使わないで経口内視鏡を行なう場合でもその余裕がなかったり、反射でげっぷが出たりしてゆっくり観察ができないことが多いのです。
苦痛を与えずにつぶさに観察でき、かつ検査を受けられる方にもじっくりとこの部分の傷の状態を見て納得してもらえるわけで、経鼻内視鏡は GERD の診断にまさにうってつけだと思います。

♦♦ 内視鏡検査中のげっぷ

なお、内視鏡検査の際にげっぷを我慢しろと言われたことはないでしょうか。
咽頭部の刺激による反射で起こるのも理由の一つですが、食道裂孔ヘルニアの方はげっぷが出る傾向が強いように思います。
私はげっぷも GERD の原因となる食道裂孔ヘルニアの所見の一つとみなしています。
胃の入り口を閉める筋力が落ちているわけですから、げっぷをするな、と野暮ったい無理強いをすることはまずありません。
げっぷをすると空気が抜けて胃の壁が近接してしまいますし、壁が激しく動いて観察に時間がかかってしまうために指示をするわけですけど、我慢しろと言われても無理なものは無理ですものね。


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