野口内科 BLOG

  鹿児島市武岡に開業して43年の野口内科です。
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芍薬甘草湯

旅行に持っていくと便利先日、観光客の無理な要求に疲弊している竹富島の診療所の記事を読んで、嘆かわしく思いました。
その内容ですが、軽症なのに夜間診療を求められ、中には船やヘリを呼べという無茶な要求をする観光客がなど増え、医師離れを招いているというものでした。

旅行の際には、少々の体の不調には自分で対応できるように薬を持って行くのが望ましいと思います。

今回は、私が特にお勧めする3つの漢方薬を紹介しておきます。


① 五苓散

酔い止め・航空中耳炎・嘔吐・下痢・頭痛・二日酔い など応用範囲の広い薬です。

航空中耳炎とは、飛行機に搭乗中の圧変動に伴って起こる耳の痛みや詰まった感じなどのことを言います。
このような症状は多くの場合短時間で回復しますが、中には数日続く方もいらっしゃいます。
耳は音を聞いたり平衡感覚を司ったりする器官ですが、最近は気圧のセンサーとしての役割も注目されています。
飛行機に乗るとこのような症状を起こしやすい方や、乗り物酔いしやすい方などは、乗り物に乗る1時間ほど前に服用すると予防効果が得られます。
また、雨の降る前に起こるような頭痛など、気圧の低下で起こる様々な不調に対しても有効です。

普段と違う食事内容で嘔吐下痢などおなかが不調になることもあるでしょうし、羽目を外して普段よりもたくさん飲酒して二日酔いになることもあるでしょう。
様々な場面で利用できる五苓散は本当に便利な漢方薬です。


② 葛根湯

風邪の初期症状・肩こりなどに。

お土産をたくさん買い込んで重い荷物を持って移動する機会も増えて肩こりになったり、旅先の宿の枕が合わず首を痛めたりすることもあると思います。
そういう時に便利なのが葛根湯です。
葛根湯を服用すると、首や肩の皮膚温が上昇することが報告されています。
この付近の血流を改善する結果、痛みを緩和させる一助になっているものと考えられます。
私は、普段から肩こりを訴える方によく処方しています。

もちろん、風邪の初期症状にも使える葛根湯ですが、有効なのは風邪だけではないのです。



③ 芍薬甘草湯

腹痛・筋肉痛などに。

観光地巡りで普段よりも長い距離を歩く機会も増えます。
そうするとどうしても筋肉痛になったり、夜にこむら返りを起こしたりすることもあるでしょう。
そういう時に便利なのが芍薬甘草湯です。
予防効果もあるので、運動前にあらかじめ服用しておくといいですよ。

また腹痛にも有効である場合が多いです。

意識的に動かすことのできる横紋筋 ( 骨格筋 ) 、自律神経の支配の元で動く平滑筋。
そのどちらの痛みにも効いてくれるという不思議な作用を持ち、服用して2~3分もすると効果を発揮してくれるのが芍薬甘草湯の魅力です。


この3つの漢方薬だけで、旅行中に起こり得る体のハプニングをかなりカバーできます。
いずれも一般の薬局でも入手可能かと思いますが、市販されているものは我々が用いる半分の用量で提供されているものが多いので確認して下さい。
旅のお供に是非。

いたい先日、東京マラソンを前にして発信された「安易な服用は危険 レース時の痛み止め」という記事を見つけました。
ロキソニンなどの鎮痛薬 ( 非ステロイド系抗炎症薬 : NSAIDs ) と芍薬甘草湯は、マラソンランナーの間では半ば必需品とみなされている医薬品のようですね。

でもロキソニンなどの鎮痛薬は絶対に服用しないで下さい

◆ 腎臓とNSAIDs

NSAIDs はプロスタグランジンという物質の合成を阻害します。
元々、子宮を収縮させる物質として前立腺 ( prostate gland ) から同定されたのでプロスタグランジン ( prostaglandin ) と呼ばれます。
しかし、この物質が最も豊富に存在する臓器、それは腎臓です。
腎臓においては血流量を維持して水や電解質を調節するのに欠かせない成分なのです。
マラソンのように長い間負荷のかかる運動では、この水や電解質バランスの調節はとても重要な意味を持っています。
NSAIDs を服用すると腎臓の輸入細動脈という血管が収縮してしまい、腎臓の血流量が落ちてしまいます。
そうすると、ただでさえ脱水状態に陥りやすいマラソン中に、水・電解質の調節がますます困難になってしまうわけです。

また、走ることによる赤血球・筋組織のダメージや、十分に鍛練していない人でレース中に上昇しやすいとされる尿酸なども、腎臓に負担をかける案外怖い要因なんです。
そして、NSAIDs 服用でレース後に消化管出血や血尿、心血管系の問題を生じやすいという報告もあります。
腎臓に負担を強いるマラソンで、それに追い撃ちをかけるロキソニンなどの鎮痛薬はご法度であることがご理解いただけたのではないでしょうか。


( 追記 ) 最近の研究で、マラソンレース後に82%の人が一時的に急性腎障害を起こしているという報告がありました。( → こちら )
レース中に腎臓に大きな負担がかかっているのに、NSAIDsを服用してプロスタグランジンの合成を抑え、腎臓が本来の働きを発揮できないまま走りつづければどうなるか、語るまでもないでしょう。

◆ 芍薬甘草湯の使い方

芍薬甘草湯は、古くから競輪選手など自転車の世界ではこむら返りの予防として知られた存在でしたが、ランナーにも知られるものになってきたようですね。
事前に服用することで競技中の筋肉の攣りを予防するだけでなく、翌日以降の筋肉の痛み ( 遅発性筋痛 ) も軽減してくれます。
こむら返りが起こってから服用する際には、倍量飲むと一層効果が高まります。

注意したいのは、市販の芍薬甘草湯は医療用に比べて有効成分が半分のものが多いこと。
その点はしっかり確認しておいて下さい。
理論上はカリウム低下を招く恐れがありますので、スポーツドリンクを併せて飲むのがいいのかも知れません。
また、筋肉を弛緩させてパフォーマンスを低下させてしまうのではないかという懸念はありますが、この点についてはよくわかりません。( 低下させるのが事実ならば、成績が生活に直結する競輪選手は使わないと思うのですが )

◆ 遅発性筋痛に効きそうなある薬

遅発性筋痛に関しては、「ある胃薬」が効く可能性があります。
適応外の使い方になるので薬の名前は伏せておきますが、この論文にヒントが隠されています。( → こちら )
この薬は腎機能への影響がないので、競技中に生じる痛みにも効くならば理想的なのですが、それは試してみないとわかりませんのであしからず。


東京マラソンの翌週、3月5日は鹿児島マラソンがあります。
出場される皆さん、がんばって下さいね。

 ● 薬の説明書のイラスト 139 ●


GWまで鹿児島で開催されていた「若冲と琳派の雅の世界」展に足を運びました。
伊藤若冲と言えばまずニワトリの絵が頭に浮かびますが植物の描写も素晴らしく、今の時期を代表するボタンやシャクヤクといった花もよく題材として取り上げていますよね。
16日からの薬の説明書のイラストにはシャクヤクを選んでみました。

シャクヤクの根を加工したものは様々な漢方薬に含まれています。
こむら返りに効くよ、と先輩に薦められて私が医者になって初めて使った「芍薬甘草湯」のように製剤名にその名が使われているものもありますし、皆さんがよくご存知の「葛根湯」にも含まれています。
特に女性によく使われる漢方薬に混じっていることが多いので、興味のある方は調べてみてくださいね。


シャクヤク01

uaixgwmz.gif昨日はいつもより一ヶ月遅れで当院のレクリエーションが行われました。
雨足が強くて会場に辿り着くまでが大変でしたが、参加された皆様方、楽しんでいただけたことと思います。

私は予め芍薬甘草湯を服薬していたので、今日は筋肉痛もなく爽快です。
スタッフにも事前に飲んでおくことを勧めておきましたが、効果の程はいかがだったでしょうか。


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