野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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葛根湯

漢方薬普段の診療で、漢方薬を比較的よく使っています。
一般的な診療の補完として、あるいは第一選択薬として、私の診療では欠かせないものとなっています。

その漢方薬がコロナ禍の中で出荷調整が相次ぎ、皆様方にご迷惑をおかけしていました。( → 漢方薬の出荷調整に頭を抱える )
最近になってようやく品不足が解消しつつあります。


さて、漢方薬は食間または食前で服用するのが一般的です。
その理由としていくつかのことが挙げられています。

・漢方薬を構成する生薬は、生姜や山椒など食事としても摂取するものがあり、食事で構成成分のバランスが乱れてしまう可能性がある。
・空腹で胃酸の多い環境下では、作用の弱い成分の吸収が高まり、逆に作用の強い成分は吸収されにくくなる。

などです。

私は、一部の漢方薬は食後に服用することをお勧めしています。
麻黄という生薬を含むものです。
麻黄は、葛根湯や麻黄湯など風邪に対して使う漢方薬によく使われる生薬です。
麻黄は食後の方が吸収が良くなることが知られているためです。
防風通聖散に関しては、構成する生薬が18種類と多く、麻黄だけを優先するわけにいかないので、食間または食前の服用とさせていただいています。


なお、葛根湯の服用で急性胃粘膜病変 ( AGML ) を起こした症例を経験しています。( → 葛根湯で胃炎の副作用 )
葛根湯は実証タイプの方に適した薬なのですが、この症例では虚証と思われる方が内服していました。
万人に同じように効くとは限らないのが漢方薬の難しいところで、自己判断での内服は注意が必要です。

漢方薬ツムラの漢方エキス製剤のうち28品目が出荷調整となっています。
COVID-19 ( 新型コロナウイルス ) 感染症の蔓延とこの夏の酷暑が影響しているようです。

28品目のうち19品目を当院で扱っており、影響は計り知れません。
最初に入手しづらくなったのが小柴胡湯加桔梗石膏という漢方薬です。
これと葛根湯を組み合わせると、COVID-19感染による症状緩和にとても有効でした。
小柴胡湯加桔梗石膏が出荷調整になってからは、麻黄湯と越婢加朮湯を組み合わせて処方するケースを増やしましたが、この両者も葛根湯も今回の出荷調整の品目に含まれています。

COVID-19感染症の新規発症例が少しずつ減ってはいますが、この冬はインフルエンザも増えると予想されています。
インフルエンザにも漢方薬は有効なので、早く出荷調整が解除されることを願うばかりです。


※※ 2023年3月においてもいくつかの製剤が入手困難となっております。
特に、五虎湯と半夏白朮天麻湯では多くの方にご迷惑をかけております。
半夏白朮天麻湯についてはメーカーによって構成生薬やその分量が異なるので、簡単に変更できない点もご了承下さい。 

医療従事者枠で、8月20日に新型コロナウイルスワクチンの4回目の接種を受けました。

体温計副反応はこれまで同様、注射部位の痛みと微熱のみです。
21日は休日だったので、こまめに体温の経過をみてみました。

20日のうちは腕の軽い痛み程度でしたが、就寝中は寝返りの際に痛みで何度か目が覚めました。
21日早朝は37.3℃でややだるさがあり、その後37.2~37.4℃を行ったり来たり。
昼前になって寒気が強くなり長袖を着込むことに。
体温自体は37.2度でしたが、昼食後に麻黄附子細辛湯を服用。
すると体が温まり、腕の痛みも軽くなりました。
体温は37.7度まで上昇したのですが、寒気を感じていた時に比べ随分楽になったのは不思議でした。
その後も37.7~37.8℃が続き、夕食後に葛根湯を服用。
そして入浴でじわりと汗をかいたら、36.9℃に下がっていました。


麻黄附子細辛湯は、寒気を感じる時に体を温めて痛みを取るとされていますが、まさにその通りでした。
また、葛根湯は発熱時に発汗を促して体温を下げる作用があるとされています。
この両者の働きがピタリとハマった感じでした。
解熱剤は一切使っていません。
カロナールやロキソニンの入手が難しくなっていますが、これなら困ることはありませんね。
なお、この両者のように麻黄という成分を含む漢方薬は食後に服用すると吸収が良くなるとされています。


明日からは、いつも通りの体調で働けると思います。
 

大腿四頭筋〖 今月のつぶやきから 114 〗


普段の診療をやりながら、できるだけ多くの方々に新型コロナワクチン接種を行なっています。
その関係上、新しい医療情報にアクセスする時間が減ってしまっています。

ツイッター上でつぶやく数も減ってしまっていますが、その中から10個をピックアップしてみました。

まず、新型コロナウイルスに関係する話題を3つ。

① 65歳以上では2回目の接種後、発熱の方はほとんどいませんがご参考に。

② 後遺症として一生インスリン自己注射をしなくてはならない方も一定の割合で出てくるようです。

③ 普段からの食事の心がけは大事です。


次は、甘いものに関する2つの情報です。

④ 今後は大腸がんの方に、加糖飲料の摂取状況を必ず聞いてみたいと思います。

⑤ 人工甘味料、いいデータはありません。


次に、加齢に伴って起こる変化について2題。

⑥ 大腿四頭筋は体の中でも大きな筋肉です。衰えさせないように日頃からスクワットやウォーキングなどの運動を心がけましょう。

⑦ 免疫の加齢による変化の一端が見えてきましたが、腸内細菌が絡んでいそうです。


最後は、個人的に気になる情報を3つです。

⑧ 苦痛を伴わない検査手段は大歓迎です。

⑨ 治療開始前に調べておくといいのかも知れませんね。

⑩ SSRI、私はほとんど使いません。

旅行に持っていくと便利先日、観光客の無理な要求に疲弊している竹富島の診療所の記事を読んで、嘆かわしく思いました。
その内容ですが、軽症なのに夜間診療を求められ、中には船やヘリを呼べという無茶な要求をする観光客が増え、医師離れを招いているというものでした。

旅行の際には、少々の体の不調には自分で対応できるように薬を持って行くのが望ましいと思います。

今回は、私が特にお勧めする3つの漢方薬を紹介しておきます。


① 五苓散

酔い止め・航空中耳炎・嘔吐・下痢・頭痛・二日酔い など応用範囲の広い薬です。

航空中耳炎とは、飛行機に搭乗中の圧変動に伴って起こる耳の痛みや詰まった感じなどのことを言います。
このような症状は多くの場合短時間で回復しますが、中には数日続く方もいらっしゃいます。
耳は音を聞いたり平衡感覚を司ったりする器官ですが、最近は気圧のセンサーとしての役割も注目されています。
飛行機に乗るとこのような症状を起こしやすい方や、乗り物酔いしやすい方などは、乗り物に乗る1時間ほど前に服用すると予防効果が得られます。
また、雨の降る前に起こるような頭痛など、気圧の低下で起こる様々な不調に対しても有効です。

普段と違う食事内容で嘔吐下痢などおなかが不調になることもあるでしょうし、羽目を外して普段よりもたくさん飲酒して二日酔いになることもあるでしょう。
様々な場面で利用できる五苓散は本当に便利な漢方薬です。


② 葛根湯

風邪の初期症状・肩こりなどに。

お土産をたくさん買い込んで重い荷物を持って移動する機会も増えて肩こりになったり、旅先の宿の枕が合わず首を痛めたりすることもあると思います。
そういう時に便利なのが葛根湯です。
葛根湯を服用すると、首や肩の皮膚温が上昇することが報告されています。
この付近の血流を改善する結果、痛みを緩和させる一助になっているものと考えられます。
私は、普段から肩こりを訴える方によく処方しています。

もちろん、風邪の初期症状にも使える葛根湯ですが、有効なのは風邪だけではないのです。



③ 芍薬甘草湯

腹痛・筋肉痛などに。

観光地巡りで普段よりも長い距離を歩く機会も増えます。
そうするとどうしても筋肉痛になったり、夜にこむら返りを起こしたりすることもあるでしょう。
そういう時に便利なのが芍薬甘草湯です。
予防効果もあるので、運動前にあらかじめ服用しておくといいですよ。

また腹痛にも有効である場合が多いです。

意識的に動かすことのできる横紋筋 ( 骨格筋 ) 、自律神経の支配の元で動く平滑筋。
そのどちらの痛みにも効いてくれるという不思議な作用を持ち、服用して2~3分もすると効果を発揮してくれるのが芍薬甘草湯の魅力です。


この3つの漢方薬だけで、旅行中に起こり得る体のハプニングをかなりカバーできます。
いずれも一般の薬局でも入手可能かと思いますが、市販されているものは我々が用いる半分の用量で提供されているものが多いので確認して下さい。
旅のお供に是非。

 ● 薬の説明書のイラスト 139 ●


GWまで鹿児島で開催されていた「若冲と琳派の雅の世界」展に足を運びました。
伊藤若冲と言えばまずニワトリの絵が頭に浮かびますが植物の描写も素晴らしく、今の時期を代表するボタンやシャクヤクといった花もよく題材として取り上げていますよね。
16日からの薬の説明書のイラストにはシャクヤクを選んでみました。

シャクヤクの根を加工したものは様々な漢方薬に含まれています。
こむら返りに効くよ、と先輩に薦められて私が医者になって初めて使った「芍薬甘草湯」のように製剤名にその名が使われているものもありますし、皆さんがよくご存知の「葛根湯」にも含まれています。
特に女性によく使われる漢方薬に混じっていることが多いので、興味のある方は調べてみてくださいね。


シャクヤク01

agml.gif先日、漢方薬の葛根湯が原因ではないかと考えられる胃炎の症例に遭遇しました。
前庭部を中心にしてびらんが目立っていました。

以前、葛根湯により急性胃粘膜病変 (AGML) を生じたとする文献を読んだことがあります。
葛根湯に含まれる麻黄
この中にプソイドエフェドリンという物質が存在します。
これに解熱鎮痛薬 (NSAIDs) 様の作用があるとされているのです。

このため私は麻黄を含有する漢方薬に関しては食後の服用を勧めています。
私自身花粉症なのですが、この時期お世話になる小青竜湯にも含まれています。
漢方薬は食前または食間に服用することとなっていますが、私の経験上食後に飲んでも十分に効いてくれています。

先の症例の方、検査の少し前に風邪気味で薬局で葛根湯を購入し食前に飲んでおられたようです。
漢方医に言わせると、症を間違えて処方するからだ、となるのでしょうが、薬局でも市販されている薬。
薬剤師さんや購入者自身が葛根湯に適した「実証」であるかどうかまで判断するのはむずかしいと思います。
漢方薬にも副作用があることは十分留意してください。

ちなみに、プソイドエフェドリンはオリンピックで禁止薬物に指定されています。
シドニー五輪の際、16歳の女子体操選手から検出され金メダルを剥奪されるという事件もありました。

(なお、写真と症例は関係ありません)

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