野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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認知症

ナッツ〖 今月のつぶやきから 144 〗


先週、12月21日は桜島が初冠雪するなど厳しい寒さが続きましたが、年末年始は暖かい日が続く予報が出ています。
久しぶりに人の移動の多いお正月になりそうです。
こうなると、正月明けのかぜ症状外来 ( 旧発熱外来) 対応が忙しくなるのではないかと予想しています。。


12月の「今月のつぶやきから」は、食べ物と疾患に関するものだけを集めてみました。


① 培養細胞レベルの実験ですが、コーヒーかすに含まれる成分にパーキンソン病に有効な成分が存在するというニュース。かすも捨てたもんじゃないですね。
ワインを飲んで頭痛が起る原因にケルセチンが絡んでいそう。

③ 食事の質の低い高齢者に限ると、カカオ認知機能維持に役立っている可能性が示されました。

糖尿病認知症に対してのコーヒーのメリットについてまとめた記事です。

⑤ 閉経後女性が毎日プルーンを食べると、骨量減少が緩やかになるという報告。

⑥ 若者が毎日ナッツ類を食べるとメタボリック症候群予防につながるという報告。
⑦ スピルリナやクロレラなどの藻類が、安静時と運動時の両方で筋原線維蛋白質合成促進に働くという報告です。


 ◆ 診療所ライブラリー 210 ◆


認知症ポジティブおばあちゃんコロナ禍で会うことができない親戚向けに、認知症を患うおばあちゃんの動画を撮ってYouTubeで見せようとしたことがすべてのきっかけ。
日常をありのままに伝えたり、おばあちゃんの特技を動画で披露するうちに、人気が沸騰して再生回数が1年前で2000万回を超えたとか。
その姑を介護するお嫁さんが習得した介護のノウハウが書籍化されていました。

映像を撮られることでおばあちゃんの生活に張り合いが出て、撮影前には化粧直しをしたり、言葉遣いが変わってきたり、通院が減ったりとメリットもあったようです。
撮った動画で自分の姿や声を確認するのがいい刺激になっている可能性もあるようです。
また、介護する側もカメラが介在することで自分の言動に対しての気付きがあるようで、向き合い方が変わり、介護が楽になったとか。

巻末には、すぐにYouTube映像にアクセスできるQRコードが載っていて、おばあちゃんの日常をすぐに覗くことができます。
読んで・観て、介護への向き合い方が大きく変わる一冊です。 

なまこ〖 今月のつぶやきから 139 〗


梅雨が明け、毎日暑い日が続いています。
そして、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの両方が流行している鹿児島。
暑くてマスク着用のつらい時期ですが、周囲の状況を考えると場面に応じた着用が望ましいです。

月末にツイッターでつぶやいた医療情報をいくつかピックアップしてお届けする「今月のつぶやきから」。
今回は9個の情報を振り返ります。


まずは認知症関連の情報を3つです。

① パーキンソン病も腸内細菌との関連が明らかになりつつありますが、将来的に認知症も腸内細菌コントロールで予防できるかも知れません。

② ツイートにも書きましたが、脳容積減少が先か社会的交流低下が先かは更に検討が必要でしょう。

③ 日本では日常的に使われないとは思いますが、鹿児島でもオリーブ栽培が増えてきていますので活用したいですね。


次は、糖尿病関連の話題を3つです。

④ 中国では干しナマコは黒いダイヤとして高級食材ですが、糖尿病にも有益なようです。

糖質制限食についてはいろんな議論がありますが、男性には好ましくないようです。

⑥ 朝食を摂る時間帯が糖尿病発症リスクを左右するようです。


最後に個人的に興味のあるものを3つ。

⑦ 日本では馴染みの薄いマラリアですが、周期的に発熱を繰り返す仕組みにメラトニンが関与していることが明らかになりました。

⑧ 肥満が母乳の出方にも影響しているようです。

⑨ 昔のテレビドラマ「スチュワーデス物語」では、毎回片平なぎさがマネキンのような全く動かない義手を見せるのがお決まりでしたが、自由に動かせる義手が登場したようです。

ヨーグルト〖 今月のつぶやきから 137 〗


朝はひんやりするのに日中は汗ばむ陽気。
気温差が大きいこの季節は衣服の調節も大変ですね。

普段収集している医療関係の情報の中からいくつかをピックアップして振り返る「今月のつぶやきから」。
つぶやきをまとめてタイトルを付けたら七五調になってしまいましたが、今回は10個の情報を振り返ってみます。


最初は日本人の食事と疾患に関連した興味深い情報を4つです。

① 妊娠中の食事が、子どもの疾患に影響を及ぼす一端が見える報告です。

② 偏りのない食事が認知症予防になりそうです。

③ 4万人近くの日本人を対象にした報告です。

④ いい腸内細菌を育てると感染症も防げる可能性を示唆しています。


次に、手を使うことの重要性がわかる話題を2つ。

⑤ 人間は巧みに手を使うことのできる唯一の動物。せっかくの能力は十分に発揮しましょう。

⑥ 手を使っていると認知機能が改善するという報告。


続いて、喫煙と疾患に関連する話題2つ。

⑦ 腎機能の低下している人が喫煙によりがんになりやすいとする情報です。

⑧ 受動喫煙と小児の近視の意外な関連性。


最後に、運動に関連する情報を2つです。

⑨ 少しでも体を動かすことの重要性がわかると思います。

⑩ 同じ時間の運動でもでも、途中少し強めの負荷がかかる運動を取り入れると効果的です。

 ◆ 診療所ライブラリー 204 ◆


認知症の人医師の書く認知症に関連する本は、どうしても検査法や治療手段などを中心にしたものになってしまいがちです。

今回紹介する本は、認知症の親を見守る脳科学者とソーシャルワーカーの共著。
今までにない組み合わせで出来上がった本を紐解いてみると、認知症を理解するに当たって新しい視点から書かれていて、非常に興味深いものでした。

認知症の方にみられる特徴的な行動を脳科学的に解説し、的確な対応方法が添えられています。
例えば、見当識障害で季節や日時が分かりにくくなり季節外れの服を着たり着替えを忘れたりする・また記憶を司る海馬は嗅覚と密接に関連しているので、海馬が萎縮すると匂いを察知しにくくなる・それも相まって清潔が保てなくなる・人と会う機会を増やすと少しでも着飾ろうという気持ちが出る可能性がある。
なるほどと思いました。

また、
♦ 食べられないものを口に入れても、食べられるものか否か口の中でちゃんと判断できているが、吐き出すのははしたないと思い、いつまでもモグモグしている。
♦ 介護サービスを拒否するのは、認知症があっても自己認識は正常で、能力が落ちてきていることを理解しているが、置かれた環境を良しとする人が誰でも持つ心の働きによるもの。

などなど、勉強になることばかりです。


海馬が衰えるという認知症の特徴をこの本を通して上手に理解することによって、適切で質の高い生活支援に結びつけられるのではないかと感じました。
良書です。

 ◆ 診療所ライブラリー 191 ◆


認知症の人が見ている世界「認知症の人は、理由もなく不可解な行動や言動を取るのではありません。むしろ、認知症の人は懸命に考えているのです。その心の内が見えれば、不可解な言動にも理由や意味があることがわかります。」
と、冒頭で述べる理学療法士がこれまでに経験してきた認知症ケアをマンガ形式で紹介する本です。

認知症の方と接していると高頻度に起こる様々な状況が網羅されています。
非認知症の世界からは理解しがたい言動の裏にある認知症の世界を読み解くと、接し方がまるで変わってくることが手に取るようにわかる内容です。
ケアする側の心がけ一つ、話し方一つで認知症の方も安心感が増し、それはケアする側のイライラ解消にも繋がります。
そのノウハウがいっぱい詰まった良書です。

2550066〖 今月のつぶやきから 118 〗


今月上旬は夏日が続きましたが、17日以降、一気に季節が変わってきました。
特に朝晩と日中の気温差が大きくなっています。
体調を崩しやすいので十分に気をつけてください。

Twitter 上でつぶやいた医療情報を、月末にピックアップして当ブログでお届けしていますが、今回は12個の話題をまとめました。


まず、新型コロナウイルスに関する話題を5つ。
最近は治療に関する話題が増えてきています。

① 既存の薬の新たな活用法がAIを使うことで見えてきます。

② 発表されている新型コロナの患者数よりも、2.5倍は感染者がいるであろうという報告です。

③ ワクチン打って、日常で基本的な感染防御を行っていると重症化が防げることを証明。

④ コロナ禍で子供たちがどう過ごすべきかを考え直す必要があるのかも知れませんね。

⑤ 食生活も大事なようです。

⑥ 新型コロナの治療に性差を考える必要がありそうです。


次に、認知症に関する話題を3つ。認知症を防ぐヒントとなりそうです。

⑦ 線虫においての研究ですが、ビタミンB12の濃度測定や投与も必要になってくるかも知れません。

⑧ 医療関係者は昼休みにちょっと寝る人多いですよ。

⑨ 運動して筋肉量を維持することも認知症予防に繋がりそうです。


最後に、個人的に興味のある話題を3つ。

⑩ 偏食は腸内細菌のバランスに影響すると思われますが、それを整えるとあがり症も改善するのでしょうか。


⑪ ピロリ菌類縁の細菌が消化器系の疾患に絡んでいる可能性があるのですが、培養法が確立できていないものがほとんどで研究が進んでいませんでした。


⑫ 今年のノーベル医学生理学賞に絡んだ情報です。


 ◆ 診療所ライブラリー 184 ◆


認知症の困った前回に続いて認知症についての本です。

今回紹介する本も非常に素晴らしい内容になっています。
認知症でよくみられる症状を一つ一つ簡潔に解説し、その症状に対して「悪い対処」と「良い対処」を非常にシンプルな一コママンガにまとめています。
そして「笑顔でケアできる対処法」としてワンポイントの解説。
最初から最後まで4ページずつの配分を通しています。

本というのは編集の工夫次第でこんなに分かりやすくなるかととても感心する一冊です。


前回も書きましたが、認知症とわかっていても身内の方はつらく当たってしまうことが多いです。
繰り返し読むことで、困った言動にも上手に対応できるようになり、重くのしかかる負担も鬱々とした雰囲気も解消するのではないかと思います。

牛乳〖 今月のつぶやきから 115 〗


東京オリンピックが開催されている中、新型コロナの感染状況が過去最悪になってきています。
夏休みシーズンに突入し、鹿児島でも県外からの若年の来訪者の感染例が目に見えて増えてきていますが、今後どうなってしまうのでしょう。
去年の春の頃の危機感を今一度思い返してみて下さい。


さて、ツイッターでつぶやいた医療情報を月末にまとめていますが、今回は11個の情報をピックアップしてみました。

まず、食事の話題です。
5つの話題を読んでいただくと、積極的に野菜を摂りたくなるのではないでしょうか。

① 動物性と植物性では蛋白同化作用が異なるという報告です。

② 動物性蛋白質摂取が多いと車の危険運転につながり、野菜摂取が多いと安全運転に。

③ 牛乳も積極的に摂りたい食材です。

④ ここでも植物性食品の摂取が推奨されています。

⑤ 最近、いい報告の多い全粒穀物ですが、今回は太りにくいという話題。


次は、腸に絡む話題を4つ。

⑥ ビフィズス菌は死菌であっても有益なんですね。

⑦ 便を採取するよりも簡便な方法なので、しっかり検証して普及してくれるといいですね。

⑧ お尻を洗うことは悪いことではないですが、ノズルの清掃を疎かにしてはいけません。

⑨ 当ブログでも繰り返し訴えていますが、安易な抗菌薬使用は禁物です。


最後は、認知症に絡んだ2つの話題で終わります。

⑩ 認知症の予防の観点から降圧薬の種類を選ぶことも大事にになってきそうです。

⑪ わずかな差のように思いますが、早い段階からコレステロールの治療を積極的に行った方が良さそうですね。

 ◆ 診療所ライブラリー 183 ◆


家族のための認知症ケア認知症のある方にどう接したらいいか悩んでいるご家族の方へ。

そんな前書きから始まる本書、実によくできています。

最初は、認知症でよくみられる症状とその対処法が見開きでイラストを交えてわかりやすくコンパクトにまとめてあります。
次は、認知症の種類とその特徴や治療法についての解説。
そして認知症の家族と共に暮らしていく上での工夫や介護サービスの上手な活用法について。

わずか90ページほどのボリュームですが、情報がてんこ盛りです。

認知症とわかっていても、身内はつらく当たってしまいがち。
認知症ケアのバイブルとしてこの本を手元に置いて、繰り返し繰り返し読んでみましょう。
一緒に過ごすことの負担感が軽減すること間違いなしです。

〖 今月のつぶやきから 97 〗


ダンゴムシ常に集めている医療情報の中で、一般の方の健康に役立ったり興味を持っていただけそうなものをツイッターにてお届けしています。
その中から更に興味深いものを、月末にピックアップしてブログにまとめている「今月のつぶやきから」。

今月は、以下の9題をお届けします。

最初は、高校生の科学研究に関する話題を3つ。
着眼点も研究内容もお見事です。

① 小学校一年生の時からダンゴムシ一筋で、飼育ケースにカビが発生したことがないことが今回の発表に繋がったようです。

② 鹿児島の特産品である黒酢に歯のホワイトニング効果があるという発見で、洗口剤の開発までこぎつけるといいですね。

③ 自宅の庭でわずかばかり育てていたコメをカメムシにやられたことがありますが、ミントが活用できるのならリスクがないでしょうね。


お次は、意外なものが認知症に効きそうだという報告を2つ。

④ アミノグリコシド系の抗菌薬は腎機能悪化の懸念があってほとんど使われませんが、新たな活用法に繋がるかも知れませんね。

⑤ コンニャクはカロリーゼロだし、食べる価値があるのか疑問に思っていましたが、研究の余地はありますね。


次は、日々の健康管理に役立ちそうなグッズについて2つ。

⑥ 心拍数が測れるスポーツウォッチは既にありますけど、更に病気の早期発見に結びつきそうな時計が出てくるようですね。

⑦ 朝夕の運転で悩まされるまぶしい日光を上手に遮ってくれそうです。


最後にミネラルに関する2つの話題です。

⑧ マグネシウムは納豆を含む豆類や豆腐、海藻などに多く含まれます。

⑨ 亜鉛不足は味覚障害や皮膚障害を起こすことが知られていましたが、炎症性腸疾患の病状にも絡んでいるようですね。

〖 今月のつぶやきから 95 〗


咀嚼11月も末になるのに、まだ20℃を超える日があるなど、この時期らしからぬ気候が続いています。
ただ、紅葉も進み、インフルエンザも少しずつ流行する気配を見せています。
体調には十分気をつけて下さい。


日頃から、ツイッター上でつぶやくという形で、医療関係の情報を簡単にまとめており、月末にはブログ上でそのいくつかをピックアップしてお届けしています。

まずは、睡眠にまつわる話題4つを振り返ってみます。

① 味噌汁は塩分が多いとされていますが、摂取しても血圧は上がらないようですし、今回は赤ん坊の安眠にも好影響があるという報告です。

② ほどほどの睡眠時間がいいようですね。

③ どれだけ効果があるのかわかりませんが、睡眠導入剤の減薬に役立つと嬉しいです。

④ 睡眠不足が骨の健康にも影響するとは、興味深い報告です。



次は、個人的に関心を持った話題を5つ。

⑤ マウスを調べたものですが、脳内で硫化水素が産生する酵素が増えてる結果、硫黄の結合した蛋白質が蓄積しているという報告です。

⑥ 母乳はいろんなパワーを秘めていますね。

⑦ 発がんに細菌やウイルス感染が元になってることがありますが、真菌にもその可能性がありそうです。

⑧ 黄砂の研究はまだまだ突き詰めていかなくてはなりませんが、早産に絡んでいそうだとは考えも及びませんでした。

⑨ よく噛むと、頭が良くなるとか、満腹感が早く感じるようになるとか、いろんなメリットの報告があります。食事は時間をかけて食べたいですね。

〔 まだまだ使えるH2ブロッカー ・ 第二回 〕


♦♦♦ シメチジンは服用が面倒 ♦♦♦

前回の「シメチジン、面白い作用を持っているけど」でも書きましたが、胃・十二指腸潰瘍が内服薬で治療できるようになったという点で、シメチジンはとても画期的でした。
しかし、シメチジンには厄介な点がいくつかあります。
今回はその話です。

内服まず、第一点。
半減期が短いため、基本的に1日4回服用 ( 毎食後 + 就寝前 ) しなくてはならないのです。
1日2回の服用法もありますが、記憶が間違っていなければ、私が医師になった頃には1日4回の内服法しかなかったと思います。 
私の消化器内視鏡の師匠は「薬で治るようになったとはいえ、潰瘍は侮れない疾患。薬を1日4回も飲まなきゃいけない病気なんだと認識してもらうためにも、シメチジンを使う」と言ってました。
でも、現実には面倒臭がってシメチジンの服用を遵守する人なんてほとんどいません。
H2ブロッカーを服用して数日もすると痛みが落ち着いてしまうため、治ったと勘違いして1日4回もの煩わしい内服を中断してしまうのです。
でも、潰瘍の傷をきれいに治すためには、胃潰瘍で8週間、十二指腸潰瘍で6週間内服を続ける必要があります。( それでもピロリ菌の除菌療法が登場するまでは、再発を繰り返すケースが多かったですけど。)
私が医師になった時には、シメチジン以外にもラニチジンロキサチジンファモチジンというH2ブロッカーが存在していました。
そのいずれにも1日1回の内服法があり、きっちり最後まで服用してくれる人は多かったです。


♦♦♦ シメチジン、副作用が半端ない ♦♦♦

次に、シメチジンの持つ様々な副作用をみていきます。

まず、私が経験したシメチジンによる深刻な副作用を紹介します。
それは骨髄抑制です。 
骨髄の血液を造る細胞の働きが抑えられて、白血球・赤血球・血小板の3つの血液成分が造れなくなってしまうことを骨髄抑制と言います。
研修医として駆け出しの頃、重症の全身性エリテマトーデス ( SLE ) の患者さんにシメチジンの注射剤を使い始めたら、白血球・赤血球・血小板が急激に減少したのです。
シメチジンを中止後、感染症や出血傾向をきたすことなく骨髄抑制が改善して事無きを得ましたが、SLEのような自己免疫疾患では骨髄抑制を起こすリスクが高いようですね。
骨髄抑制・顆粒球減少 ( 白血球減少 )・血小板減少などの報告は、ファモチジンやラニチジンなど他のH2ブロッカーでもありますが、シメチジンによるものが多数を占めています。

この経験でシメチジンにはいい印象を持たなくなりましたが、他にも厄介な副作用がありますので、次の項目以降でみてみましょう。


♦♦♦ シメチジン、高齢者には大敵 ♦♦♦

2015年に日本老年医学会から「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」が発表されました。
その中にある「75歳以上の高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物リスト」に、H2ブロッカーが含まれています。
認知機能の低下せん妄のリスクがあり、可能な限り使用を控える。特に入院患者や腎機能低下患者では、必要最小限の使用にとどめる」との記載があります。

中枢神経前回も述べたように、H2ブロッカーはヒスタミンの働きを邪魔しますが、ヒスタミンは中枢神経において、覚醒状態の維持や記憶学習能に大事な役割を持っています。
ヒスタミン受容体を遮断すると、意識障害やせん妄などの病態をきたす可能性があるわけです。
また、抗ヒスタミン作用を持つ薬は、抗コリン作用も併せ持っています。
中枢神経でアセチルコリンは、レム睡眠の維持や覚醒、注意、記憶機能と密接な関係があり、抗コリン薬も認知機能の低下やせん妄のリスクになるのです。
H2ブロッカーは、抗ヒスタミン作用と抗コリン作用という脳にはあまり好ましくない働きを持っているわけです。

様々な薬剤が抗コリン作用を持っていますが、その程度には差があります。
それをまとめたものに「抗コリン作用リスクスケール」というのがあり、抗コリン作用の強さによって薬を3段階に分けています。( 下の表はクリックで拡大します )
抗コリン作用リスクスケール

このスケールでは、シメチジンは2点 ( strong ) に分類されています。
シメチジンはH2ブロッカーの中で最も中枢神経系へ移行しやすいとされており、せん妄などの報告も多数あります。
高齢になると腎機能が衰えてきますので、薬の血中濃度が上昇してさらにリスクが高くなります。
H2ブロッカーは他にもありますので、点数の高いシメチジンをあえて選択する理由はないと思います。

( 抗コリン作用についてはこちらもご参考に → 抗コリン作用って ?


♦♦♦ シメチジン、やたらと多い薬物相互作用 ♦♦♦

シメチジンは他の薬物との相互作用がやたらと多いのです。
薬の代謝に重要な役割を果たすものの一つとしてチトクロームP450 ( CYP ) と呼ばれる酵素の一群があり、主に肝臓で全薬物代謝の8~9割に関わっています。
CYPには多くの種類がありますが、イミダゾール環という構造を持つシメチジンはありとあらゆるCYPの働きを阻害します。
特にCYP3A4CYP2D6に対して強い阻害作用があります。
CYP3A4は薬物の生体内変換の約半分を担い、それに次ぐ活性を持つのがCYP2D6。
この二つを強力に抑えるとわけですから、かなり多くの薬との相性が悪いということになります。

それから、腎臓の尿細管には、異物を尿に排泄するときに活躍する MATE ( multidrug and toxin extrusion ) と呼ばれる輸送体がありますが、シメチジンはこの働きも阻害してしまいます。

肝臓でも腎臓でも、薬の代謝を邪魔してばかりのシメチジン。
複数の薬剤を併用している方に、この薬を選ぶ勇気は私にはありません。

( CYP2D6に関しては、こちらもご参考に → CYP2D6からPL顆粒を考える その2


♦♦♦ シメチジン、普段アルコールに強い人も悪酔い ♦♦♦

酔っ払いシメチジンにはアルコールを代謝するアルコール脱水素酵素ADH)も阻害する作用があります。
つまり、お酒に強い人が飲酒前にシメチジンを飲んでしまうと、アルコールの代謝が落ちてしまうので、普段と違って悪酔いしてしまうのです。
これはラニチジンやニザチジンにもある作用なのですが、シメチジンには先に述べたように幅広いCYP阻害作用も有している点が大問題。
というのも、アルコールはCYP2E1やCYP1A2、CYP3A4などの酵素でも代謝を受けるからです。
シメチジンはアルコールの代謝をとことん邪魔してしまうってことなんです。
シメチジン服用者はアルコール依存性になりやすいというネットの情報もあります。
その真偽のほどはわかりませんが、シメチジンとアルコール、絶対に避けたい組み合わせです。

( ADH についてはこちらもご参考に → お酒に弱い人は進化系 !? )


♦♦♦ シメチジン、他にもあるある副作用 ♦♦♦

シメチジンの他の主な副作用については箇条書きにまとめてみますね。

薬剤性パーキンソニズム ( シメチジンの他にファモチジンでも報告あり )
高血糖高浸透圧昏睡 ( 高齢の糖尿病患者さんでは要注意 )
抗アンドロゲン作用エストラジオール代謝阻害作用 ( 女性化乳房などを起こす )
クレアチニン排泄の抑制

H2ブロッカーは、腎機能が悪くなると減量や中止を考慮しなくてはならないのですが、腎毒性がないのに血中のクレアチニン値を上げてしまっては、正しく腎機能を推測することが出来ません。


♦♦♦ シメチジン、こんな使われ方もあるけれど ♦♦♦

前回は、シメチジンのがんに対する作用を掘り下げてみました。
他にも、帯状疱疹水いぼPFAPA症候群 ( periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis and adenitis syndrome )、急性間欠性ポルフィリン症ニキビ男性型脱毛偽痛風などへの応用で効果があったとする報告もあります。( 参考 → 肩の痛みに・・・ )

斬新な手法で開発され、胃・十二指腸潰瘍の治療を大きく進歩させ、ノーベル賞を得るに至った発明品は、良くも悪くもいろんな作用があるようです。
たとえ本来の働き以外にメリットがあるとしても、様々な深刻な副作用があり、多くの薬と相性が悪いシメチジン・・。
私が週刊文春の記事に驚いた訳がご理解いただけたものと思います。


さて、次回は私がよく使っているH2ブロッカーのうちの一つ、ニザチジンについてです。 ( つづく )

〔まだまだ使えるH2ブロッカー・第一回〕シメチジン、面白い作用を持っているけど
〔まだまだ使えるH2ブロッカー・第三回〕ニザチジン、唾液も出すし胃腸も動かす
〔まだまだ使えるH2ブロッカー・第四回〕ラフチジン、胃薬なのに痛みやしびれにも
 ※ 参考 胃薬なのに別の病気の治療に

 ◆ 診療所ライブラリー 146 ◆


笑って付き合う認知症 榎本睦郎これまで様々な疾患に関する本を紹介してきましたけど、専門家の書く文章は兎角堅苦しくて重々しい内容になりがちなのが常です。
今回紹介する本「笑って付き合う認知症」は、認知症という治療するにも介護するにも課題の多い疾患を取り扱っているものであるにもかかわらず、読後感がとても爽やか。
認知症に向き合うのはそんなに負担になることではないんだな、と思わせてくれる不思議な魅力があります。

認知症の診療は避けて通ることはできません。
進行していくのを食い止めるのは現時点で難しい疾患なので、診察にあたっては気の重い部分もあります。
しかし、それはかなり症状が進行してから治療にとりかかる例が多いからのように感じます。

この著者が言うように、早期に適切な治療を受けるなら認知症はそれほど怖いものではないのも確かです。
そのためには認知症を早い段階で捉える必要があります。
外来診療の短い時間の中で患者さんと向き合っていても、なかなか気付きにくい場合がほとんどなので、これについてはご家族の視点が大事になってきます。
本書では、ご家族が「あれっ?」と思った時に、認知症外来を受診すべきかどうかを見分ける簡単なテストを紹介しています。

1つは、最近のニュースで印象に残っているものを尋ねてみること。
そして、1分間で動物の名前をいくつあげられるか、という1分間スクリーニングテストです。
前者では、正常であれば何らかの答えが返ってくるのに、アルツハイマー型認知症ではわずか2%しか答えられないばかりか、答えられない理由を挙げて取り繕おうとするケースが4割ほど認められるようです。
後者では、13個以上の名前が出てきたらOKですが、十二支順に答えるのだけはダメとします。
このテストについては昨日 ( 2018年5月23日 ) 放送のNHKの番組、ガッテン ! の中でも取り上げられていましたね。
いずれも非常に簡便な方法なので、ご家庭でもすぐに実践できるのではないかと思います。

その他にも、かかりつけ医のメリット、一人一人の症状に合わせた薬の処方、息抜き介護のススメ、施設入所や最期の看取り方などについて、平易な文章で解説がなされています。
個人的にも、認知症という言葉を使わずに患者さんを治療に前向きにさせるテクニックは参考にさせていただこうと思っています。


当院では、医療や介護、健康に関する書籍を取り揃え、貸し出しも行なっています。
認知症関係の本もいくつか用意してありますので、是非ご活用下さい。( → 当院の書籍の貸出しについて )

指しゃぶり〖 今月のつぶやきから 56 〗


毎日のように数多くの医療情報が発信されますが、その中で私のアンテナでキャッチできたものの中から興味あるものを twitter 上でつぶやいています。
その中からさらにピックアップして月末にまとめているシリーズです。

まずは、認知症に関しての2題です。

抗認知症薬は価格が高い割にそれほど多くの期待はできません。
ビタミンDやハーブなど安価な手段で予防や対応できるようになるといいですけど、どうなりますか。


次に薬に関する話題を4つ。

ニザチジンという酸分泌抑制薬は非常に面白い作用も持っています。
デパスは軽い薬だと医師も患者も勘違いしてますよね。




最後は消化管とインスリン抵抗性について。
消化管を健全に保つことも糖尿病予防には大事なようです。
ピロリ菌の除菌が糖尿病治療にプラスに働くというのは興味ある報告です。


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