<< 胃食道逆流症 第4回 >>


症状から胃食道逆流症 ( GERD ) が疑われる場合に優先してチョイスされる検査は内視鏡になります。
GERD に関しては採血やレントゲン、透視などからはほとんど得られる情報はありません。

♦♦ GERDの内視鏡分類について

内視鏡検査によって、異常が見つからない非びらん性胃食道逆流症 ( NERD ) なのか、はっきりとした傷がある逆流性食道炎 ( RE ) なのかがわかります。
後者の場合、内視鏡検査でさらに重症度の判定を行うことができます。
一般的に Los Angels 分類というものが使われています。( 右下図 )

2010072812462623081.gif専門的になるので簡潔に説明しますが、Grade A と B は縦方向の傷同士がつながっておらず、長さが5mmあるかないかで分類しています。
Grade C と D になると長さに関係なく、縦方向の傷が互いにつながってきたもので全周の75%に及ぶか及ばないかで区別してあります。
日本においてはさらに色調変化型 ( Grade M )、内視鏡的に異常のないもの ( Grade N ) を加えて活用しているのが一般的です。

♦♦ 経鼻内視鏡で胃と食道の境界をつぶさに観察できる

さて、GERD の診断確定のために重要となるのは食道と胃の境界部分の観察です。
これには経口よりも経鼻内視鏡の方が優れていると私は考えています。
写真をご覧ください。
同じ被験者で同じ場所を写したものです。
EC.gif左の写真ではほとんど見えていない食道と胃の粘膜の境界部分が右の写真でははっきりと見えています。
実は、最初左の写真の状態だったのですが、息を大きく吸い込んでもらうことで右のような状態になるのです。
こうすることで RE による傷があるかどうかのキモである食道と胃の境界をつぶさに調べることができるわけです。
鹿児島では経口内視鏡をするのに鎮静剤の注射をする施設がほとんどです。
意識がもうろうとしている時に検査を受けられている方に息を吸い込んで、と言ってもまず実行できません。
鎮静剤を使わないで経口内視鏡を行なう場合でもその余裕がなかったり、反射でげっぷが出たりしてゆっくり観察ができないことが多いのです。
苦痛を与えずにつぶさに観察でき、かつ検査を受けられる方にもじっくりとこの部分の傷の状態を見て納得してもらえるわけで、経鼻内視鏡は GERD の診断にまさにうってつけだと思います。

♦♦ 内視鏡検査中のげっぷ

なお、内視鏡検査の際にげっぷを我慢しろと言われたことはないでしょうか。
咽頭部の刺激による反射で起こるのも理由の一つですが、食道裂孔ヘルニアの方はげっぷが出る傾向が強いように思います。
私はげっぷも GERD の原因となる食道裂孔ヘルニアの所見の一つとみなしています。
胃の入り口を閉める筋力が落ちているわけですから、げっぷをするな、と野暮ったい無理強いをすることはまずありません。
げっぷをすると空気が抜けて胃の壁が近接してしまいますし、壁が激しく動いて観察に時間がかかってしまうために指示をするわけですけど、我慢しろと言われても無理なものは無理ですものね。