野口内科 BLOG

  野口内科は鹿児島市武岡に開業して46年を迎えました。
  当ブログでは、当院からのお知らせ、医療・健康に関する情報の他に、近隣の話題、音楽・本のこと等を綴ってまいります。

    診療時間 午前  9:00〜13:00
         午後 14:30〜18:00 (金曜は〜18:30)
    休診   日曜・祝日・木曜午後
    電話   099−281−7515
    住所   鹿児島市武岡二丁目28−4
    院長   野口 仁

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麻疹

昨日の新聞に、鹿児島市の19年度の当初予算案が示されていました。
その中で2つの風疹対策が目を引きました。

予防注射一つは、過去に予防接種を受けなかった7~19歳を対象に、はしか・風疹混合ワクチン ( MRワクチン ) の無料接種を3年間実施するというもの。
無料接種は夏ごろから始める予定らしいですが、対象者を約8500人と見込んでいるようです。
未接種の方、かなり多いんですね。

もう一つは、39歳から56歳の男性約6万4千人に無料で風疹の抗体検査を3年間実施するというもの。
事業所での健診や特定健診の機会を想定しているようです。

いずれも大事な施策です。
まだ議会を通ったわけではありませんが、この機会をおおいに活用して下さい。


参考 → 「流行中の風疹、鹿児島でも」「強力な麻疹 ( はしか ) の感染力」。

鹿児島市の黎明館で開催中の「華麗なる薩摩焼 ~ 万国博覧会の時代のきらめき ~」に行ってきました。
国内外に散らばっている19世紀を中心とした薩摩焼が里帰り。
エルミタージュ美術館やオーストリア応用美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館などが所蔵しているものも一堂に会しています。
薩摩焼の逸品がこれだけ集まることは恐らく二度とないでしょう。
非常に素晴らしい企画展です。

鍾馗個人的に非常に興味を引いたのは、十二代沈壽官の作品の一つ「錦手鍾馗像」。
鍾馗 ( しょうき ) は中国の伝承上の人物で、日本においては厄除けの神として知られています。
江戸時代には麻疹が流行した時に、家の戸口に鍾馗が描かれた錦絵を貼ってお守りにしたとか。
また、五月人形としても知られますし、青森のねぶたの題材にも使われることも。
鬼を踏んづけた勇ましい鍾馗の姿を薩摩焼で表現した十二代の作品、見事でした。

日本では、昨年の春ごろから麻疹や風疹の発生が目立ってきています。
昨年末には「医薬に依存しない健康を重視する」という宗教団体の研修会に参加した29人が麻疹に罹り、感染が今なお拡大中でもあります。
海外でもワクチンに対する理解不足から、接種しない人が増加傾向にあるようです。
先月末には米国ワシントン州で非常事態を宣言しています。( → こちら )
死に至ることのある麻疹の厄介さについては、昨年4月に当ブログに書いてありますので参照して下さい。 ( → 強力な麻疹 ( はしか ) の感染力 )

今でこそ厄除けには「厄」の字を使いますが、昔は「疫」を使っていた可能性があります。
「疫」は流行病ですよね。
ワクチンは現代の「厄 ( 疫 ) 除け」なのです。
防げる病気はしっかりと防ぎましょう。
 

先月、沖縄で発症が確認された麻疹 ( はしか ) の感染拡大が続き、18日現在沖縄県内だけで63人を数えています。
きっかけとなったのは台湾からの旅行者の持ち込みでした。
麻疹という疾患の恐ろしさはあちこちで解説されていますのでその点は省略して、今回はその感染力の強さに的を絞って書いてみます。


はし麻疹の潜伏期間と発症のプロセスをみてみましょう。
まず潜伏期間は10~12日間あります。
潜伏期間を経て発熱などの症状が出てきますが、カタル期と言ってこの時期ではなかなか麻疹と診断できません。
2~4日のカタル期を経て一旦熱が下がり、再び熱が出ると同時に特徴的な皮疹が出ます ( 発疹期 ) 。
典型的な症状が出て麻疹と診断されるのに時間がかかるのもさることながら、カタル期の前日くらいから周囲への感染が始まるとされている点も非常に厄介な点です。
潜伏期間の間に、人はタンポポの種のようにあちこちに散らばっていきますし・・。

そして、感染力の強さ。
感染力の強さを表すのに「基本再生産数」という数値が使われます。
これは『ある感染者がその感染症に免疫を全く持たない集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均の人数
』を示すものです。
皆さんがよく遭遇するインフルエンザではこの数値、2~3 であるのに対し、麻疹は 16~21
身近にインフルエンザ患者さんがいるだけでも大騒ぎしますが、麻疹はとてつもなく強力な感染力を持っているのだとご理解いただけるでしょう。


日本も10年ほど前までは「麻疹輸出国」という恥ずかしいレッテルを貼られていました。
1回では十分に抗体が得られない場合もあるため、2006年からMRワクチンの2回接種が始まりました。
その効果が出て、2010年5月以降、国内発症は認められていません。

しかし、最近は海外からの持ち込みが問題となっています。

1回のみの接種だったのは1990年4月2日以前に生まれた方。
40歳以上の方はワクチン接種の機会がなくても、自然感染でほとんどの人が抗体を持っているようです。( → 参考 )
この狭間に該当する方は、予防接種を検討してみて下さいね。

感染最近、エボラ出血熱やデング熱といった感染症のニュースが続いています。
いつもこのような騒ぎの時に、正しい情報がある程度伝えられているにも関わらず、必要以上に不安に思われたりデマを真に受けたりする方がいらっしゃるように思います。
的確に判断する能力が問われます。

一方で、昨年から続く風疹や麻疹の流行には全く危機感を抱いていないのではないでしょうか。
エボラやデングといった濁点の入ったカタカナ語には力強さがありますし、聞き慣れないため得体の知れない恐怖感を覚えるのかも知れません。
風疹、麻疹は昔からある言葉ですし、濁点も入っていないので何となく耳に優しく感じます。

言葉は長い間使われていると、価値が変わってきたり失われたりする不思議な側面を持っています。
例えば「貴様」は本来は尊敬語であったはずですが、今は値打ちがありません。
「らい」という疾患名も歴史的背景が積み重なって今は差別用語とみなされています。
夜の繁華街で「社長 !!」と声を掛けられてもちっとも嬉しくありません。

言葉には使われ続けているうちに変容してしまう不思議があるのですが、風疹や麻疹は昔からとても恐れられていた疾患です。
あまりに耳にする機会が多い言葉なので警戒感が薄くなっているかも知れませんが、今でも罹ってしまうと悲劇を招きかねない病気であることを忘れないでくださいね。

旅行ちょっと遅い告知になりましたが、当院のゴールデンウィーク期間中の診療は暦通りのお休みをいただきます。
5月7日から通常通りの外来診療となります。

今年は、沖縄でインフルエンザが流行していますし、麻疹の発症が今年既に300人を超えたという話が伝わっています。
多くの方が普段行かないような所へ出かけて、感染症が蔓延してしまう可能性も否定できません。
海外旅行に限らず、国内旅行においてもこういうことに気を付けなければならない時代。
ヒトと感染症の戦いは簡単に終わることがないのだと肝に銘じつつ、連休を楽しんでいただきたいと思います。

2011042616464529475.gif〖 医療情報 Pick Up おさらい 40 〗


当ブログのお知らせ欄で不定期に更新している「医療情報Pick Up」。
今月お届けしたのは以下の二つです。

・交通騒音10dB/上昇するごとに/脳卒中リスク/14%上昇/デンマークの研究で ( Eur Heart J. 2011 Mar;32(6):737-44.)

・公共の場の/全面禁煙で/小児の喘息の/入院減少/スコットランドで ( N Engl J Med 2010; 363:1139-1145.)
 

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ご自身の生活習慣からもたらされる疾患はご自身の努力次第で何とか修正することが可能ですが、周囲の環境ばかりは一人の努力で改善できるものではありません。
交通騒音や公共の場での受動喫煙等は、みんなで考えていかなくてはならない問題です。
福島第一原発事故は大騒動になっているわけですが、身近にある健康を害する環境問題にも日頃から注意を払っていく必要があるのでしょうね。

そういえば、関東地区を中心とした麻疹の流行も大きな問題です。
予防接種後進国の実態が表面化してきたわけで、海外の人からは原発より嫌がられるのではないでしょうか。



         □ 関連記事  医療情報Pick Up  39

2009081306544326095.gif今年の夏の甲子園の鹿児島県代表は樟南高校です。
当ブログのシリーズ「武岡の端っこを歩く」にも何回か登場していますが、樟南高校は武岡にあります。

以前にも書いたのですが、神戸に住んでいた時代の1994年、樟南高校が決勝に進んだ試合を私は観戦に行きました。
結果は準優勝に終わりましたが、非常に思い出に残っています。
もう15年も前のことですが、試合の決まった場面はYouTubeで見ることが出来ますね。( →こちら )

今年も、勝敗に関わらず存分に持てる力を発揮して欲しいものです。

さて、昨年から中学1年生と高校3年生は2回目の麻疹予防接種を受けることになっています。
樟南高校の野球部の 3年生の皆さんは地方大会の前に、まとまって麻疹の予防接種を受けに当院に来られています。
組織としてやるべきことをきっちりやっているのは素晴らしいことです。
該当される方は夏休みの時間のあるうちに必ず受けてくださいね。

そんな事情もあって、樟南高校の応援には力が入ります。

47irfi9j.gif麻疹 (はしか) ワクチンの追加接種
今年も含め、5年間は中学1年と高校3年で追加接種を行う必要があります。

学校を通して周知があったと思うのですが、その接種率は鹿児島県の中学1年が全国最下位、高校3年もかなり下位に甘んじているという恥ずかしい話題が先週新聞に載りました。
近くの高校から部活動単位でまとめて当院に受けに来られたケースもありますが、学校や行政できっちり音頭を取って欲しいところです。

アメリカ合衆国などでは予防接種を徹底し根絶した疾患ですが、日本では今年既に患者が 1万人を超えたとか。
一度罹れば二度とかからない病気だから早いうちにかかっちゃえ、みたいな感覚があると思いますが、中には重篤な脳症を引き起こし死亡することもあるため、ワクチンによる予防策が世界的に行われています。
麻疹に関して、世界からは日本は未だ流行のある汚い国とみなされています。

個人を守り、集団を守るためにも追加接種は受けるようにしてください。



         □ 関連記事  鹿児島で麻疹発症ワクチンに関して 1はしか流行


jw8kkscv.gif本日、連休明けに鹿児島で20代の麻疹 (はしか) 症例の届出があったことが報告されました。

平成18年から麻疹・風疹混合ワクチンは 2回接種するようになりました。
また 5年間の経過措置としてこの 4月から中学 1年と高校 3年での定期接種が始まっております。
定期接種対象外の方もご希望により接種可能です。

時に死亡することがある怖い病気ですが、予防接種で撲滅可能な疾患です。
一度かかればもう発症しないから早いうちにかかっちゃえ、みたいな意識はありませんか ?


         □ 関連記事  ワクチンに関して 1はしか流行


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