胃・十二指腸潰瘍や胃癌の原因となるピロリ菌は、かなり多くの方に認知されるようになってきました。
このピロリ菌に、近縁の菌がいるってご存知だったでしょうか。

先月末に、そのうちの一つであるヘリコバクター・スイス ( Helicobactor suis: 以下HS ) の分離培養成功とヒトの胃における病原細菌であることの証明がなされました。
非常に画期的なビッグニュースです。( 参考 → プレスリリース  )

菌の培養ができないと、その性質を調べることができませんし、研究も進みません。
今、腸内細菌の研究が盛んですが、調べているのは菌のDNA。
どんな菌がどのくらいの割合で存在しているかを見るのが中心になっています。
ほとんどの菌の培養法が確立していないので、これらの役割についてはほとんど解明されていません。

helicobactor-suisピロリ菌が発見されたのが1982年。
それ以降、近縁の菌の存在はいくつも知られていたのですが、なかなか培養ができずにいました。
HSは、ブタで高い検出率が示され、ヒトの胃MALTリンパ腫との因果関係が強く疑われていた菌です。
分離培養成功で、菌の存在を調べる方法や他の疾患との関わりなど、研究が一気に加速するものと思います。

プレスリリースにHSの電子顕微鏡像が出ていました。
ピロリ菌と比較すると、菌体のねじれが強く、ひときわ長い鞭毛が両端にある点が異なりますね。

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さて、HS以外にもピロリ菌の親戚の菌がいくつか知られており、中にはイヌやネコの口腔内や消化管に存在しているものもあります。
ペットと濃厚に接触していると、ヒトにも感染することが強く疑われています。

そんなこともあって、以前から雑誌などで取り上げられることがありました。 ( → 参考 1参考 2 )
「参考 1」の記事が出る前、私は週刊現代から電話取材を受けました。
この時、私は「培養法が確立していない現状では、推測に過ぎません」と記者に伝えました。
そのためか、記事に名前が出ることはありませんでしたし、内容も不安を煽るような過剰な表現になっていなかったので安堵したのを覚えています。


HS以外の菌についても培養法の確立が待たれます。